Microsoftは、自律型AIエージェント機能を搭載したCopilot Studioを2024年11月からパブリックプレビューとして提供開始すると発表した。これに合わせて、企業向けソフトウェアDynamics 365向けに10種類の新しい自律型エージェントを導入することも明らかにした。
Fortune 500企業の6割が採用するCopilotが進化
同社のAIマーケティング責任者であるJared Spataro氏は「既にFortune 500企業の60%がMicrosoft 365 Copilotを活用してビジネス成果を加速し、チームの能力を強化している」と述べている。具体例として、通信企業のLumen Technologiesは年間5,000万ドルのコスト削減を見込み、Honeywellは187人分のフルタイム従業員に相当する生産性向上を達成。また、金融ソフトウェアプロバイダーのFinastraは、クリエイティブ制作の所要時間を7ヶ月から7週間に短縮することに成功したという。
法律事務所のClifford Chance、コンサルティング会社のMcKinsey & Company、英国の大手ペットケア企業Pets at Home、メディア企業のThomson Reutersなど、様々な業界のリーディングカンパニーが既にCopilot Studioを活用したエージェント開発を進めている。例えば、Pets at Homeは不正検知チーム向けのエージェントを開発し、年間で7桁の金額に相当するコスト削減効果が見込まれるとしている。
自律型エージェントが実現する業務革新
新たに導入される自律型エージェントは、従来のチャットボットとは一線を画す高度な機能を提供する。Microsoft Corporate Vice PresidentのBryan Goode氏は、VentureBeatのインタビューで「これらのエージェントは、AIの時代における新しいアプリケーションだと考えている。今日存在する全てのビジネスシステムは、Copilotの上で動作するエージェントとして再構築されることになるだろう」と語っている。
具体的な機能として、メール受信をトリガーとして送信者の詳細確認、過去のコミュニケーション履歴の参照、生成AIを活用した適切なアクション連鎖の実行などを自動的に行うことが可能となる。また、ITヘルプデスク、新入社員のオンボーディング、営業・サービス向けのパーソナルコンシェルジュなど、様々な業務シーンでの活用が期待されている。
Microsoft社内での導入実績も注目に値する。営業チームでは1人あたりの売上が9.4%向上し、成約件数が20%増加。カスタマーサービスチームでは案件解決までの時間が12%短縮。さらに、マーケティングチームではAzure.comにおけるカスタムエージェントの導入により、コンバージョン率が21.5%向上。人事部門では従業員向けセルフサービスエージェントによる質問回答の正確性が42%向上するなど、具体的な成果が報告されている。
Dynamics 365向け特化型エージェントの展開
Dynamics 365向けに提供される10種類の自律型エージェントは、各部門の業務効率を劇的に向上させることを目指している。主な機能は以下の通りだ:
- Sales Qualification Agent:営業担当者がより優先度の高い商談に注力できるよう、リードの調査や機会の優先順位付けを支援。パーソナライズされたメールの作成も自動化
- Supplier Communications Agent:サプライヤーのパフォーマンス追跡や遅延検知を自動化し、調達チームの作業負荷を軽減。コストのかかる供給の混乱を最小限に抑制
- Customer Intent and Knowledge Management Agent:顧客対応チームの効率を向上させる知識ベース記事の自動生成と更新機能を提供。過去の対応履歴から顧客の意図を理解し、最適な対応を支援
- Time and Expense Agent:プロジェクト管理における時間入力、経費追跡、承認プロセスを自動化し、請求書の適時発行をサポート
これらのエージェントは2024年後半から2025年初頭にかけて順次パブリックプレビューが開始される予定だ。
Salesforceとの競争激化
この発表は、SalesforceのAgentforceプラットフォーム発表から数週間後のタイミングとなる。Salesforce CEOのMarc Benioff氏が「Microsoft Copilotは『Clippy 2.0』のようなものだ」と批判していた中での対抗措置として、業界の注目を集めている。
両社のアプローチには明確な違いが見られる。Microsoftはオフィス生産性とクラウドコンピューティングにおける優位性を活かし、Microsoft 365やAzureとの統合を通じてAIの導入をシームレスにする戦略を取っている。一方、Salesforceは顧客関係管理(CRM)の専門知識と、最近開発したData Cloudの機能を活用し、顧客関係を理解し最適化するAIエージェントの開発に注力している。
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