中国のDRAMメーカー、CXMT(長鑫存儲技術)が、北京の新工場にNAND型フラッシュメモリの研究開発用生産ラインを設ける計画だと、Reutersが2026年9月18日に報じた。同社はNANDの購入を検討する顧客とも協議しており、現在のDRAM事業からデータ保存用の半導体へ製品領域を広げる可能性がある。ただし、ラインの稼働時期も、大規模な商業生産へ移る意向があるかどうかも不明だ。供給競争への影響を読むには、研究開発の計画と、顧客へ実際に届けられる製品を区別する必要がある。

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北京の研究開発ラインと顧客協議

Reutersの日本語配信記事は、事情を知る関係筋3人の話として、CXMTがフラッシュメモリ市場への参入を準備していると伝えた。計画の舞台は北京の新工場であり、設けるとされるのはNANDの研究開発用生産ラインである。CXMTはReutersのコメント要請に応じておらず、同社が正式に発表した計画ではない。

顧客との協議には、AIシステムやスーパーコンピューターで使うストレージ製品向けに、CXMTのNANDチップを購入する意向を持つスタートアップ企業も含まれるという。報道が示したのは、研究開発の設備計画に加え、そのチップを使いたい顧客候補の存在だ。どのような製品に組み込むのかという用途まで伝えられた点は、事業の行方を考える材料になる。

もっとも、購入意向を供給契約の成立や出荷開始と読み替えることはできない。Reutersは研究開発ラインの稼働時期についても不明としており、顧客がチップを手にできる時期は見通せない状況だ。商業供給の開始を確認するには、CXMTによる具体的な日程や出荷の説明を待つ必要がある。

公式製品群はDRAM、NANDで広がる顧客用途

CXMTは公式サイトで、自社についてDRAMの設計・製造と販売、研究開発を手がける企業と説明している。英語版の製品一覧にはDDR5とそのモジュールが並び、低消費電力の製品群としてLPDDR6やLPDDR5/5X、LPDDR4Xを掲載する。サーバーやPCに加え、スマートフォンなどへDRAMを供給する事業だ。

2026年9月18日時点で、CXMTの公式製品ページにNAND製品の掲載はない。これは英語版の製品一覧と紹介文を確認した結果であり、未公表の研究開発が存在しないという意味ではない。公式に紹介されている製品と今回報じられた計画を比べると、NANDは既存製品の増産とは異なる、製品領域の拡張に当たることが分かる。

NANDは、電源を切ってもデータを保持できるメモリである。キオクシアの技術解説によると、データを記憶する最小単位であるメモリセルの中に、絶縁体で囲んだ電荷蓄積膜があり、そこへ電子を出し入れして情報を書き込む。電圧を切っても電子が蓄えられた状態が保たれるため、スマートフォンの画像や音楽などを保存できる。NAND型ではセルを直列につなぎ、高密度に配置する構造を採る。

この保存用途が、Reutersの伝えた顧客協議と結び付く。スタートアップが購入を検討しているのは、AIシステムなどのストレージ製品に使うNANDチップだ。CXMTが製品化できれば、現在のDRAM製品群にデータ保存用の半導体を加え、顧客に提供できる製品の種類を増やせる可能性がある。

ただし、これはNAND一般の記憶原理であり、CXMTが採用する構造や製造工程を示すものではない。今回の計画について、チップの容量や性能、製造規模を確かめられる仕様は示されておらず、既存のDRAM製造設備をどこまで使えるかも判断できない。

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競合への影響を決めるのは商業供給

Reutersは、CXMTの進出がSamsungなどの海外企業に加え、中国国内のYMTC(長江存儲科技)との競争にもつながると報じている。DRAMを専門とするCXMTがNANDへ広がれば、競合する製品領域も変わり得る。ただ、研究開発ラインを設けるという計画から、競合各社のシェアや価格への影響までを読み取るのは早い。

報道内容を事業の進み具合ごとに分けると、次のようになる。

判断する段階 Reutersが9月18日に伝えた内容 まだ判断できないこと
研究開発の設備 北京の新工場にNANDの研究開発用生産ラインを設ける計画 ラインの稼働開始時期
顧客との接点 ストレージ製品向けの購入意向を持つ企業を含め、顧客と協議 供給契約や納入の開始
商業供給 大規模な商業生産へ移る意向があるかも不明 市場に出る数量と時期

設備の計画と顧客との協議が並んだことで、CXMTが何を作り、どの用途へ売ろうとしているかは見え始めた。一方、市場の供給量を増やすには商業生産へ進む判断が必要であり、今の情報から短期の品不足解消や価格低下を見込む根拠は乏しい。顧客候補があることは事業化への手掛かりになるが、供給能力の証明とは別である。

CXMTがラインの稼働日程を示し、商業生産の方針と顧客へ届ける数量を具体化できれば、競争への影響も評価しやすくなる。研究開発計画が継続的な出荷につながったとき、AI用ストレージを作る企業にとって、新たなNAND調達先となり得る。