Intelは2026年9月8日、microLEDを搭載した半導体ダイをガラス基板に埋め込む米国特許を取得した。パッケージの内部に小さな光源を組み込み、ガラスを貫く配線で電力を供給し、外部へ光を取り出す構造である。特許には電気試験の結果表示やCPU上で文字を光らせる用途が例示されているが、光を使ってデータを送るには、受光器や光の伝送経路を含む別の設計が必要になる。Intelが保有する並列microLED通信の特許や、すでに実データ伝送を実演したレーザー式光I/Oの試作と比べると、今回の発明で実現しようとしている範囲と、通信へ発展させるために必要な要素が見えてくる。
ガラスの中で光るチップの作り方
米国特許「IC package with micro LEDs」の登録番号はUS 12,733,303 B2である。出願日は2022年9月6日、出願公開は2024年3月7日で、今回の動きは、この設計が特許として成立したことにある。米国特許商標庁(USPTO)の登録公報に記載された請求項1では、microLEDを取り付けたダイをガラス基板に少なくとも部分的に埋め込み、ダイに接触するガラス貫通ビア(TGV)を介して給電する構成が規定されている。
TGVは、ガラスに開けた穴を通して基板の上下を電気的につなぐ配線である。2024年の出願公開文書の図1では、ガラス基板の両側にあるパッケージ基板を複数のTGVが結び、別のTGVが発光素子を載せたダイへ電源と接地を供給する。ガラス基板を貫くのは電気配線で、LEDから出た光はガラスを通して外部へ取り出す。この二つの経路を分けて考えると、透明な基板と貫通配線を組み合わせる狙いが分かりやすい。
ダイの配置にも複数の案がある。図1にはダイの一部をガラスに埋め込み、裏面を露出させる構成があり、完全に埋め込む例も説明されている。図2はダイの向きを変え、表面配線を介して接続する構成だ。図3では、LEDを搭載したダイを樹脂側に埋め込み、鏡で光を反射させてガラスの外へ取り出す。発光色は赤・緑・青の例に加え、すべて同じ色にする構成も含まれる。
製造方法を示す図4では、レーザー処理とエッチングによってガラスに穴やダイ用の空洞を作り、電気めっきと平坦化によって導電構造を形成する。その後、ダイを配置し、窒化シリコン(SiN)層を介して両側の基板を接合する。発光部品を単に表面へ追加するのではなく、部品を収める空間、給電配線、光を取り出す方向までをパッケージの製造工程に組み込む設計である。
装飾と電気試験の表示機能をパッケージへ取り込む狙い
出願公開文書の段落[0013]では、装飾、組み込み後の電気試験結果の表示、CPU上で文字を光らせる用途が挙げられている。図6の説明でも、プロセッサが特定の機能を実行していることを目視で確認できるようにする構成が示されている。小さな発光素子を、半導体パッケージ自体の表示部品として使う発想だ。
この設計を使えば、状態表示用の光源を半導体パッケージ内に組み込める。表示部品をパッケージの外部へ配置する場合に比べ、内部回路と光源をより近い場所で接続できる可能性がある。一方、単に光を点灯させることと、故障原因を特定することは別の機能だ。どの電気試験の結果を表示するのか、その結果をどのような発光パターンへ変換するのかは、検査回路や制御回路側で決める必要がある。
したがって、特許に記載された用途例だけから、自律的な故障診断システムやデータセンター向け監視機能まで完成しているとは判断できない。CPUの演算回路と同じダイにLEDを作り込む製品仕様も示されていない。今回示されたのは、発光素子を備えたダイをパッケージに収め、電力を供給し、その光を外部へ取り出すための構造である。
光通信には何を加える必要があるか
Intelは、受光器や光の伝送経路まで含めた別の特許「Micro-photonics parallel data transmission fabric and interconnect」(US 12,603,707 B2)も保有している。こちらはLEDの配列を通信データで駆動し、複数の光導波路へ送った信号を相手側の受光器で受け取る仕組みを扱う。導波路は、光を所定の経路に沿って伝える部材で、文書にはファイバー束を使う構成も描かれている。
発光パッケージ特許のTGVは給電や電気信号を伝えるための経路であり、光通信に必要な受光器や導波路は、Intelの別の通信特許に記載されている。
公開資料に示された機能を同じ観点から比較すると、それぞれの設計が担う範囲は次のように分けられる。
| 比較する機能 | 発光パッケージの設計 | 並列microLED通信の設計 | レーザー式OCIの試作 |
|---|---|---|---|
| 光源 | ダイに搭載したmicroLED | 通信データで駆動するLED配列 | チップ上のレーザー |
| 電気との接続 | TGVを介した給電と信号配線 | 駆動回路と受光側の検出・増幅回路 | 光集積回路と電気ICの組み合わせ |
| 光の行き先 | ガラスを通してパッケージの外へ | 複数の導波路やファイバー束を通して対向する受光器へ | 単一モードファイバーを通して対向側へ |
| 公開された検証 | 構造と工程を特許文書で開示 | 通信構成を特許文書で開示 | 2台のCPU間で実データを流す実演 |
比較対象は、発光パッケージの2024年出願公開版の図1〜3、並列通信特許の詳細説明と各図、そしてIntelの2024年OCI発表の「How It Works」である。用途の異なる構成を、光源、電気回路、伝送経路、検証の有無という共通の観点で整理したもので、通信性能そのものの優劣を比較した表ではない。
光を外部へ取り出せるパッケージは、通信に使う光源を収めるための一要素になりうる。しかし、その光をデータに応じて変化させ、伝送経路へ結合し、受信側で再び電気信号へ戻すところまで設計して初めて、通信路として機能する。Intelが今回のパッケージ構造と別の通信特許を一つの製品として統合しているかどうかは、これらの資料からは確認できない。
多数のmicroLEDで通信を分担する発想
並列通信特許は、少数の伝送路を極端に高速化する代わりに、多数の小さな光源にデータを分担させる構想を示している。1経路あたりの動作速度を抑えながら、全体として大きな帯域を確保しようとする設計だ。
狙いの一つは、並列信号を高速な直列信号へ変換し、受信側で元に戻すSerDesの負荷を抑えることにある。通信特許の詳細説明では、大型で高速なSerDesを使うと消費電力や回路の複雑さが増すとして、電気信号を光源の配列へ直接渡す構成を示している。ただし、経路ごとに小型のSerDesを併用する例もある。すべての変換回路をなくすという構想ではない。
一方、並列化によって光源の数が増えると、多数の接続経路を正しく対応させることが難しくなる。図7以降には、ファイバーの端を送信素子と受光器の配列に合わせる構造が登場する。多数の細い伝送路を使う場合、位置や向きがずれると、想定した受光器へ光が届かない可能性がある。
その対策として、図14などでは光信号を使って各経路の対応関係を確認するトレーニング処理が説明されている。実際に通信できる組み合わせを確認することで、製造時に要求される位置合わせの精度を緩和する狙いがある。
受信側にも電気回路が必要になる。受光器が生み出す小さな電流を検出・増幅し、雑音の影響を抑える必要があるほか、発光側にはLEDを駆動するための電圧調整回路の例も示されている。LED単体の効率が高かったとしても、駆動回路や受信回路まで含めた通信路全体の消費電力は別に評価しなければならない。
さらに同じ文書では、LEDによる伝送距離はレーザーより短いことを前提とし、光信号をいったん電気信号へ戻したうえで再び発光させる中継器も提案している。接続部が増えれば、そのぶん損失も増える。microLEDの並列通信を評価する際には、帯域や消費電力だけでなく、いくつの接続部を経由し、どの程度の距離まで必要な誤り率を維持できるかを見る必要がある。
実データの実演と量産への距離
Intelは2024年のOFCで、CPUと同じパッケージに搭載したOptical Compute Interconnect(OCI)チップレットを使い、2台のCPU間で実データを伝送したと発表している。こちらの光源はmicroLEDではなく、レーザーと光増幅器を含む光集積回路(PIC)だ。PICと電気ICを組み合わせ、通信時のビット誤り率も測定したと説明している。
当時公表された仕様は各方向64チャネル、1チャネルあたり32Gbpsで、双方向合計の帯域は最大4Tbpsとされている。64×32Gbpsは片方向2.048Tbpsとなるため、約2Tbpsずつの送受信帯域を合計した数字である。片方向だけで4Tbpsを送れる仕様と取り違えると、帯域を過大に見積もることになる。
IntelはこのOCIについて、1ビットあたり5pJの消費エネルギーも示している。ただし、これは2024年に同社が公表したレーザー式OCIの値であり、今回の発光パッケージや並列microLED通信の測定結果ではない。同社は発表時点のOCIを試作段階の技術として説明しており、実データを使った実演と、量産製品としての出荷は分けて考える必要がある。
ガラス基板を使う理由も、光通信だけでは説明できない。Intelは2023年のガラス基板発表で、有機材料より高い熱的・機械的安定性と、配線密度を10倍に高められる可能性を挙げている。寸法が安定すれば微細な配線を高密度に配置しやすくなるため、電気接続を主体とする大型パッケージにも利点がある。10倍という数字はあくまで配線密度について示された可能性であり、CPUの演算性能が10倍になるという意味ではない。
今回のmicroLED構造が製品化へ進めるかを判断するには、ガラスへ埋め込んだ後も発光素子と電気接続が製造工程を通じて安定して動作するか、さらに光を狙った場所へ確実に取り出せるかを検証する必要がある。通信に使うのであれば、対向する受光器まで含めた実際のリンクで誤り率を測定し、駆動・受信回路を含むシステム全体の消費電力を確かめることも欠かせない。
発光素子をパッケージ内部へ組み込む技術を、多数のCPUやアクセラレータを結ぶ通信路へ発展させるには、光源から受信回路までを一体として動作させ、それを量産可能な構造で実証する必要がある。



