データセンターストレージの新たな転換点となる発表が行われた。PhisonとSolidigmが、ほぼ同時に120TB超の大容量SSDを発表。両社の新製品は、AIワークロードの急増に対応する次世代データセンター向けストレージとして注目を集めている。
PhisonのSSD新製品詳細
Phison、PCIe Gen 5の高速性を最大限に活用
Phisonが発表したPascari D205Vは、データセンター向けストレージの新しい地平を切り開く意欲作となっている。実容量122.88TB(マーケティング表記では128TB)を実現する本製品は、PCIe Gen 5インターフェースの高速性を最大限に引き出すことに成功している。最大14,600MB/sという印象的な順次読み取り速度は、現行の主力製品と比較して大幅な性能向上を実現している。
特筆すべきは、4Kランダムリードにおける300万IOPSという卓越した性能だ。この数値は、AIトレーニングやデータ分析といった、大量のデータに対するランダムアクセスを必要とする現代のワークロードに最適な特性といえる。一方で、3,200MB/sの順次書き込み速度は控えめな印象を受けるが、これは大容量QLC NANDを採用する際のトレードオフと考えられる。
Phisonは本製品において、デュアルポートのPCIe 5.0 2×2構成もサポートしている。この柔軟な接続オプションにより、データセンターの冗長性要件に応えつつ、信頼性の向上も実現している。また、電源損失保護機能や128ネームスペースのサポートなど、エンタープライズグレードの機能も充実している。
Phison Pascari D205Vの仕様
- インターフェース仕様
- PCIe 5.0 x4(シングルポート)または PCIe 5.0 2×2(デュアルポート)対応
- NVMe 2.0準拠
- ISEおよびTCG Opal暗号化対応
- NVMe-MI管理インターフェース搭載
- パフォーマンス指標
- 順次読み取り:最大14,600MB/s
- 順次書き込み:最大3,200MB/s
- 4Kランダムリード:300万IOPS
- 16Kランダムライト:35,000IOPS
- 信頼性・耐久性
- DWPD(Drive Writes Per Day):0.3
- MTBF:250万時間
- 電源損失保護(PLP)機能搭載
- 128ネームスペース対応
SolidigmのSSD新製品詳細
Solidigm、信頼性と効率性を重視した戦略的アプローチ
一方、SolidigmのD5-P5336は、実績あるPCIe Gen 4プラットフォームをベースに、信頼性と効率性を追求した製品となっている。同じく122TBという大容量を実現しながら、異なるアプローチで市場ニーズに応えようとしている点が興味深い。
本製品は7,400MB/sの順次読み取り速度と93万IOPSのランダムリード性能を実現している。これらの数値はPCIe Gen 4の理論限界に近い性能であり、既存のインフラストラクチャでの運用を重視するデータセンターにとって、現実的な選択肢となるだろう。特に注目すべきは、業界初となる5年間の無制限ランダムライト耐久性保証だ。この特徴は、継続的なデータ書き込みを行うAIトレーニングワークロードにおいて大きなアドバンテージとなる。
電力効率の面でも、Solidigmのアプローチは秀逸だ。最大消費電力25W、アイドル時5W未満という低消費電力設計は、データセンターの運用コスト削減に直接貢献する。さらに、30TB TLC SSDと比較して1ワットあたり3.4倍のストレージ容量を提供できる点は、総所有コストの観点から極めて魅力的な特徴といえる。
Solidigm D5-P5336
- インターフェース仕様
- PCIe 4.0 x4
- NVMe 2.0準拠
- OCP 2.0機能サポート
- FIPS 140-3 Level 2認証準拠
- パフォーマンス指標
- 順次読み取り:最大7,400MB/s
- 順次書き込み:最大3,200MB/s
- ランダムリード:930,000IOPS
- ランダムライト:25,000IOPS
- 信頼性・耐久性
- DWPD:0.6(5年間)
- 総書き込み保証:134.3PB
- 業界初の5年間無制限ランダムライト耐久性保証
- 192層3D QLC NANDメモリ採用
両製品とも2025年のQ1からQ2にかけて本格出荷が開始される予定だが、すでにサンプリングは開始されている。特筆すべきは、両社とも既存のデータセンターインフラとの互換性を重視した設計を採用している点である。
データセンターへのインパクト
両社の新製品は、データセンターの密度と効率性を大幅に向上させる可能性を秘めている。24ベイのサーバーで最大2.2ペタバイトのストレージを実現でき、従来のHDDと比較して格段に高い記憶密度を達成できる。特に、AIトレーニングやビッグデータ分析など、大容量かつ高速なストレージを必要とするワークロードにおいて、その真価を発揮するだろう。
さらに、両製品ともに電力効率を重視した設計となっている点も注目に値する。データセンターの電力消費が増大する中、ワットあたりの容量効率の向上は、運用コストの最適化に直接的に貢献する要素となる。
Sources
コメント