中国のNAND最大手、長江存儲(YMTC)が支援するファンドが、広州でFD-SOI半導体の量産を目指す鋭立平芯微電子(SOI Micro)に出資した。投資先はメモリーの材料や装置ではなく、28nm級の低消費電力ロジックを手がけるファウンドリーである。中国がEUV露光装置を使わずに作れる半導体を増やす動きとして注目されるが、28nmならバルクCMOSも通常はEUVを必要としない。今回の投資が試すのは、FD-SOIの設計資産と特殊基板を実際の量産へつなげられるかどうかだ。
YMTC系資本が特殊ロジックへ踏み出した
South China Morning Post(SCMP)によると、鋭立平芯は2026年8月上旬の登記変更で、武漢の長存産業投資基金を新株主に加えた。登録資本は23億9000万元から25億3000万元へ増えたものの、同基金の出資額と持分は開示されていない。差額の1億4000万元を、そのまま長存基金の投資額とはみなせない。
長存産業投資基金は2023年、YMTCと湖北集積回路産業投資基金が設立した。SCMPは、これまでの投資先がメモリーの供給網に集中していたと伝えている。今回、投資対象を特殊ロジック製造へ広げた。NANDメーカーを支える資本が、別系統の製造基盤にも入り始めたことになる。
鋭立平芯は2022年に設立され、中国科学院微電子研究所の元所長で国家「02」重大プロジェクトの技術責任者を務めた葉甜春氏が率いる。国投創業の投資先紹介では、同社は約500件の特許を持ち、プロセス設計キット(PDK)を整え、武漢新芯と生産ラインを構築している。複数の設計会社から受注し、2025年の小規模量産を目標としていた。ただし、その目標を達成したとの公表は見当たらない。
28nm FD-SOIが狙う低消費電力市場
FD-SOIは、薄いシリコン層の下に絶縁層を置く平面型のトランジスタ技術である。絶縁層が基板側へ漏れる電流や不要な容量を抑えるため、待機時間が長い機器の消費電力を下げやすい。さらに基板へ電圧をかける「ボディバイアス」を使えば、動作中に速度を上げるか、漏れ電流を抑えるかを調整できる。
すでに海外では量産技術として定着している。Samsung Foundryは28FDSの量産を2015年に始め、GlobalFoundries(GF)は22nmの22FDXを量産している。CEA-Letiも、28nmと22nmのFD-SOIをSTMicroelectronics、Samsung、GFが量産中だと説明する。想定市場は車載マイコンやIoT機器のほか、無線通信やウェアラブルにも広がる。エッジAIを含め、最高速より電力とコストの釣り合いを求める領域だ。
28nm級FD-SOIは、最先端GPUやCPUを置き換える技術ではない。平面構造を保ちながら、用途に応じて性能と消費電力を動かせる点が持ち味になる。中国にとっては、先端ロジックの微細化競争とは異なる市場で、国内の設計会社と製造ラインを結ぶ選択肢が増える。
「EUV不要」は出発点にすぎない
ASMLは、EUVを7nm、5nm、3nm世代の最も複雑な層に使い、残りの層をDUVで露光すると説明している。一方、Samsungは通常の28nm平面プロセスを2012年に量産しており、こちらもEUVを前提としない。鋭立平芯が狙う28nm級FD-SOIにEUVが要らないのは事実だが、同世代の製造方式と比べた固有の優位性ではない。
FD-SOIの利点は、FinFETに近い電力効率を平面構造で狙い、工程を抑えられることにある。GFは22FDXについて、28nm平面プロセスよりダイを20%小さくし、マスクを10%減らせると発表した。ファウンドリーのFinFETと比べると、液浸露光を使う層は約50%少ないという。これはGF固有の比較値であり、鋭立平芯の性能やコストを保証する数字ではないが、FD-SOIが製造の複雑さを抑える狙いは読み取れる。
それでも、露光工程そのものは残る。成膜とエッチングが必要で、計測や検査も欠かせない。設計側にはEDAツールとIPが要る。材料面では、通常のバルクシリコンとは異なる均一なSOI基板を安定調達しなければならない。硅産業集団(NSIG)は傘下の上海新傲科技(Simgui)で中国国内の高端SOI生産ラインを整えると説明しているが、鋭立平芯向け300mm FD-SOI基板の量産供給は公表していない。
PDKの完成から量産歩留まりまでの距離
広州市は2022年の半導体産業計画で、12インチ先進SOIの研究、FD-SOI研究ライン、設計支援を含む産業エコシステムの構築を掲げた。鋭立平芯には半導体上場企業14社が投資し、装置・材料企業を巻き込む下地もある。YMTC系ファンドの参加は、そこへ大規模メモリー工場を支えてきた資本と供給網の接点を加える。
ただし、ファンドへの出資と製造技術の移転は同義ではない。YMTCと鋭立平芯は、共同開発や技術供与を発表していない。PDKの完成や設計会社からの受注も、量産時の歩留まり、車載向けの信頼性、継続的な原材料調達を証明するものではない。
欧州ではCEA-Letiが10nmと7nmのFD-SOIをパイロットラインで開発しており、技術には先のロードマップがある。しかし鋭立平芯についてまず確認すべきなのは、通過したはずの2025年量産目標だ。実際のウェハ出荷量、歩留まり、顧客製品への採用が開示されれば、YMTC系資本の参加が中国国内のFD-SOI量産基盤を押し上げたかを判断できる。


