NVIDIAの最新GPU、RTX 50シリーズで、32ビット版PhysXのハードウェアアクセラレーションサポートが密かに終了した。これにより、『Mirror’s Edge』や『Batman: Arkham Asylum』など、一部の古いゲームでパフォーマンスが大幅に低下する可能性がありそうだ。
PhysXサポート終了の影響
NVIDIA RTX 5090などのRTX 50シリーズは、DLSS 4などの最新機能をサポートする一方で、古いゲーム機能であるPhysXの32ビット版ハードウェアアクセラレーションをサポートしなくなった。この変更により、PhysX対応タイトルでは、物理演算がCPUで処理されることになり、パフォーマンスが大幅に低下する場合がある。
例えば、『Batman: Arkham Asylum』では、PhysXをCPUで処理すると、フレームレートが約400fps(PhysXオフ)から40fps(PhysXオン)に低下する。RTX 4090でPhysXをGPU処理した場合でも、フレームレートは約200fpsと、PhysXオフの半分程度になるようだ。
PhysXの歴史と衰退
PhysXは、かつてPCゲームにおける革新的な物理シミュレーション技術だった。2005年の登場以来、専用のPhysXカードやNVIDIA GPUによるハードウェアアクセラレーションにより、リアルな霧、パーティクルエフェクト、布の動き、破壊可能な建物などを実現してきた。
しかし、PhysXはそのパフォーマンスへの影響の大きさや、実装の複雑さから、多くのゲーム開発者が採用を見送るようになった。また、『Unreal Engine 5』などの最新ゲームエンジンには、同等の物理エフェクトが組み込まれており、PhysXの必要性が薄れてきたことも衰退の要因となっている。
NVIDIAによるPhysXの買収(2008年にAgeiaを買収)後、PhysXはNVIDIA GPUに統合され、多くのゲームで採用された。しかし、CUDAというNVIDIA独自のプラットフォームを使用していたため、競合GPUやコンソール、スマートフォンでの利用が制限されていた。
影響を受けるゲームと今後の展望
RTX 50シリーズでのサポート終了の影響を受ける最も新しいゲームは、2013年に発売された『Assassin’s Creed IV: Black Flag』である。ResetEra.comによると、他にも『Metro 2033』、『Borderlands 2』などが影響を受ける。
NVIDIAは、2024年1月に32ビットCUDAアプリケーションのサポートをRTX 50シリーズから廃止することを発表していた。64ビット版PhysXのサポート状況については言及されていないが、Tom’s Hardwareによると、64ビットゲームでPhysXが統合されたものは存在しないとみられ、事実上RTX50シリーズ以降PhysXのサポートが終了したとみられる。
ゲーム保存の観点からは、CUDAプラットフォームの進化によってゲームの特定の側面が失われることは、CDの傷やWindowsの互換性の問題よりも説明が難しい課題である。
XenoSpectrum’s Take
NVIDIAのPhysXサポート終了は、技術の進化とレガシーサポートのバランスの難しさを示している。PhysXは、PCゲームの物理表現を大きく進化させた功績がある一方で、技術的な制約や新しい技術の台頭により、その役割を終えつつある。
今回の変更は、一部の古いゲームのファンにとっては残念なニュースだが、ゲーム業界全体としては、よりオープンで汎用性の高い物理シミュレーション技術への移行が進んでいることを示している。今後は、ゲームエンジンに組み込まれた物理演算や、GPUに依存しないソリューションが主流になっていくだろう。
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