英国のQuinas Technologyが開発中のUltraRAMが、メモリ技術の革新をもたらす可能性が高まっている。この新技術は、非揮発性フラッシュメモリと揮発性RAMの長所を組み合わせ、超高効率かつ高耐久性を実現する。QuinasはInnovate UKから110万ポンドの資金を獲得し、UltraRAMの量産化に向けた取り組みを加速させている。
UltraRAMの画期的な特性と技術的革新
UltraRAMの最大の特徴は、その驚異的な耐久性とデータ保持能力にある。Quinas Technologyによれば、UltraRAMは最大1000万回の書き換えサイクルに耐えられるという。さらに驚くべきことに、UltraRAMに格納されたデータは電源供給なしで1000年もの間保持できるとされている。
この革新的な性能は、UltraRAMの独自の構造に起因する。InAs/AlSb(ヒ化インジウムとアンチモン化アルミニウム)材料で作られた三層浮動ゲート設計を採用しており、これにより卓越したエネルギー効率とデータ保護を実現している。読み取り操作では、電子が共振時に三重ポテンシャル障壁を通過してセルに入り、消去過程では同様の方法で退出する。このメカニズムにより、書き込み過程が極めて省エネルギーとなっている。
効率性の面でも、UltraRAMは従来のメモリ技術を大きく上回る。DRAMと比較して100倍、3D NANDと比較して1000倍もの高いエネルギー効率を誇る。これは、コンピューティングのあらゆる規模でのエネルギー節約と炭素排出削減に大きな可能性をもたらす。
Quinas Technologyは現在、UltraRAMウェハーの直径を3インチから6インチに拡大する取り組みを進めている。次の段階では、8インチウェハー上での製造を目指し、最終的には工業プロセスとしてウェハー工場に適した技術への転換を図る。この開発は、英国の半導体企業IQEとの協力のもとで進められており、UltraRAMが英国経済に大きな機会をもたらすと期待されている。
「ランカスターは、工業的成長のためのコントロール/テンプレートとして、初期のMBEエピタキシーを行う予定です。 これと並行して、ランカスターは、個々のデバイスのサイズを小さくし、より大きなアレイを作ることで、UltraRAMのスケーリングに取り組んでいきます。 デバイスが十分に小さくなり、アレイが十分に大きくなったら、次の段階として、完全な8インチ・ウェハでの製造を実証し、そのプロセスを半導体ファウンドリーに適した工業的なものに変換する予定です」と、共同創設者兼最高科学責任者のManas Hayne氏は述べている。Hayne氏は英ランカスター大学の教授でもあり、UltraRAMの考案者だ。
UltraRAMの実用化には、設計の複雑さや適切な製造設備の不足など、まだ課題が残されている。しかし、今回の資金調達と開発の進展により、この革新的なメモリ技術の量産化への道筋が見えてきた。コンピューティングの効率を飛躍的に向上させる可能性を秘めたUltraRAMの今後の展開が、業界から大きな注目を集めている。
Sources
- Lancaster University: Over £1M for global semiconductor firm IQE to enable industrialisation of ULTRARAM
- Electronics Weekly: Quinas gets £1.1m to produce UltraRAM
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