2016年に活動を停止したPebbleスマートウォッチが、創業者Eric Migicovsky氏の再始動計画とGoogleによるソースコード公開により、再び注目を集めている。ファン待望の新型Pebbleは、オリジナルの魅力を継承しつつ、現代の技術で進化を遂げる可能性を秘めている。
Pebbleのレガシーとコミュニティの熱意
Pebbleは、2012年にKickstarterで誕生したスマートウォッチの先駆者だ。常時表示のe-paperディスプレイ、1週間持続するバッテリー、シンプルなUI、物理ボタン、そしてハッキング可能なカスタムウォッチフェイスといった特徴が、多くのユーザーを魅了した。200万台以上を販売したものの、Apple Watchなどの競合激化により、2016年にFitbitに買収され、製品としてのPebbleは終焉を迎えた。
しかし、Pebbleの熱心なファンコミュニティ「Rebble」は、独自のWebサービスを立ち上げ、Pebbleデバイスの機能維持に尽力してきた。Googleは、2021年のFitbit買収を通じてPebbleの知的財産を取得し、Rebbleの活動を支援。そしてついに、Pebble OSのソースコードをGitHubで公開するに至った。
Googleによるソースコード公開:新たな可能性
GoogleによるPebble OSのソースコード公開は、Rebbleコミュニティだけでなく、Pebbleの未来にとっても大きな転換点となる。開発者は、既存のPebbleウォッチに代替OSを実装できるだけでなく、Pebble OSを搭載した新しいハードウェアを開発することも可能になった。
ただし、公開されたソースコードには、チップセットサポートやBluetoothスタックなど、一部のプロプライエタリなコードが含まれていない。そのため、完全にコンパイル可能な状態にするには、開発者による追加作業が必要となる。それでも、Googleの今回のリリースは、ファームウェアのアップデートや代替OSの移植を大幅に簡素化するだろう。
創業者が語るPebble再始動への想い
Pebbleの創業者であるEric Migicovsky氏は、今回のソースコード公開を受けて、新たなPebbleウォッチの開発に意欲を示している。自身のブログやrePebbleの立ち上げページで、「新しいPebbleウォッチを作る」と宣言。少人数のチームで、オープンソースのPebbleOSを搭載したPebbleらしいスマートウォッチを開発する計画を明らかにした。
Migicovsky氏によれば、新型Pebbleウォッチは、オリジナルのPebbleのコンセプトを忠実に守りつつ、いくつかの新機能も搭載する予定だ。Pebbleのコアとなる魅力として、常時表示の画面、長いバッテリー寿命、シンプルで美しいユーザーエクスペリエンス、物理ボタン、そしてハッカブルであることを挙げている。
過去のPebble Technologyでの経験を踏まえ、今回は「シンプルに」事業を進める方針だ。投資家からの資金調達や大規模なチームの組成は想定せず、持続可能な形でPebbleウォッチを作り続けることを目指すとのことだ。
新型Pebbleウォッチは「脱Apple」路線?
Migicovsky氏は、新型PebbleウォッチのApple iPhoneとの連携について、オリジナルモデルよりもさらに制限される可能性を示唆している。これは、Appleが自社製品優先のために他社製スマートウォッチの機能を制限していると指摘する、アメリカ司法省によるApple提訴を意識した発言と見られる。
ただし、通知の受信やメディアコントロールなど、Pebbleの基本的な機能はiOSでも利用可能だ。音声入力による返信など、一部の高度な機能はAndroidスマートフォンに限定される可能性がある。
XenoSpectrum’s Take
Pebbleスマートウォッチの復活は、テクノロジー業界における「シンプルさ」と「オープン性」の価値を再認識させる出来事だ。Googleによるソースコード公開は、コミュニティ主導のイノベーションを促進し、Pebbleのレガシーを未来へと繋ぐ重要な一歩となる。
Migicovsky氏の再始動計画は、大企業が支配するスマートウォッチ市場に新たな風を吹き込む可能性がある。しかし、競争の激しい市場で成功を収めるためには、オリジナルのPebbleの魅力を維持しつつ、現代のユーザーニーズに応える革新的な機能を提供する必要があるだろう。
Sources
- GitHub: google/pebble
- Google Open Source Blog: See the code that powered the Pebble smartwatches
- Rebble: The future of Rebble
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