台湾の工商時報は2026年9月30日、韓国メディアの報道を引用し、NVIDIAが台湾・韓国・日本の基板メーカーに対してガラス基板の開発を加速するよう求めており、早ければ2028年より前に導入する可能性があると伝えた。
ガラスを半導体パッケージの基板材料として利用できる可能性は、TSMCなどによる共同開発でも示されている。しかし、2027年以降の大型AI半導体に求められるサイズで、量産品としての信頼性評価を完了したという発表は、まだ確認できていない。
むしろ、2028年という時期は、供給体制が整うことを保証するものではなく、報道どおりの早期導入を実現するために各社が目指す目標時期として捉える必要がある。
TSMCなどが共同開発したガラスコア基板の検証用パッケージは、外形面積で比較すると、2027年世代のCoWoS(TSMCの先端パッケージング技術)に必要とされる基板の約52%に相当する。ただし、異なる世代の外形寸法を比較した数字であり、技術的な完成度を示すものではない。
さらに、開発を先行するSamsung電機やSKCでも、量産時期の見通しや顧客による信頼性評価が課題となっている。
NVIDIAによる導入検討の報道を評価するには、技術開発の進展だけでなく、大型化への対応、製造歩留まり、顧客認証という三つの課題を分けて考える必要がある。
NVIDIAが求めたとされる「2年以内」の開発目標はどこから来たのか
工商時報の記事は、NVIDIAに関する一連の情報を韓国メディアの報道として紹介している。NVIDIAがガラス基板の採用を検討し、ドイツの製造装置メーカーSCHMIDなどと協力しているとも伝えた。
ただし、NVIDIA側の発言者や発言した場面は明らかになっていない。同記事でも、導入時期については関係各社による確認が必要だとしている。
韓国ではKIPOSTが9月22日、これまでガラス基板の導入に慎重だったNVIDIAが具体的な検討を進めていると報道し、採用時期が業界の予想より早まる可能性を指摘した。
また、ソウル経済は9月24日、SCHMIDの決算説明会での発言を根拠に、NVIDIAが複数の企業と導入を検討していると伝えている。
この報道の根拠となったSCHMIDの発言は、8月25日に開催された上半期決算説明会までさかのぼる。
SCHMIDの最高営業責任者(CSO)であるRoland Rettenmeierは、質疑応答で、Intel、NVIDIA、AMDのサプライチェーンに属する多くの企業がガラスコア基板に関心を示していると説明した。
同社も主要なサプライチェーン企業と協力し、ガラスコア基板の実用化を支援しているという。
ただし、Rettenmeierの発言が直接示しているのは、半導体メーカー各社のサプライチェーンにおけるガラス基板への関心である。NVIDIA自身が導入を決定したことや、基板メーカーに正式な開発期限を設定したことまで裏付けるものではない。
同じ質疑応答では、ガラス基板の実用化に向けた課題も説明されている。
Rettenmeierは、技術面で最大の障害となっているのはTGV(ガラス貫通ビア)の金属化だと述べた。TGVはガラス基板に設けた微細な貫通穴を通して電気信号を伝える構造で、その内壁などに安定した導電層を形成する必要がある。
さらに同氏は、最終顧客による認証も注目すべき項目だと説明している。
技術的に基板を製造できることと、顧客が量産製品への採用を認めることは別の段階というわけだ。
台湾でも関連技術への投資が進んでいる。
AUOは7月30日の決算説明会で、TGV、RDL(再配線層)、ガラスコアに関する試作ラインへの投資を、86億台湾ドルの設備投資計画に含めていると説明した。
同社の彭双浪董事長は、ガラスコア基板の技術が成熟するまでには、さらに2〜3年かかるとの見方を示している。
InnoluxとTPK-KYも、量産化までには時間が必要だと認めている。
つまり、NVIDIAが早期導入を目指しているという報道がある一方、製造装置メーカーや基板関連企業の発言からは、技術開発と顧客認証にまだ時間がかかる状況がうかがえる。
TSMCの検証用ガラス基板は、2027年世代の必要面積の約半分
AIアクセラレーターは、GPUとHBM(広帯域メモリ)を一つのパッケージにまとめることで、高い演算性能とメモリ帯域を実現している。
世代が進むにつれて搭載するチップやHBMの数が増えるため、パッケージの大型化も進んでいる。
TSMCは2026年の北米技術シンポジウムで、5.5レチクルサイズのCoWoSをすでに量産しており、歩留まりは98%を超えていると説明した。
ここでいうレチクルは、露光装置が一度の露光で形成できるパターンの最大面積を表す基準で、一般的な1レチクルは26×33mmに相当する。
TSMCのロードマップでは、CoWoSのサイズを2027年に9.5レチクル、2028年に14レチクル、2029年には14レチクル超へと拡大する計画だ。
2027年の9.5レチクル世代では、パッケージ基板の寸法が120×150mmになると見込まれている。
なお、現在量産されている5.5レチクルCoWoSの歩留まりは、既存のパッケージ技術についての数字であり、ガラスコア基板の量産歩留まりではない。
パッケージの大型化に伴って問題になるのが、熱による基板の反りである。
半導体パッケージは、シリコンチップ、インターポーザー、有機材料の基板など、熱膨張係数(CTE)の異なる複数の材料を重ねて作られる。
温度が変化すると、それぞれの材料が異なる割合で膨張・収縮する。その結果、材料間に応力が生じ、パッケージ全体が反ってしまう。
パッケージが大型化すれば、材料間の伸び縮みの差も大きくなるため、反りを抑えることがますます重要になる。
ガラスコア基板が注目されている理由の一つは、こうした熱変形を抑えられる可能性があるためだ。
Tom's Hardwareによると、ガラスコアの熱膨張係数は約3〜10ppm/℃の範囲で調整でき、シリコンの約2.6ppm/℃に近づけることができる。有機材料を使った従来のコアと比較すると、反りを約半分に抑えられる可能性もあるという。
ガラス基板は単に新しい材料というだけではない。AI半導体のパッケージが大型化する中で、従来材料では対応が難しくなるという製造上の課題を解決する候補なのである。
では、実際の技術開発はどこまで進んでいるのか。
TECH+は、TSMCが6月11日のJPCA Show 2026で発表した講演資料について、台湾の半導体業界関係者による分析を基に、イビデンやInnoluxとの共同開発結果を報じた。
報道によると、共同開発では厚さ0.8mmのガラスコア基板を採用し、5レチクル相当のチップを搭載する構成を検証した。パッケージの外形寸法は85×110mmだった。
共同開発とシミュレーションによる検証では、パッケージの反りを評価する指標であるCOP(Coplanarity)が16%改善し、有効熱膨張係数は19%低下したという。
重大な反りや層間剥離も確認されなかったと報じられている。
ただし、これらは報道された共同開発・解析結果であり、大型ガラスコア基板を使った量産製品が顧客の最終信頼性認証を通過したことを意味するものではない。
ここで、パッケージの寸法を比較してみる。
今回の検証用パッケージは85×110mmで、外形面積は9,350mm²となる。
これに対し、TSMCが2027年に予定する9.5レチクル世代では、120×150mm、すなわち18,000mm²のパッケージ基板が必要になるとされている。
外形面積の比率は次のようになる。
9,350 ÷ 18,000 ≒ 0.519
つまり、今回の検証用パッケージの外形面積は、2027年世代で想定される基板の約52%に相当する。
5レチクルと9.5レチクルの比率も約52.6%だ。
ただし、レチクル数は露光面積を基準としたものであり、パッケージ全体の外形面積と同じ指標ではない。数値が近いことだけを根拠に、開発が約半分まで進んだと判断することはできない。
85×110mmは検証用パッケージの外形寸法であり、120×150mmは将来世代に必要とされる基板寸法である。この比較から読み取れるのは、大型化に向けてさらに検証が必要になる可能性であって、歩留まりや信頼性の達成度ではない。
また、2028年にガラス基板を採用する場合でも、最初から14レチクル世代の最大構成に使われるとは限らない。採用する製品やパッケージの仕様によって、必要な基板サイズは変わる。
今回の検証では、ガラスコアを上下のABF(味の素ビルドアップフィルム)で挟む構造が採用された。
従来のパッケージを構成する材料をすべてガラスに置き換えるわけではなく、中心部分の材料をガラスへ変更する仕組みである。
この共同開発には、日本の半導体パッケージ基板メーカーであるイビデンも参加している。
Samsung電機とSKC、量産化の計画にはなお不透明さ
ガラス基板の開発では、Samsung電機とSKC傘下のAbsolicsが先行する企業として注目されている。
しかし、両社の量産化に向けた計画や報道を時系列で確認すると、開発を進めながらも、顧客認証や生産設備の整備に時間を要していることが分かる。
| 時期 | 企業 | 発表・報道された内容 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 2026年2月5日 | SKC | 商用化が市場の期待よりやや遅れているとCFOが説明 | Greened |
| 2026年7月初旬 | Samsung電機 | 合弁会社GlaSSEMの設立時に、2027年下期の稼働目標を示す | The Elec |
| 2026年7月 | SKC | 量産時期が2027年にずれ込み、2026年中に最終信頼性試験を終える計画と報道 | Business Post |
| 2026年8月12日 | Samsung電機 | GlaSSEMの設備発注が繰り返し延期され、量産が2028年以降になる可能性があると報道 | The Elec |
| 2026年8月19日 | Samsung電機 | 顧客認証に失敗したとの報道を否定。ガラスコア材料は2027年下期、完成基板は2028年を目標と説明 | TrendForceによる同社説明の紹介 |
| 2026年8月25日 | SCHMID | TGVの金属化と最終顧客による認証を、ガラス基板実用化の重要課題として説明 | 決算説明会 |
| 2026年9月22日 | SKC | Absolicsへの追加出資を発表。顧客認証と技術実証を継続 | SKC公式発表 |
Samsung電機については、報道と会社側の説明を分けて考える必要がある。
The Elecは8月、GlaSSEMの製造装置の発注が繰り返し延期され、量産が2028年以降になる可能性があると報じた。
業界関係者の見方として、顧客の信頼性評価を通過できなかったことが遅延の原因だとも伝えている。
しかしSamsung電機は8月19日、顧客認証に失敗したとの報道を否定し、評価は現在も進行中だと説明した。
同社が示した目標は、ガラスコア材料については2027年下期、完成したガラス基板については2028年である。
したがって、2027年から2028年への単純な計画延期として扱うのは正確ではない。対象となる製品の違いと、会社側が報道内容を否定している点を押さえる必要がある。
一方、SKCについては、7月時点で量産開始が2027年にずれ込むと報じられていた。
ただし、SKCが公式に認めていたのは、商用化が市場の期待よりやや遅れているという点までだった。
Tom's Hardwareは8月27日時点で、Absolicsが2026年末の量産を目指しているとも伝えており、報道間でも目標時期に違いがある。
その後、SKCは9月22日、Absolicsへの追加出資を発表した。
同社によると、ガラス基板事業の商用化を進めるため、顧客による信頼性評価と技術実証を継続している。
Absolicsは、チップなどを内部に埋め込むタイプと、埋め込みを行わないタイプの両方で商用化を進める方針だ。製品ごとに技術検証や顧客認証の段階が異なるため、単一の量産開始時期ですべての開発状況を表すことは難しい。
重要なのは、顧客認証が単なる形式的な手続きではないという点だ。
SKCのCFOは2月の決算説明会で、データセンターやAIアクセラレーターなど、最終製品によって使用環境が異なるため、それぞれに応じた信頼性試験が必要になると説明している。
想定していなかった検証項目が追加されれば、開発期間も延びる。
製造面にも課題が残る。
ガラスは、加工時の衝撃や応力によって端部が欠けたり、微細な亀裂が生じたりする可能性がある。
MIT Technology Reviewによると、Absolicsの初期の量産試験では、数日ごとに数百枚のガラスパネルが割れることもあったという。
SCHMIDが技術的な課題として指摘したTGVの金属化も、量産歩留まりと製品の信頼性を左右する工程だ。
ガラス基板の実用化には、材料特性の改善だけでなく、微細加工の精度、安定した製造歩留まり、最終製品に組み込んだ状態での信頼性を確保する必要がある。
NVIDIAの要求が開発を加速させても、顧客認証には時間がかかる
一方、NVIDIAのような大口顧客が導入時期を具体的に示せば、基板メーカーや製造装置メーカーによる設備投資が加速する可能性はある。
すでに各社は量産化を見据えた投資を進めている。
Absolicsは米国商務省から最大7,500万ドルの直接支援を受け、2026年第1四半期には量産を想定したサンプルを製造した。
日本の大日本印刷(DNP)も埼玉県の久喜工場にガラスコア基板のパイロットラインを設け、2026年初頭からサンプル提供を開始する計画を発表している。
DNPが掲げるのは、2028年度の量産開始に向けた体制構築だ。
2028年度は日本の会計年度では2028年4月から2029年3月までに当たるため、これを2028年より前の量産開始と同じ意味で捉えることはできない。
また、TSMCなどの共同開発結果も、ガラスをパッケージの芯材として利用できる可能性を示している。
こうした動きは、ガラス基板の開発が基礎研究にとどまらず、実際の製造工程や量産化を想定した段階へ進んでいることを示すものだ。
しかし、これまでの開発計画の遅れは、必ずしも需要が不足していたためではない。
SKCの関係者は2月、当初予想していなかった信頼性評価の項目が追加されたことで開発期間が延びており、量産出荷の正確な時期を確定できないと説明していた。
Samsung電機の合弁会社GlaSSEMについても、The Elecは、顧客による試作品の評価が続く中で設備発注が延期されていると報じた。
9月16日には設備発注に向けた動きが再開したとの報道もあったが、最初の発注は早くても10月になるとKIPOSTは伝えている。
大口顧客が開発を急ぐよう求めたとしても、製品の信頼性を確認する工程そのものを省略できるわけではない。
TSMCについても、量産化にはガラスの厚さや大型パッケージの設計に関する研究を続ける必要があると報じられている。
韓国の教保証券の研究員も、単に量産開始の目標年を示すだけでなく、顧客認証の進捗や製造歩留まりがどのように改善しているかを明らかにする必要があると指摘した。
これらの課題は、特にCoWoSクラスの大型AI半導体パッケージにガラスコア基板を採用する場合に重要になる。
小型製品向けや、異なる構造のガラス基板まで含めて、すべて同じ時期に量産化されると考えるべきではない。
2028年の導入に向け、2027年が重要な検証期間に
今後注目すべきなのは、2027年にかけて、主要なガラス基板メーカーがどの程度のサイズで顧客認証を取得できるかという点だ。
NVIDIAが2028年より前の導入を検討しているという報道が事実であれば、供給企業はそれ以前に材料・製造工程・信頼性の各項目について、顧客の要求を満たす必要がある。
特に大型AIパッケージ向けでは、TSMCが2027年に計画する9.5レチクル級の製品に対応できるかが、一つの重要な判断材料になる。
ただし、NVIDIAが最初にどの製品へガラス基板を採用するかは公表されていないため、すべての供給候補が最初から9.5レチクル級の製品を製造する必要があると断定することはできない。
製造装置の納期も、導入時期を考えるうえで重要だ。
The Elecは、Samsung電機が2026年中に装置を発注できたとしても、生産ラインの構築は早くて2027年下期になると報じている。
2028年に量産品を供給する計画を実現するには、その前に顧客認証の見通しを立て、必要な設備の導入を進めなければならない。
2027年6月末ごろまでに、SKC傘下のAbsolics、Samsung電機、DNPなどのいずれかが、大型AIパッケージ向けガラスコア基板の顧客認証や量産出荷について具体的な成果を公表するかどうかは、早期導入の可能性を見極める一つの目安になる。
ただし、2027年6月末という時期は、報道された装置の納期や各社の量産目標から設定した観測上の目安であり、NVIDIAや基板メーカーが正式に定めた認証期限ではない。
それより前の動きとしては、SKCが7月27日の決算説明会で、台湾で実施しているパッケージ単位の信頼性評価について、2026年中に結果が出る可能性を示している。
この評価結果や、各社が今後公表する顧客認証の進捗が、2028年前後のガラス基板導入を考えるうえで重要になる。
NVIDIAが導入を急いでいるという報道は、ガラス基板に対する市場の期待をさらに高めるものだ。しかし、開発期間の短縮を求めることと、量産に必要な技術的課題を解決することは同じではない。
今後は、導入予定年だけでなく、対応できるパッケージの寸法、顧客による信頼性評価の結果、安定した製造歩留まりを各社がどこまで示せるかが、実用化の進展を判断する材料になる。



