Microsoftは複合現実(MR)への取り組みを一度は諦めたが、もしかしたらこの分野への再参入を果たすかもしれない。同社がSamsung Displayと大規模なOLED供給契約を結んだという話からは、Microsoftがかつて断念したと思われていたMR事業の再構築を示唆しており、AppleのVision Proに対抗する製品開発を目指す野心的な動きが推測されている。
MicrosoftがSamsung Displayに大規模なOLEDoSの発注を実施
韓国メディアThe Elecの報道によると、MicrosoftはSamsung Displayとマイクロ有機ELディスプレイ(OLEDoS: OLED on Sillicon)の開発・供給契約を締結したとのことだ。契約の詳細は明らかにされていないものの、業界関係者の推測では数十万台規模の供給が見込まれているという。情報筋の話では、Microsoftはこれを用いて次世代MR機器を開発する可能性があると言う。
新しいMRデバイスの特徴として、メタバースよりもゲームや映画などのコンテンツを楽しむことに焦点を当てていることが挙げられる。これは、従来のHoloLensシリーズが主にビジネス用途に特化していたのとは対照的であり、消費者向け市場を狙った製品開発、まさにAppleのVision Proの対抗馬とも言える物だ。
開発中のデバイスの具体的な仕様は明らかになっていないが、Microsoftの特許出願から、Apple Vision Proに似たデザインを採用する可能性があるようだ。OLEDディスプレイとパススルーカメラを使用して拡張現実体験をシミュレートする設計が検討されているようで、これにより、ユーザーは高品質な映像体験と現実世界とのシームレスな統合を期待できる可能性がある。
興味深いのは、このデバイスのオペレーティングシステムについての噂だ。情報筋によると、なんとWindowsではなくAndroidを採用する可能性が高いという。これは、Microsoftの大きな戦略的な転換と言えそうだが、従来のWindows Mixed Realityプラットフォームが2023年12月に終了を発表されたことを考えると、新たなプラットフォームの採用は理にかなっているとも言える。
とはいえ、MicrosoftもWindows環境を完全に手放すわけではない。「Williams Bay」というコードネームで呼ばれるプロジェクトでは、クラウドを介してフルデスクトップWindowsアプリケーションを実行できるソリューションが開発されているという。これにより、ユーザーはMR空間内にデスクトップWindowsアプリを配置し、ローカルで実行しているかのように操作できるようになる可能性がある。さらに、開発者はデスクトップWindowsアプリに3D拡張機能を追加し、MR環境内でより豊かな体験を提供できるようになるかもしれない。
Samsung Displayの側では、このプロジェクトのために「Mプロジェクト」という組織を設立し、OLEDoSの開発と生産に取り組んでいる。Samsung Display副社長が開発と事業化を総括し、Samsung ElectronicsのSystem LSI事業部門と協力して進めているという。この協力体制は、高品質なディスプレイの開発と大量生産を可能にする重要な要素となるだろう。
新デバイスの発売時期については、早くても来年、より現実的には2026年になるのではないかと見られている。この時期は、技術開発やサプライチェーンの整備、さらには市場動向の分析に十分な時間を確保するためと推測される。
MicrosoftのMR事業の歴史を考えると、この計画が最終的に実現するかどうかは不透明な部分もある。過去には、HoloLens 3の開発中止や、Windows Mixed Realityプラットフォームの終了など、MR分野での挫折も経験している。しかし、今回の動きは、同社がこの分野での競争力を取り戻そうとする強い意志を示していると言えるだろう。
MR/VR市場は現在、AppleのVision Pro、GoogleとSamsungの提携、そしてMetaのOculus Questシリーズなど、多くのプレイヤーが激しい競争を繰り広げている。Microsoftの参入は、この競争をさらに活発化させ、技術革新を加速させる可能性がある。同時に、コンテンツやアプリケーションの開発、ユーザー体験の向上など、様々な面での進展が期待される。
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