OpenAIのSam Altman CEOは、同社のオープンソース戦略が「歴史的に見て誤っていた」可能性を示唆し、戦略転換の可能性に言及した。中国DeepSeekの高性能オープンソースモデルの登場を背景に、AI開発における競争環境の変化を認識し、よりオープンなアプローチを検討する姿勢を示す。
OpenAIのオープンソース戦略は「歴史的に誤り」Altman CEOが発言
OpenAIのSam Altman CEOは、RedditのAMA(Ask Me Anything)セッションにおいて、同社のオープンソース戦略について「歴史的に見て誤っていた(on the wrong side of history)」と認め、戦略の見直しが必要であるとの認識を示した。この発言は、OpenAIが近年採用してきた、モデルを非公開とする戦略からの転換を示唆するものである。
Altman氏は、社内でもオープンソース戦略に関する議論が行われていることを認めつつも、現時点ではOpenAI社内で全員がこの見解を共有しているわけではなく、最優先事項ではないと述べた。しかし、競合他社、特に中国のDeepSeekが開発した高性能なオープンソースモデル「R1」の登場は、OpenAIの戦略見直しを迫る大きな要因となっていると考えられる。
DeepSeekの躍進がOpenAIの戦略転換を後押し
DeepSeekは、わずか2000基のNVIDIA H800 GPUで、OpenAIのシステムに匹敵する性能を持つAIモデルを開発したと発表した。この主張の真偽については様々な意見が出ているが、それが事実であった場合、主要なAI研究所が通常使用する1万基以上のGPUと比較して、大幅に少ない計算資源で高度なAIモデルを構築できる可能性を示唆するものだ。DeepSeekのR1モデルは、推論過程を外部に公開する「Chain of Thought」機能を持ち、透明性の高いAI開発を推進している。
DeepSeekの躍進は、OpenAIがこれまで強みとしてきた大規模な計算資源への依存からの脱却、すなわちアルゴリズムの革新とアーキテクチャの最適化が、AI開発においてより重要になる可能性を示唆するものだ。Altman氏も「より優れたモデルを開発するものの、これまでほどのリードを維持できなくなるだろう」と述べ、DeepSeekのような競合の台頭により、OpenAIの優位性が縮小するとの見通しを示している。
オープンソース戦略再考の背景と今後
OpenAIは、設立当初は非営利団体として、汎用人工知能(AGI)が人類全体にもたらす利益を追求することをミッションに掲げていた。しかし、GPT-3、GPT-4といった大規模言語モデルの開発以降、安全性の懸念を理由に、オープンソース戦略から距離を置き、モデルの非公開化を進めてきた。
しかし、DeepSeekのR1モデルの成功は、オープンソースモデルがクローズドモデルに匹敵する、あるいは凌駕する可能性を示唆する。MetaのAI主任科学者であるYann André LeCun氏は、DeepSeekの登場に対し「オープンソースモデルがプロプライエタリなモデルを凌駕している」と指摘し、オープンな研究開発の重要性を強調している。
OpenAIが再びオープンソース戦略に舵を切る可能性は、AI開発の民主化とイノベーションの加速につながる可能性がある。一方で、AIの安全性やセキュリティを確保するための取り組みが複雑になる可能性も指摘されている。Altman氏は、オープンソース戦略への転換がOpenAIの最優先事項ではないと述べており、今後の具体的な戦略は不透明である。しかし、DeepSeekの台頭は、OpenAIの戦略に大きな影響を与え、AI業界全体の勢力図を塗り替える可能性を秘めていると言えるだろう。
Source
コメント