KIOXIAとSanDiskは、共同開発した第10世代3D NANDフラッシュメモリ技術を発表した。この新技術は、インターフェース速度、ビット密度、電力効率を大幅に向上させ、AI時代におけるデータストレージの進化を牽引する。
飛躍的な進化を遂げた第10世代3D NAND技術
KIOXIA株式会社とSanDisk Corporationは、2025年のInternational Solid-State Circuits Conference(ISSCC)で、革新的な第10世代3D NANDフラッシュメモリ技術を発表した。この新技術は、NANDインターフェース速度4.8Gbps、ビット密度59%向上、電力効率の大幅改善を実現し、AI技術の進化によって増大するデータストレージ需要に対応する。
KIOXIAとSanDiskが発表した第10世代3D NANDフラッシュメモリは、以下の革新的な技術を採用している。
CBA (CMOS Directly Bonded to Array) 技術
CMOSロジック回路とメモリセルアレイを別々に製造し、その後、高精度に接合する技術。これにより、それぞれの特性を最適化し、高性能化と高密度化を両立できる。
Toggle DDR6.0 インターフェース
最新のNANDフラッシュメモリインターフェース規格。従来の規格と比較して、データ転送速度を大幅に向上させる。
SCA (Separate Command Address) プロトコル
コマンド/アドレス入力とデータ転送のバスを分離し、並列処理を可能にする新しいコマンドアドレス入力方式。これにより、データ入出力時間を短縮できる。
PI-LTT (Power Isolated Low-Tapped Termination) 技術
NANDインターフェースの電源として、既存の1.2V電源に加え、より低い電圧の電源も活用することで、データ入出力時の消費電力を低減する技術。
これらの技術により、第10世代3D NANDフラッシュメモリは、以下の性能向上を実現している。
- インターフェース速度: 4.8Gb/s (4800 MT/s) を実現。第8世代と比較して33%高速化。
- ビット密度: 第8世代と比較して59%向上。
- 消費電力: 入力時10%、出力時34%削減。
- 積層数: 332層
AI時代のデータストレージ需要に対応
AI技術の急速な普及により、データ生成量は爆発的に増加している。データセンターでは、大容量、高速、低消費電力のストレージソリューションが不可欠となっている。
KIOXIAの技術統括責任者である宮島秀史氏は、「AIの普及に伴い、生成されるデータ量は大幅に増加し、データセンターにおいて電力効率の向上が求められます。本技術により、大容量、高速、低消費電力のSSDをはじめとする将来のストレージソリューション向けの製品展開を実現し、AIの発展を支えることができると信じています」と述べている。
SanDiskの戦略兼技術統括のAlper Ilkbahar氏は、「AIの活用が進むにつれ、顧客のメモリへのニーズの多様性が広がります。CBA技術を活用し、容量、速度、性能と投資効率を最適に組み合わせた製品を展開することで、あらゆる市場セグメントの顧客に対応することを目指します」と述べている。
第9世代3D NANDフラッシュメモリも計画
KIOXIAとSanDiskは、第10世代だけでなく、第9世代3D NANDフラッシュメモリの開発も進めている。第9世代では、CBA技術と既存のメモリセル技術を組み合わせることで、投資効率の高い、高性能・低消費電力製品の展開を目指すとのことだ。
各社の積層数競争
3D NANDフラッシュメモリの積層数競争は激化しており、各社が技術開発を加速させている。
メーカー | 世代 | 積層数 |
---|---|---|
YMTC | ? | 232層 |
Micron | Gen 9 | 276層 |
Samsung | V9 | 290層(?) |
SK hynix | Gen 9 | 321層 |
KIOXIA/SanDisk | Gen 10 | 332層 |
XenoSpectrum’s Take
KIOXIAとSanDiskの発表は、3D NANDフラッシュメモリ技術の大きな進歩を示している。特に、インターフェース速度の向上と消費電力の削減は、AI時代におけるデータセンターの要求に応える上で重要な要素である。積層数競争も激化する中、両社が今後どのような技術革新を見せるのか、引き続き注目される。またSolidigmの今後の発表にも期待したい。
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