市場調査会社TrendForceは2026年9月16日、DRAMスポット市場で大手供給者のDDR5への引き合いが鈍り、一部チップに価格軟化の兆しが出たと報告した。DDR4では、前週に具体的な注文が入った2Gx8ブランド品の価格調整が目立った。ところが、同社が主流指標とするDDR4 1Gx8 3200MT/sの平均価格は9月9日の45.32ドルから9月15日の45.54ドルへ0.47%上昇している。
ここで起きているのは、DRAM市場全体が一斉に値下がりする転換ではない。同じDDR4でもチップ密度と流通区分によって価格の方向が分かれ、買い手が必要な品目だけを選別する局面に入った。週次のスポット軟化を、OEMの契約価格や店頭のメモリー価格まで下がり始めた証拠と読むのは早い。
1週間で2Gx8は上昇から反落へ、1Gx8はなお高い
TrendForceの9月9日更新では、一部のDDR4 2Gx8ブランド品に具体的な注文が入り、成約価格を押し上げたとされた。DDR5の調達量は限定的で、需要は特定のブランド品に散発的に現れる程度だった。
その1週間後、2Gx8ブランド品は目立つ価格調整へ転じた。市場に出ている供給を吸収するほどの買い意欲は確認されず、DDR5も引き合いが減った。短期の需要が失速したという方向は明瞭だが、TrendForceは2Gx8の銘柄別下落率、成約量、DDR5で軟化した型番を公開していない。どの製品が何%下がったかまでは追えない。
主流指標の1Gx8は別の動きをした。9月2日から8日は44.57ドルから45.36ドルへ1.78%上昇し、9月9日から15日は45.32ドルから45.54ドルへ0.47%上昇した。週次上昇率は1.31ポイント縮小したものの、価格水準は下落していない。「DDR4が反落した」という表現では、2Gx8の調整と1Gx8平均の上昇を同じ系列にまとめてしまう。
上がった1Gx8、下がった2Gx8――同じDDR4ではない
1Gx8や2Gx8は、完成したメモリーモジュールの容量ではなく、DRAMチップ内部の構成を示す。1Gx8(8Gbチップ)は10億個分の記憶位置を8bit幅で持つ。2Gx8(16Gbチップ)はその2倍の密度である。MicronのDDR4製品ページも、2Gx8構成を部品密度16Gb、バス幅x8と記載している。
完成モジュールとの違いは、Samsungの16GB DDR4-3200 UDIMMを見ると分かりやすい。この製品は1Gx8チップを16個使う構成だ。小文字bの16Gbチップと、大文字Bの16GBモジュールは8倍の単位差があり、部品数やランク構成も関わる。
| TrendForceが示した区分 | 9月中旬の方向 | 読み取れる範囲 |
|---|---|---|
| DDR4 1Gx8 3200MT/s平均 | 週次0.47%上昇 | 8Gbチップの主流スポット指標 |
| DDR4 2Gx8ブランド品 | 価格調整が目立つ | 16Gbチップの一部ブランド品。下落率は非公開 |
| DDR5 | 引き合い減、一部で軟化の兆し | 型番、価格幅、成約量は非公開 |
| reballed chips(リボール品、はんだボールを再形成したチップ) | 前週の上昇を維持 | 消費者向け電子機器需要が背景。対象型番と価格は非公開 |
同じDRAMスポット市況でも、DDR4 1Gx8平均、DDR4 2Gx8ブランド品、DDR5の引き合い、リボール品は異なる系列であり、9月中旬には方向も分かれた。
同じ世代名でも、必要とするチップ密度、供給者、品質区分が違えば買い手は入れ替わる。1Gx8の平均値を2Gx8へ当てはめたり、2Gx8の反落から完成モジュールの店頭価格を推定したりはできない。今回の市況が示したのは、世代単位の方向より品目単位の選別が強まったことだ。
スポット軟化と供給不足は同時に起きる
短期の買い控えが見えても、供給能力に余裕が生まれたとは限らない。Samsungの2026年第2四半期決算は、下期にモバイルとPCの需要が一部鈍る可能性を認めながら、サーバーDRAM、企業向けSSD、HBMの需要増によって供給不足が続くと見込む。同社が重点製品として挙げたのはHBM4、DDR5、SOCAMM2である。
SK hynixも第2四半期決算で、顧客需要が供給能力を上回ると説明した。約10顧客との長期供給契約を確定し、HBM4の量産出荷を始めている。生産能力の一部が長期契約や高付加価値品へ先に割り当てられれば、スポット市場で買い手が一時的に引いても、供給全体が余るとは限らない。
Micronは2026会計年度第3四半期のForm 10-Qで、HBM需要が弱まり、供給者が生産能力を従来型DRAMへ戻した場合には、従来型DRAMの供給増が価格を押し下げ得ると記した。これは将来のリスクシナリオであり、能力移動がすでに始まったという発表ではない。供給正常化を判断するには、実際の生産配分とビット出荷量の変化が必要になる。
スポット価格は、その時点で追加購入したい買い手の温度を早く映す。その反面、長期契約で確保済みの数量や、メーカーが優先するサーバー向け製品の需給を一つの週次値で表せない。特定品の軟化と市場全体の供給制約は、矛盾せず並存する。
NANDも下落率は縮小、取引量は戻らない
NANDでも、価格変化率と需要の回復を分けて読む必要がある。512Gb TLCウエハーのスポット価格は9月7日の20.146ドルから9月14日の20.083ドルへ0.063ドル下がった。週次下落率は前週の2.71%から0.31%へ縮小したが、TrendForceは買い手の慎重姿勢と取引量の低迷が続いたと説明している。下落が緩やかになったことは、注文が戻った証拠ではない。
DRAMで次に確認すべきなのも、同じ密度・型番の成約価格と出来高だ。その後にOEMの契約価格、完成モジュールの卸値、小売店の実売価格が続く。2Gx8の反落が他の層へ広がるのか、1Gx8やリボール品の上昇が残るのかで、短期の買い控えと本格的な価格転換を見分けられる。



