Mozillaの公式配布アーカイブに、Firefox 157.0のWindows、macOS、Linux向けファイルが並んだ。Mozillaが9月14日に公開した157 Betaの変更履歴では、新デザイン「Nova」、コンパクトモードの復活、対応機器でのWebRTC通話におけるAV1ハードウェア復号などが主な変更として挙げられている。

ただし、9月29日未明(日本時間)の確認時点では、安定版157.0の公式変更履歴はまだ公開されていない。配布用のファイルがサーバーに置かれたことと、自動更新を通じて一般利用者への提供が始まったことは分けて考える必要がある。

では、このバージョンで画面デザインや動画通話はどう変わり、どのような環境では変化しないのか。

MozillaはFirefox 155から、主要バージョンを2週間ごとにリリースする新しいサイクルへ移行した。157もこの新しい周期で登場するバージョンで、Betaでは画面デザインの大幅な刷新が案内されている。

ただし、更新間隔が従来の4週間から2週間になったからといって、毎回搭載する新機能が2倍になったり、開発そのものが2倍の速度になったりするわけではない。Mozillaは、完成した修正や機能を利用者へ届ける機会を増やし、リリース時期を予測しやすくするための変更だと説明している。

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Novaは見た目だけでなく、画面の使い方も変える

MozillaのUXチームが「Project Nova」と呼んできたデザイン刷新は、単にタブの角を丸くするだけの変更ではない。

タブ、パネル、メニューなどを共通のデザイン体系にそろえ、アイコン、配色、余白なども見直す。アクティブなタブには淡いグラデーションを使うなど、ブラウザー全体に統一感を持たせながら、現在操作している場所を把握しやすくする狙いがある。

この方針は突然登場したものではない。Mozillaは5月にProject Novaの方向性を公開し、9月14日には157 Betaの変更履歴で実際の画面刷新を案内した。直前の156安定版の変更履歴にはNovaは掲載されていない。

157 BetaではNovaを大きな変更点として案内しており、数カ月にわたる設計と試験を経て、より広い利用者への展開に近づいたことが分かる。

ただし、Beta版の変更履歴には「掲載された機能が最終版に入らない可能性がある」と明記されている。安定版157.0の正式な変更履歴がまだ公開されていない以上、Betaに掲載された項目がすべて、そのまま全環境向けの正式版に入ったとまでは言い切れない。

画面をできるだけ広く使いたい人には、復活したコンパクトモードの方が変化を実感しやすいかもしれない。

Mozillaによると、コンパクトモードではツールバーやタブ周辺の余白を減らし、その分だけWebページの表示領域を広げる。画面の小さいノートPCや、複数のウィンドウを並べて使う場合には、タブの丸みや配色よりも実用上の違いが大きくなり得る。

新しい組み込みテーマにはライト版とダーク版が用意され、外観も選べる。

一方、MozillaがProject Novaの将来的な方向性として示している細かなUI調整まで、すべて157で導入されるわけではない。Nova全体の構想と、157 Betaで実際に提供すると明記された機能は分けて考える必要がある。

AV1通話のハードウェア復号は何が変わったのか

157 Betaの変更履歴では、WebRTCを使った動画通話で、対応する機器ならAV1映像の復号をハードウェアで処理できるようになると説明されている。

復号とは、相手から送られてきた圧縮済みの映像データを、画面に表示できる映像へ戻す処理だ。

従来、FirefoxのWebRTCでAV1を受信した場合、この処理は常にソフトウェアで行われていた。157 Betaで案内された変更は、この処理を対応するハードウェアへ任せられるようにするものだ。

したがって、Firefoxが今回初めてAV1動画の再生に対応したという話ではない。また、自分から送信するAV1映像をハードウェアでエンコードできるようになったという変更でもない。対象は、WebRTC通話で受信したAV1映像の復号処理である。

Mozillaの開発記録を追うと、AV1通話のハードウェア復号は156では無効化され、157で必要な修正がそろったことが分かる。

Mozillaの記録 AV1通話のハードウェア復号で起きたこと
Bug 2062642 AV1のハードウェア対応を検出する仕組みが追加されたが、別の不具合を受けて156では無効化された。修正状況では157が「fixed」となっている。
Bug 2069901 ハードウェア対応を検出できても、WebRTC用のAV1プラットフォームデコーダを作成できなかった問題を修正。157での修正として記録されている。
157 Beta変更履歴 対応機器ではWebRTC通話でAV1のハードウェア復号を利用できると案内している。

最初の修正だけでは、Webサイト側が「省電力なハードウェア復号に対応している」と判定できても、Firefoxが実際にはAV1用のハードウェアデコーダを作成できない場合があった。

二つ目の修正は、この食い違いを解消するためのものだ。

つまり、実際に利用者が恩恵を受けるには、通話サービスがAV1を使用し、端末とOSがAV1のハードウェア復号に対応し、さらにFirefoxからそのデコーダを利用できるという条件がそろう必要がある。

Mozillaの開発者は、ハードウェア復号によって発熱や消費電力の低減が期待できるとしている。ただし、157で消費電力が何ワット減るのか、バッテリー駆動時間が何分延びるのかといった具体的な測定値は示されていない。

前バージョンとの比較でも、対象を分ける必要がある。

156の正式な変更履歴に掲載されたハードウェア復号は、WindowsのARM64端末におけるWebRTCのH.264が対象だった。157 Betaで案内されたAV1とは、コーデックも利用条件も異なる。

動画通話で画質、CPU負荷、発熱などの違いを確認するのであれば、Firefoxのバージョンだけでなく、利用しているサービスが実際にどのコーデックを選択しているかまで確認する必要がある。

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動画、検索、Web標準にも変更

157 Betaの変更履歴には、Windowsで一部の8ビット形式のHDR動画が、本来より暗く灰色がかって表示される問題の修正も掲載されている。

動画の再生速度を何度も切り替えた際、音声と映像の同期がずれる問題も改善された。

ただし、これらはあらゆるHDR動画の画質や、すべての動画サービスで音声同期が改善するという意味ではない。利用している動画形式や操作が、修正対象の条件に該当する場合に効果がある。

検索機能にも変更がある。

Amazonは組み込み検索エンジンの一覧から外れる予定だが、Mozillaは検索設定からカスタム検索エンジンとして追加できると説明している。FirefoxからAmazonの商品検索そのものが利用できなくなるわけではない。

また、アドレスバーや検索バーでTabキーを押した際、検索エンジンのボタンで一度止まるのではなく、テキスト入力欄へ直接フォーカスが移るようになる。検索エンジンのボタンにはShift+Tabで移動できる。

キーボード中心でブラウザーを操作する人ほど気付きやすい変更だ。

Web開発者向けの変更もある。

MDNの157向け文書では、CSSの@supportsでat-rule()を使い、特定のCSS規則をブラウザーがサポートしているか判定できるようになると説明されている。

WebGPUでは、一つの描画処理の間だけ使用する一時的なテクスチャー向けにTRANSIENT_ATTACHMENTが追加される。条件が合えば、GPUメモリーとの不要なデータ転送やメモリー割り当てを減らせる仕組みだ。

ただし、MDNの157向けページも現時点ではBeta版を対象としており、文書自体が編集中であることが明記されている。

企業向けの管理機能にも変更が予定されている。

管理者向け文書には、端末内で動作する音声認識を許可・禁止するためのポリシーや、一部のポリシー適用に失敗した場合に、どの項目で問題が起きたのかを表示する変更などが記載されている。

こちらも157については今後提供予定の機能として扱われている。

一般向けのFirefoxと長期サポート版のESRでは、利用できる機能や適用時期が異なる場合があるため、企業内で展開する場合は通常の変更履歴だけでなく、管理者向けの変更情報も確認する必要がある。

更新判断は正式な変更履歴と端末条件を確認してから

Firefox 157.0の配布ファイルがMozillaのサーバー上に置かれていることは確認できる。

ただし、安定版の正式な変更履歴が公開されたか、自動更新による一般利用者への配信がどこまで進んでいるかは、それとは別に確認する必要がある。

Novaによる外観の変化やコンパクトモードは、更新後に画面を見れば比較的簡単に確認できる。

一方、AV1のハードウェア復号は、Firefox 157をインストールしただけでは効果を判断できない。対応する端末で、実際の動画通話がAV1を使用している場面で初めて違いを評価できる。

Firefoxは155から2週間ごとのリリースサイクルへ移行した。157 Betaでは、その新しい周期の中でも目立つ変更の一つとしてNovaが登場している。

正式版の変更履歴で最終的にどの機能が採用されたのかを確認したうえで、画面を広く使いたい場合はコンパクトモード、動画通話では実際に使われているコーデックとハードウェア対応状況を見る。

そうした条件までそろえて初めて、Firefox 157による画面の使い勝手やAV1通話の処理効率の変化を、自分の環境で正しく評価できる。