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Wi-Fi 8はWi-Fi 7と同等の速度を維持しながら信頼性と実行スループットに注力する

Y Kobayashi

2024年11月15日

MediaTekは、2028年に登場予定の次世代無線LAN規格「Wi-Fi 8」(IEEE 802.11bn)のホワイトペーパーを公開した。これによれば、Wi-Fi 8は、通信速度よりも信頼性と実効スループットの向上に主眼を置いた規格となるようだ。

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基本仕様はWi-Fi 7を踏襲、実効性能を重視

Wi-Fi 8の物理層の基本仕様は、Wi-Fi 7とほぼ同等となるようだ。最大物理レート23Gbps、周波数帯は2.4/5/6GHz、変調方式は4096QAM、最大チャネル帯域幅は320MHzを維持する。ただし、実際のピークスループットは理論値の約80%程度になるとMediaTekは説明している。

重要な変更点は、複数のアクセスポイント間の協調動作を強化し、実効スループットを向上させる点にある。

4つの革新的な新機能の詳細解説

Wi-Fi 8の現在の計画では、Wi-Fiが最低100Gbpsに達する集約スループットを持つネットワークをサポートできるようにすることに焦点が置かれている。 これを可能にする青写真には、デバイスがネットワークとどのように相互作用するかをターゲットにすることが含まれる。 注目すべき進歩には、協調空間再利用(Coordinated Spatial Reuse)、協調ビームフォーミング(Coordinated Beamforming)、ダイナミック・サブチャネル・オペレーションなどがある。

1. 協調空間再利用 (Co-SR)

技術概要

  • 複数のアクセスポイント間で送信電力を動的に調整し、干渉を抑制しながら同時通信を実現
  • Wi-Fi 6のSpatial Reuseを発展させ、APの協調動作を強化

動作プロセス

  1. Cross-BSS測定フェーズ:APが他のBSSの干渉強度を測定し、情報を共有
  2. マルチAP協調フェーズ:主導APがCo-SR通知フレームを送信し、参加APと送信電力制限を指定
  3. 同時送信フェーズ:複数のAPが協調して同時送信を実行

実績データ

  • MediaTekの試験では、一般的なメッシュWi-Fi環境(Control AP 1台 + Agent AP 1台)で15-25%のスループット向上を確認

2. 協調ビームフォーミング (Co-BF)

技術概要

  • Wi-Fi 5から導入されたビームフォーミング技術を複数AP環境に拡張
  • 特に近接した複数デバイスが存在する環境での性能向上に効果を発揮

動作プロセス

  1. Cross-BSSチャネルサウンディング:各デバイスがChannel State Information (CSI)を測定
  2. マルチAP協調:APが情報を交換し、干渉を抑制するステアリングマトリックスを計算
  3. 同時送信:計算されたステアリングマトリックスを適用して送信を実行

性能向上

  • メッシュネットワーク環境で20-50%のスループット改善を実現
  • 特に高密度な環境(商業施設やオフィス)での効果が顕著

3. 新データレート制御(New Data Rate)

技術背景

  • 既存のMCS(変調符号化方式)では、隣接レベル間のSNR要件に大きなギャップ(最大4dB)が存在
  • 移動時などの通信速度低下が急激になる原因に

新たに追加されるMCS

  • QPSK(2/3符号化率)
  • 16-QAM(2/3符号化率)
  • 256-QAM(2/3符号化率)
  • 16-QAM(5/6符号化率)

期待される効果

  • より細やかな通信速度の調整が可能
  • チャネル状態に応じて5-30%の通信速度向上
  • 移動時の急激な速度低下を緩和

4. ダイナミック・サブチャネル・オペレーション (DSO)

技術概要

  • チャネル帯域幅の異なる端末が混在する環境向けに最適化
  • Wi-Fi 7までのSubchannel Selective Transmission (SST)を進化させた技術

動作フェーズ

  1. 性能ハンドシェイク:APがDSO対応端末の性能情報を収集
  2. 初期制御:APがサブチャネルを割り当て、切り替え時間を確保
  3. DSO送信:割り当てられたサブチャネルで通信を実行

性能向上データ

  • 通常使用で20%以上のスループット向上
  • 高負荷時には最大80%の改善を実現
  • 端末の切り替え時間とトラフィックパターンが性能に影響

これらの新機能は、特にメッシュネットワークや高密度環境での実効スループットと信頼性の向上に重点を置いており、Wi-Fi 8の主要な技術革新として期待されている。ただし、最大限の効果を得るには、接続される機器もWi-Fi 8に対応している必要がある点に注意が必要だ。

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製品化は2027年末から開始予定

標準規格の最終承認は2028年9月を予定しているが、MediaTekは2027年末から製品の出荷を開始する見込み。Wi-Fi 7同様、規格の正式承認前から製品化が進められる。

Xenospectrum’s Take

今回のWi-Fi 8は、単なる速度競争から実用性重視へと舵を切った意欲的な規格といえる。特に注目すべきは、複数アクセスポイント間の協調動作を深化させた点だ。メッシュWi-Fiの普及に伴い、この機能の重要性は今後さらに高まるだろう。

一方で、これらの新機能を最大限活用するには、全ての機器がWi-Fi 8に対応している必要がある。既存機器との混在環境では、その効果は限定的となる可能性も否めない。完全な移行には、相応の時間を要するはずだ。


Sources

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