Hangzhou Garen Semiconductorが、6インチと8インチの酸化ガリウム・ホモエピタキシャルウェハに対応する量産ラインを整えたと伝えられた。6月24日に発表された内容として、同社は6インチ(100)面の酸化ガリウム・ホモエピタキシャルウェハを主要チップメーカーへ納入し、安定した量産供給の段階に入ったとしている。

焦点は、酸化ガリウムの大口径単結晶を作れるかという研究開発上の記録から、顧客がデバイス試作や量産準備に使えるエピタキシャルウェハを継続して出せるかへ移った点にある。酸化ガリウムは超ワイドバンドギャップ半導体として高耐圧パワー素子への応用が期待されてきた。産業化を妨げてきた要因は、材料の理論性能ではなく、ウェハサイズ、エピタキシャル層の均一性、加工コスト、下流のデバイス検証にあった。

Garen Semiconductorの今回の主張は、上流材料の一部に踏み込むものだ。同社は自社のキャスト成長法による単結晶成長技術とMOCVDエピタキシャル成長プロセスを組み合わせ、単結晶成長、基板加工、ホモエピタキシャル成長までをつなぐ工程を整えたとしている。エピタキシャル層の厚さは10マイクロメートル超、膜厚ばらつきは1%未満とされ、高耐圧、高周波、高温動作を狙うデバイスで求められる面内のそろい方を前面に出している。

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量産ラインの価値は「8インチ対応」より「エピタキシャルウェハを出せること」にある

6インチと8インチに対応するラインは、酸化ガリウムを研究室の小口径材料から、半導体製造の工程に乗せやすい材料へ近づける。ウェハ径が大きくなるほど1枚から取れるチップ数は増える。単純な面積で見れば、8インチウェハは4インチウェハのおよそ4倍になり、材料と加工の単位コストを下げる余地が広がる。

径が大きくなれば自動的に量産技術が成立するわけではない。パワー半導体では、エピタキシャル層の厚さ、ドーピング、欠陥、表面状態のばらつきが、同じウェハ上の素子特性にそのまま跳ね返る。大口径化でチップ数が増えても、面内の特性がそろわなければ、良品として使える素子は増えない。

今回の発表で見るべき数字は、6インチ(100)面ホモエピタキシャルウェハをすでに納入したという供給の実績と、10マイクロメートル超のエピタキシャル層、1%未満の膜厚ばらつきという品質指標である。エピタキシャル層は高耐圧素子の電界を受ける領域に関わるため、厚さと均一性の管理は、顧客が採用を判断する初期条件になる。

Garen Semiconductorは、超薄型基板加工により1本の結晶から取れる基板枚数を従来比で3から4倍に増やし、貴金属イリジウムの消費を抑えることで基板コストを1枚あたり80%以上下げるとも説明されている。酸化ガリウムの強みは、シリコンカーバイドのような難加工材料と違い、溶融法で大きな結晶を育てやすい点にある。コスト低減の主張は、この材料の産業化シナリオの中心にある。

2025年の8インチ単結晶が、今回のエピタキシャルウェハ供給につながった

今回の量産ラインは、Garen Semiconductorが2025年3月に発表した8インチ酸化ガリウム単結晶の延長線上にある。浙江大学のSilicon and Advanced Semiconductor Materials National Key Laboratoryは、同社が2025年3月5日に8インチ酸化ガリウム単結晶を発表し、同じサイズのウェハ基板へ加工できると説明していた。

同ページによれば、同社は2022年5月に2インチ、2023年5月に4インチ、2024年2月に6インチ、2025年2月に8インチの酸化ガリウム単結晶を成長させた。2年あまりで2インチから8インチまで進んだことになる。杭州・蕭山区の行政サイトも2025年3月の記事で、同社が8インチ単結晶を発表し、既存の8インチシリコン系生産ラインとの互換性が産業化を速める可能性に触れている。

Garen Semiconductorの技術的な売り込みは、浙江大学のYang Deren氏のチームが開発したキャスト成長法にある。浙江大学の説明では、この方法は酸化ガリウム単結晶を育てる新しい溶融法で、成長速度は約100ミリメートル毎時、1本のインゴットの厚さは20ミリメートル以上とされる。イリジウムの使用量と損耗を抑えられること、工程が短くサイズを大きくしやすいことも利点として挙げられている。

酸化ガリウムが注目される理由も、この結晶成長のしやすさとつながっている。浙江大学の資料は、β相酸化ガリウムのバンドギャップを約4.8eV、絶縁破壊電界を約8MV/cmとし、シリコン、シリコンカーバイド、窒化ガリウムより高い耐圧性能を狙える材料として説明している。酸化ガリウムは常圧の溶融法で大口径単結晶を成長できる超ワイドバンドギャップ材料であり、8インチの切断加工時間は同サイズのシリコンカーバイドより大幅に短いとされる。

この前段があったからこそ、今回のエピタキシャルウェハ供給の意味が出てくる。単結晶が大きくても、デバイスメーカーが使うのは加工され、表面品質とエピタキシャル層が管理されたウェハである。6インチ(100)面ホモエピタキシャルウェハを安定して出せるという主張は、結晶サイズの記録を、下流の試作ラインが扱える材料へ落とし込む段階に入ったことを示す。

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ホモエピタキシャル層は、デバイス歩留まりを決める最初の品質ゲートになる

ホモエピタキシャル成長とは、基板と同じ材料の結晶層を基板上に成長させる工程である。酸化ガリウムの場合、β-Ga2O3基板上にβ-Ga2O3層を成長させることで、パワー素子のチャネルやドリフト層に使う結晶層を作る。ここで膜厚や不純物濃度がそろわないと、同じマスクで作った素子でもしきい値、オン抵抗、耐圧がばらつく。

研究段階では、2インチウェハでもデバイスの有効性を示せる。2026年6月に公開された論文は、2インチのSiドープβ-Ga2O3(100)ホモエピタキシャルウェハをMOCVDで成長させ、ウェハスケールのMOSFETアレイを作った。しきい値は-28Vから-36V、出力電流密度は60から75mA/mmの範囲に入り、3kVを超える耐圧を示したと報告している。

この研究は、酸化ガリウムが高耐圧素子として動作し得ることを示す一方で、商用化の距離も示している。論文の実証は2インチであり、今回のGaren Semiconductorの材料供給は6インチのエピタキシャルウェハである。ウェハを大きくしながら、膜厚、キャリア濃度、表面粗さ、欠陥密度、加工後の素子特性をどこまでそろえられるかが、次の評価項目になる。

顧客名や実際の採用品目は公開情報からは確認できない。今回の発表を完成品市場への即時参入と読むより、顧客が試作と評価を進めるための材料供給が始まったと見るほうが実態に近い。酸化ガリウムは材料物性では強いが、採用はウェハ、エピタキシャル成長、デバイスプロセス、信頼性試験が一つずつそろって初めて進む。

熱と供給網の制約が、酸化ガリウムの次の評価項目になる

酸化ガリウムには、シリコンカーバイドや窒化ガリウムと比べて有利な点がある。大口径単結晶を育てやすく、理論的な耐圧性能が高い。高圧電力網、電気自動車、太陽光・蓄電、RF通信などが応用先として語られるのも、そのためである。

熱の逃がし方は大きな課題として残る。2014年のβ-Ga2O3単結晶の熱伝導率測定では、室温で[010]方向が27.0W/mK、[100]方向が10.9W/mKとされ、結晶方向による差が大きいことが示された。2025年の研究も、酸化ガリウムはパワーエレクトロニクス向けに独自の潜在力を持つが、低く異方的な熱伝導率が放熱上の課題になると位置づけている。

高耐圧素子は電力密度が上がるほど発熱の扱いが厳しくなる。材料が高い電界に耐えられても、熱が局所的にたまれば性能と信頼性が落ちる。放熱基板との異種接合、薄膜化、パッケージ、デバイス構造を含む設計が、ウェハ供給の次に顧客評価で問われることになる。

供給網の面でも、酸化ガリウムは制約から自由ではない。USGSの2025年版資料によれば、米国では1987年以降、一次の低純度ガリウム回収がなく、一次ガリウムは世界的にボーキサイトや亜鉛鉱処理の副産物として得られる。2024年の世界の一次低純度ガリウム生産では、中国が99%を占めた。中国は2023年にガリウム輸出管理を導入し、2024年12月には米国向け輸出を禁止したとUSGSは記している。

Garen Semiconductorの量産ラインは、中国国内にあるガリウム材料、大学発技術、結晶成長装置、基板加工、エピタキシャル成長工程を結びつける取り組みとして読める。これは中国企業にとっては上流材料の主導権を強める動きであり、海外のデバイスメーカーにとっては材料選択と調達リスクの両面で評価が必要な動きでもある。

次の焦点は、6インチウェハの出荷量そのものではなく、顧客がその材料でどの程度そろった高耐圧デバイスを作れるかに移る。酸化ガリウムがシリコンカーバイドや窒化ガリウムに並ぶ商用パワー半導体材料になるには、大口径ウェハの発表よりも、顧客側の素子データ、長期信頼性、熱設計、価格がそろう必要がある。今回のライン整備は、その評価を始めるための材料がようやく増え始めたことを示している。