Preferred Networks(PFN)は、生成AI処理に特化した次世代AIプロセッサー「MN-Core L1000」の開発を開始したことを発表した。三次元積層メモリ技術を採用し、既存GPUと比較して最大10倍の推論処理速度を実現。2026年の製品化を目指す。
革新的な三次元メモリ構造で推論処理を高速化
生成AI分野での大きな課題の一つが、推論時に必要となる数百ギガバイト規模のデータ転送である。従来のコンピューティングアーキテクチャでは、演算ユニットとメモリユニットの間でデータを転送する必要があり、この転送プロセスで莫大な電力の消費が発生するのだ。L1000は、この課題に対して三次元積層DRAM技術を採用することでブレークスルーを図る。
従来のハイエンドGPUが採用するHBM(High Bandwidth Memory:高帯域幅メモリ)と比較して、メモリ帯域幅を大幅に拡大。さらに、近年のAIプロセッサーで主流のSRAMと比較して、大容量かつ低コストなDRAMを採用することで、経済性と性能を両立させている。
MN-Coreの省電力DNA を継承
L1000は、Green500で3度の世界一位を獲得したMN-Coreアーキテクチャの設計思想を継承している。高密度実装された演算器と分散メモリをソフトウェア制御することで、消費電力と排熱を最小化する技術は、三次元積層メモリ採用における重要な技術的基盤となっている。
排熱の少なさは、三次元積層メモリ技術の実用化における重要な課題の一つである熱問題の解決にも貢献。これにより、高性能と安定性を両立させることに成功している。
Xenospectrum’s Take
PFNのL1000開発は、生成AI市場における日本発のゲームチェンジャーとなる可能性を秘めている。特筆すべきは、単なる性能向上だけでなく、電力効率と経済性を同時に追求している点だ。
しかし、2026年という製品化時期は、急速に進化する生成AI市場において「やや遅い」という印象は否めない。とはいえ、純国産生成AI基盤モデルPLaMoとの組み合わせによる相乗効果を考えれば、国産AI基盤の確立という観点から、その戦略的重要性は高く評価されるのではないだろうか。
また、PFNといえば、Samsungの2nmプロセスを使ったAIチップ製造が以前伝えられていた。今回のプレスリリースではこのことについては触れられていないが、MN-Core L1000の発売目標が2026年と言う事を鑑みれば、Samsungの技術が用いられる可能性が高そうだ。
Sources
- Preferred Networks: 生成AI向けプロセッサーMN-Core L1000の開発を開始
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