中国はEUV露光装置を使わず、7nm級のスマートフォン向けSoCをすでに市場へ出した。それでも、EUV光学系をASMLへ供給するZEISS Semiconductor Manufacturing Technology(ZEISS SMT)のFrank Rohmund社長兼CEOは、先端パッケージによる性能向上ではEUVがもたらす製造プロセス上の優位を完全に埋められないとDIGITIMESに語った。問題はチップを一度作れるかではない。DUVの多重露光をさらに細い世代へ広げ、十分な良品を競争力のある原価で量産し続けられるかである。

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EUVなしでも7nmは商用化できた

TechInsightsHuawei Mate 60 Proを分解し、Kirin 9000SSMICの第2世代7nmプロセス「N+2」で製造されたと確認した。Kirin 9000Sは組み込みSRAMなどフルSoCの機能を備え、中国のファウンドリーがEUVなしで商用化した最先端ロジックに当たる。したがって、「EUVがなければ商用チップは成立しない」という表現は、確認済みの製品と矛盾する。

ただし、7nmの到達は、その先の世代でも同じ方法を採算に乗せたまま続けられることを意味しない。TechInsightsはSMICが多重露光を使ったと分析している。先端液浸DUVは193nmの光を使う。それでも、1つの複雑な回路層を2つ以上の単純なパターンに分け、露光と加工を繰り返せば微細な形状を作れる。分割数が増えるほどマスクと工程が増え、別々に描いたパターンを厳密に重ねる作業も難しくなる。

Rohmund氏の警告が向けられているのは、量産時に増える負担だ。DIGITIMESが2026年7月21日に公開した説明によれば、ZEISSは先端パッケージがチップ全体の性能を改善できると認めたうえで、EUVが与えるプロセス上の利点を完全には置き換えられないとした。パッケージで複数のダイを近接接続し、システム性能を引き上げても、個々のダイを作る露光工程の複雑さは残る。

多重露光で増えるマスクと重ね合わせ

ASMLは2025年の年次報告書で、DUV液浸装置による複雑な多重露光からEUVの単一露光へ移ると、マスクと工程を減らせると説明している。工程が短くなれば欠陥が入り込む機会が減り、歩留まりと先端ロジック・メモリへの拡張性も改善する。EUVの価値は、細い線を描けることと、その線を量産ラインで繰り返し作る工程を簡素化できることの両方にある。

ASMLが2025年の年次報告書で示した工程モデルでは、EUVの単一露光はDUVの多重露光より、ウェハー当たりの工程を約20%減らす。ただし、EUV装置そのものはDUVより多くの電力を使う。露光後のエッチングや成膜まで含めると、工程の削減によってウェハー当たりの総電力と薬品使用を抑えられる可能性があるという試算だ。商用量産では、露光装置の性能表よりも、良品1個を得るまでの全工程が原価を左右する。

その差を生む光は波長13.5nmである。ZEISSによると、EUV光は空気やガラスに吸収されるため、露光装置は真空中で反射鏡を使って光を導く。ZEISSがASML製スキャナー向けに供給する光学系は約35,000点の部品から成り、高さ約1.5m、重さ約3.5tに達する。鏡の表面には100層を超える薄膜を原子レベルの精度で重ね、光の損失を抑える。

供給網も極端に狭い。ASMLはEUV露光装置を製造できる世界唯一の企業であり、ZEISSはその中核となる反射光学系を担う。

もっとも、先端工場がDUVを捨ててEUVだけに移るわけではない。ASMLは、最小形状を持つ重要層をEUVで描き、形状が大きい層にはDUVを使うと説明している。競争力の差はEUV装置の保有台数だけで決まらず、各層へ適切な露光方式を割り当て、計測と補正をつないだ生産ライン全体に現れる。

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規制はEUVから先端DUVへ広がった

ASMLは2023年6月30日、EUV装置の販売がすでに制限されていると説明した。同年9月1日からは、先端液浸DUVのTWINSCAN NXT:2000i以降をオランダ国外へ出荷する際にも政府の許可が必要になった。中国のメーカーはEUVを導入できないうえ、その代替に使う先端DUVの調達でも審査を受ける。

オランダ政府は2024年9月7日、許可対象となる先端半導体製造装置をさらに拡大した。対象には特定のDUV露光装置が含まれる。一方、制度は輸出先ごとの個別審査であり、政府は全面禁輸ではないと明記している。利用可能な装置を一律に線引きするより、どの型式を誰へ出すかを政府が握る仕組みだ。

この許可制は、中国の既存ラインが直ちに止まることを意味しない。だが、プロセスを更新する局面では装置の追加導入や能力向上の見通しを不安定にする。多重露光は装置を多く通すため、工程が複雑になるほど露光能力と稼働率への依存も強まる。EUV不在と先端DUVの調達制約は、同じ量産計画の中で重なる。

Huaweiは微細化だけに頼らず性能を補う

Huaweiは2026年5月25日、幾何学的微細化だけに頼らず、時間定数を短縮する「Tau Scaling Law」を発表した。デバイスから回路、チップ、システムまでを協調して最適化し、配線遅延や通信遅延を減らす構想である。回路レイアウトの物理的な境界を組み替えるLogicFoldingを採用した最初のKirinを2026年秋に投入し、2031年には1.4nmプロセス相当のトランジスタ密度を目指すとしている。

これはHuaweiが掲げた将来計画であり、1.4nmの製造プロセスを実現するという意味ではない。LogicFoldingは、限られた製造条件の中で配線と処理の効率を高める設計上の回答だ。うまく機能すれば、同じプロセスでも得られる性能を伸ばせる。とはいえ、ダイの面積、消費電力、製造原価を決める前工程の負担までは消えない。

7nm1.4nmというノード名も、トランジスタの一部分を直接測った同じ寸法ではない。TechInsightsはKirin 9000Sの配線ピッチなどからSMICの7nm世代と判定したのに対し、Huaweiが2031年の目標に使った指標はトランジスタ密度である。二つの数字から世代差をそのまま計算することはできず、後者は製品で検証されていない。

2026年秋のKirinは、この二つの経路を実製品で比べる材料になる。Huaweiが公表する性能向上に加え、チップ面積と消費電力、出荷量がそろえば、設計とシステムの工夫がEUV不在をどこまで補えるかを判断できる。ZEISSの警告の当否は、チップを作った日ではなく、その製品を十分な数量と原価で市場へ出せた日で測るべきだ。