Intelが次世代CPUアーキテクチャ「Nova Lake」の製造に向けて、自社の14Aプロセスと競合TSMCのプロセスノードを評価していることが明らかになった。Intelには、半導体業界のリーダーシップを取り戻すという野心的な目標があるが、過去の失敗から、自社技術に固執することが必ずしもその時点で最善の選択なのかどうかを見つめ直す客観的な視点を取り戻しているようだ。Nova Lakeは2026年から2027年にかけて登場する予定で、モバイル向けCPUとして位置づけられている。
Intelの柔軟な戦略的転換が垣間見える
Intelの半導体製造戦略は近年大きな変化を遂げている。かつて半導体製造技術のリーダーだったIntelは、14nmプロセスでの苦戦により、TSMCに首位の座を明け渡した。この状況を打破するため、Intelは自社の製造技術開発を継続しつつ、TSMCのファウンドリーサービスも活用する柔軟な戦略を採用している。
現在のIntelの製品ラインナップを見ると、この戦略変更の影響が顕著に表れている。Meteor Lake CPUではTSMC製のGPUタイルを採用し、Arc AlchemistグラフィックスカードではTSMCの6nmプロセスを使用している。さらに、2024年9月3日に発表予定のLunar Lake CPUは、TSMCの3nmプロセスで全て製造される予定だ。これはIntelにとって大きな転換点となる。
一方で、Intelは自社の製造技術の開発も積極的に進めている。14Aプロセスは、High-NA EURリソグラフィ装置を採用する最初のIntelノードとなる見込みだ。他社に先駆けたHigh-NA技術の採用は、Intelが半導体製造技術の最前線に復帰しようとする意思を示したものと言えよう。従来のEUV(極端紫外線)リソグラフィーの採用では後れを取ったIntelだが、High-NAでは業界をリードする立場を確保しようとしている。
Nova Lakeの製造プロセス選択は、技術的な優位性だけでなく、コストや生産能力などの要因も考慮される複雑な判断となる。Intel 14Aプロセスは、18Aと比較して15%高い性能/ワット比を実現し、さらに最適化された14A-Eバージョンでは追加で5%の性能向上が見込まれている。一方、TSMCの2nmプロセスも高い性能と電力効率が期待されている。
Intelの次世代CPUアーキテクチャは、プロセスノードに依存しない設計思想を採用している点も注目に値する。Lion Cove Pコア・アーキテクチャは、ほぼ、どのノードとも互換性があるように設計されている。これにより、IntelはTSMCと自社のプロセスノードを柔軟に選択できる体制を整えている。
Nova Lakeに搭載される具体的なCPUコアやGPUコアの詳細はまだ明らかになっていないが、Panther Lake以降の世代のPコア、Eコア、Xeコアが搭載されると予想されている。これらの新世代コアと選択されるプロセスノードの組み合わせが、Nova Lakeの性能を大きく左右することになるだろう。
Intelの今後の選択は、半導体業界全体に大きな影響を与える可能性がある。自社製造技術の復権を目指すIntelと、ファウンドリー業界のリーダーであるTSMCとの競争は、テクノロジーの進化を加速させる原動力となっている。Nova Lake開発の進展と、Intelが最終的にどのような選択を下すのか興味深い所だ。
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