Microsoftが、EdgeのInternet Explorer互換機能「IEモード」に依存する企業へ、業務アプリの移行計画を早めに立てるよう改めて促している。新たな終了日が決まったわけではなく、サポートを少なくとも2029年末まで続ける既存方針に変わりはないが、古いアプリの刷新には依存関係の数や複雑さに応じて数年かかり得るためだ。すでにEdgeを標準ブラウザーにした企業でも、その内側でIEの技術を使い続けているなら、アプリ側の移行は残っている。
2029年は確定した終了日ではない
今回の通知は、2021年に示されたサポート方針を再確認するものだ。The Registerによると、Microsoftは管理センターのメッセージを通じて、IEの技術に依存する既存システムの刷新を呼びかけた。企業が気にすべき変化は、明日から機能が使えなくなることではなく、移行計画を具体化する時期に入っているという警告である。
期限を読むときは、「少なくとも2029年まで」と「2029年で終了する」を区別する必要がある。MicrosoftのライフサイクルFAQは、サポート対象のOS上でIEモードを少なくとも2029年まで支援するとしている。さらに終了の告知について、次のように明記する。
「Microsoftは、IEモードのサポート終了に先立ち、最低1年前に通知します」
この条件から、2030年になった途端にIEモードが停止すると決めつけることはできない。一方、2029年を越えてどこまで支援が続くかも、今回の再通知では確定していない。終了日が出てから計画を始めれば良い、という約束でもないのである。事前通知の最低期間と、自社の移行に必要な期間は別に見積もるべきだ。
IE11デスクトップアプリの終了とも分けて考えたい。一部のOSでは2022年6月15日にそのサポートが終了したが、Edge内のIEモードは別途維持されてきた。IEという名前が共通していても、単体のブラウザーと互換機能では支援の対象が異なる。
Edgeへ移ってもIE依存が残る理由
EdgeのIEモードは、古いサイトを現在のWeb技術へ自動変換する機能ではない。Microsoftの技術文書によれば、通常のサイトにはChromiumエンジンを使い、古いサイトにはIE11由来のTrident MSHTMLエンジンを使う。画面上のブラウザーは一つでも、ページを処理する仕組みを使い分けているわけだ。
互換性を保つ対象には、ActiveXコントロールも含まれる。これは、ウェブページから追加のソフトウェア部品を利用するために使われてきた仕組みである。IEモードは旧来のドキュメントモードにも対応するため、IE向けに作られたサイトを使い続ける助けになる。ただし、IEのツールバーなど対応しない機能もあり、IEのあらゆる機能をそのまま再現するという保証ではない。
企業は「Enterprise Mode Site List」という一覧などで、IEモードを使うサイトを管理できる。通常のサイトと互換性が必要なサイトを一つのブラウザーで扱える点は、運用上の利点だ。その半面、利用者が毎日Edgeを開いているという事実だけでは、業務アプリが通常のエンジンで動くようになったかどうかを判断できない。
たとえば、社内システムがIEモードでしか処理を完了できないなら、ブラウザーの配布を終えていても、そのシステムは互換機能を必要としている。アプリの移行を考える際には、Edgeの導入台数より、IEモードを外したときに何が動かなくなるかを調べるほうが実態に近づく。互換性を保つ機能があるからこそ、利用中の業務を維持しながら、アプリを改修する順番を決められる。
サポート条件はOSも確認する
Microsoftの支援方針には、サポート対象のOSで利用するという条件が付く。したがって、IEモードに2029年までの支援があることを理由に、Windowsもそのまま使い続けられるとは限らない。端末のOSが支援対象かどうかは、別に確認する必要がある。
公式FAQは、OSのサポート終了後もセキュリティ更新を受ける場合、提供されていれば拡張セキュリティ更新プログラム(ESU)のライセンスが必要になることがあると説明している。また、IEモードの技術文書はWindowsとEdgeの最新更新を適用するよう求める。IEモードの支援期間を把握することと、実際に使う端末を支援対象の状態に保つことは、両方必要な作業だ。
アプリ側で使っている部品にも同じ注意が要る。IEモードがActiveXを扱えることは、組み込まれた個々の部品まで継続して保守されるという意味ではない。Microsoftの文書でも、対応機能の例として挙げるSilverlightには、すでにサポートが終了したとの注記が付いている。動作することと、部品を含めて支援が続いていることを混同すると、更新すべき対象を見落としかねない。
つまり、移行計画はブラウザーだけを見て立てると足りなくなる。IEモードで開くサイトを洗い出す際に、利用する端末のOSと、業務アプリが必要とする部品も一緒に確認する。この組み合わせで初めて、何を先に更新すべきかを検討できる。
最初に調べるのはIEモードで開く業務
管理者が着手しやすいのは、IEモード向けのサイト一覧と、実際の利用状況の突き合わせだ。設定に残っているサイトと、いま業務に使われているサイトが同じかを確かめれば、調査対象を絞れる。今回のMicrosoftの通知も、依存関係の棚卸しと、アプリを更新するか、置き換えるかといった刷新方法の検討を促している。
実務上は、URLの一覧に業務名と管理担当者を結び付けておくと、その先の判断がしやすい。社内で改修できるアプリなら変更箇所を調べ、外部ベンダーの製品なら通常モードに対応した版があるかを確認する。置き換えや再構築が必要なものは、保守更新だけで済むものと分けて計画に載せる方法が考えられる。
動作確認も、トップページが表示されるかだけで終えないほうが良い。たとえばログイン後にデータを入力し、帳票を出力する業務なら、その一連の処理を通常モードで試す。これは個別企業のシステムに合わせて検証項目を決めるための考え方であり、すべてのアプリが同じ手順で移行できるという話ではない。
今後の正式な終了通知を追うとともに、自社では「IEモードを使わず、必要な業務を最後まで終えられるか」を確認したい。担当者と検証範囲が決まり、通常モードでの処理を確かめられれば、互換機能に頼るサイトを順に減らしていける。
