DRAM価格の大幅上昇が始まった。SK hynixがDDR5メモリの価格を最大20%引き上げる方針を明らかにしたのだ。このことは、AI需要の急増によりHBM(High Bandwidth Memory)の生産にリソースが集中し、通常のDRAM供給が逼迫していることが背景にある。この動きは他のメモリメーカーにも波及し、一般消費者向けメモリ市場にも大きな影響を与える可能性が高い。
DRAM価格引き上げはSK hynixだけに留まらない
台湾の経済紙「経済日報」によると、SK hynixは、DDR5メモリチップの価格を15%から20%引き上げる計画を明らかにしたとのことだ。
SK hynixの価格引き上げ決定の背景には、AIサーバー市場の急激な拡大がある。NVIDIA社のGPUに代表されるAIチップの需要増加に伴い、HBMの需要も急増している。SK hynixはこの需要に応えるため、既存のDRAM生産ラインの20%以上をHBM生産に振り向けることを決定した。さらに、2024年のHBM生産能力は既に完売状態で、2025年の生産能力もほぼ売り切れているという。
この動きはSK hynixだけにとどまらない。Samsungも既存のDRAM生産能力の約30%をHBM生産に振り向けると発表しており、米国のMicronも同様の戦略を取っているとされる。大手メーカーがこぞってHBM生産にシフトすることで、DDR4やDDR5などの一般的なDRAM製品の供給が大幅に減少し、価格上昇圧力が高まっている。
台湾の業界関係者によると、今回のSK hynixの価格引き上げは主に契約価格を対象としているという。しかし、この動きは現物価格にも波及する可能性が高い。台湾のメモリモジュールメーカーにとっては、この価格上昇が好機となりそうだ。例えば、TeamGroupは現在、DRAM関連製品が売上の約70%を占めており、そのうちDDR5の比率は60%近くに達している。同社は6月末時点で約84億台湾ドル(約380億ドル)の在庫を抱えており、価格上昇による利益が期待できる。
同様に、ADATAも約200億台湾ドル(約911億円)の低価格在庫を保有している。同社の陳立白会長は、HBMがDRAMメーカーの生産能力を大幅に消費することで、DDR5およびDDR4の価格が四半期ごとに上昇すると予測している。
一方、Nanya Technologyは自社の1B製造プロセス技術を用いて開発した16Gb DDR5の出荷を開始したばかりで、この価格上昇の波に乗る好機を得た形だ。同社は、大手メモリメーカーの減産とAIによるHBM需要の急増が、様々なタイプのDRAMに波及効果をもたらし、DRAM業界の市況が明らかに好転していると見ている。
消費者にとっては、このDRAM価格の上昇は悩ましい問題となりそうだ。専門家の間では、DDR5メモリの価格が今後数週間から数ヶ月の間に平均で50%程度上昇する可能性があるとの予測も出ている。特に、今年後半に予定されているAMDのRyzen 9000シリーズやIntelのArrow Lake CPUの登場により、DDR5メモリの需要はさらに高まると予想されている。
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