MediaTekの次世代フラッグシップチップ「Dimensity 9400」に関する新たな情報がいくつかもたらされた。同社CEOのRick Tsai氏は10月の発表を予告し、大幅な性能向上と収益増を見込んでいる一方で、製造コストの上昇による価格高騰の懸念も浮上している。
Dimensity 9400はパフォーマンスコアのみで構成される性能に特化する
MediaTekは、TSMCの第2世代3nmプロセス(N3E)を採用したDimensity 9400の開発に全力を注いでいる。このチップセットは、ライバルであるQualcommの Snapdragon 8 Gen 4と同様の最先端プロセスで製造される見込みだ。この製造プロセスの採用により、性能と効率の両面で大幅な向上が期待されている。
Rick Tsai CEOは7月31日の決算発表において、Dimensity 9400の発売により年間収益が50%増加すると自信を示した。この予測の背景には、前モデルのDimensity 9300の成功がある。Dimensity 9300は単体で10億ドルの収益をMediaTekにもたらし、2023年には70%の収益成長を実現した。この実績を踏まえると、Tsai CEOの楽観的な見通しにも一定の根拠があると言える。
Dimensity 9400の技術的特徴として、従来のチップセットデザインとは一線を画す構成が挙げられる。効率重視のコアを完全に排除し、パフォーマンスコアのみで構成される、性能に“極振り”した点が注目を集めそうだ。これには、Armの最新「BlackHawk」こと、Cortex-X925 CPU アーキテクチャを採用することで実現される予定だ。この大胆な設計により、シングルコアおよびマルチコアのパフォーマンスで圧倒的な性能を目指している。
さらに、Dimensity 9400のチップサイズは150mm²に達し、300億のトランジスタを搭載する見込みだ。これは、スマートフォン向けチップセットとしては過去最大規模となる可能性がある。この大規模化により、大容量のキャッシュと強化されたNPU(Neural Processing Unit)を実現し、オンデバイスの生成AI機能が大幅に向上すると期待されている。
一方で、著名リーカーのDigital Chat Stationは、Dimensity 9400を搭載したスマートフォンの価格上昇を示唆している。これは最先端の製造プロセス採用によるコスト増が主な要因とみられる。ただし、NPUの性能が前モデル比で40%向上するなど、価格上昇を正当化する様々な改善点も指摘されている。消費電力の効率化やAI処理能力の向上など、ユーザー体験を大きく向上させる要素が多数盛り込まれているという。
市場戦略の面では、MediaTekはすでにvivoを顧客として獲得しているようだ。Dimensity 9400を搭載した最初のフラッグシップスマートフォンはvivoから登場する可能性が高く、その後他のブランドも追随すると予想される。この戦略的パートナーシップにより、MediaTekは高級スマートフォン市場でのシェア拡大を狙っているとみられる。
10月には、QualcommもSnapdragon 8 Gen 4を発表する見込みだ。両社の新型チップセットの性能と価格のバランスが、今後のスマートフォン市場の動向を左右する可能性が高い。MediaTekがDimensity 9400の価格を競争力のあるレベルに設定できれば、CEOの描く収益目標の達成も視野に入るだろう。
しかし、チップセットの大型化や最先端プロセスの採用に伴う製造コストの上昇は、スマートフォンメーカーにとっては大きな課題となる可能性がある。MediaTekがQualcommに対抗して価格を抑えつつ、高性能を維持できるかが注目される。この価格戦略が、MediaTekの長期的なパートナーシップ構築や市場シェア拡大に大きく影響する可能性があるだろう。
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