テクノロジー市場の専門家たちが、2024年第4四半期におけるNANDフラッシュ製品、特にSSDの価格動向に注目している。市場調査会社TrendForceの最新レポートによると、2024年末にかけてSSD価格が最大10%下落する可能性があるという。この予測が現実となれば、消費者にとっては大きな朗報となるだろう。
NANDフラッシュ市場の概況と価格動向
TrendForceの分析によると、2024年下半期のNANDフラッシュ製品市場は、予想を下回る季節需要の影響を受けている。この需要低迷は第3四半期のウェハー契約価格の下落をもたらし、第4四半期にはさらに深刻化する見込みだ。具体的には、第4四半期のNANDフラッシュ契約価格全体で3〜8%の下落が予測されている。
しかし、この価格下落傾向は製品セグメントによって異なる様相を見せている。エンタープライズSSDは例外的に、安定した受注モメンタムに支えられ、第4四半期の契約価格が0〜5%上昇すると予測されている。一方で、PC向けSSDやUFS(Universal Flash Storage)は、最終製品の販売不振により、買い手がより慎重な調達戦略を採用する傾向にある。
この市場動向は、テクノロジー業界全体に波紋を投げかけている。特に、PCやスマートフォンなどの消費者向け電子機器メーカーにとっては、部品コストの低下が製品価格設定に影響を与える可能性がある。しかし、この価格下落が消費者需要を刺激し、市場を活性化させる可能性も否定できない。
製品別の価格予測: クライアントSSDが最大の下落幅
TrendForceの予測によると、各NANDフラッシュ製品セグメントの価格動向は以下の通りとなっている:
- クライアントSSD: クライアントSSD、つまり一般消費者向けSSDの価格は、第4四半期に5〜10%の下落が予想されている。この下落幅は、NANDフラッシュ製品の中で最も大きいものの一つだ。
価格下落の背景には、需要と供給の両面での要因がある。需要面では、インフレやAI PCの実用的なユースケースの不足により、大規模なアップグレードサイクルが起こっていない。供給面では、第3四半期に主要メーカーが全能力稼働に戻り、他のサプライヤーがプロセス改善を通じて生産量を増加させた結果、全体的な供給能力がわずかに上昇している。
- エンタープライズSSD: エンタープライズSSD市場は他のセグメントとは対照的に、0〜5%の価格上昇が予測されている。しかし、この上昇幅は当初の予想を下回っている。第4四半期のサーバーOEM注文が目立って減少しており、その原因として一部の企業顧客によるAIサーバー展開の遅延が挙げられている。
- eMMCおよびUFS: 主にスマートフォンに使用されるeMMCとUFSの価格は、第4四半期に8〜13%の下落が予想されている。スマートフォン市場の回復の兆しが見られないことが主な要因だ。新モデル(iPhone 16シリーズ、Huaweiの折りたたみ式スマートフォン、中国ブランドの新製品など)が市場に新たな勢いをもたらす可能性はあるものの、買い手は過剰在庫のリスクを避けるため、より慎重な在庫戦略を採用する可能性が高い。
- NANDフラッシュウェハー: NANDフラッシュウェハーの契約価格は、第4四半期に10〜15%の大幅な下落が予測されている。TrendForceは、モジュールメーカーが過剰な在庫を抱えていることや、一部のサプライヤーが価格切り下げ戦略を採用していることを指摘している。市場条件がさらに悪化すれば、さらに急激な価格下落の可能性もある。
これらの予測は、NANDフラッシュ市場全体が価格下落の圧力にさらされていることを示している。特に消費者向け製品セグメントでは、年末商戦を前に大幅な値下げが期待できそうだ。
価格下落の要因分析: 需要低迷と供給過剰の悪循環
NANDフラッシュ製品、特にSSDの価格下落の背景には、複数の要因が絡み合っている。TrendForceの分析を基に、主な要因を以下に整理する:
- 需要の低迷: 2024年初頭から、クライアントSSD、メモリカード、USBドライブなどの小売需要は低迷を続けている。欧米での新学期や年末商戦といった季節的な販売機会も、消費者の関心を十分に引き上げることができていない。さらに、中国の経済減速により、今年の「ダブル11(独身の日)ショッピングフェスティバル」での需要も弱まると予想されている。
- 供給の増加: 第3四半期には、多くの主要メーカーが全能力稼働に戻り、一部のサプライヤーはプロセス改善を通じて生産量を増加させた。この結果、全体的な供給能力が上昇し、需要低迷と相まって過剰供給の状況を生み出している。
- AI PCの不振: メーカーがAI搭載PCを積極的に市場に投入しているにもかかわらず、インフレやAIの実用的なユースケースの限定性により、大規模なアップグレードサイクルが起こっていない。これが、クライアントSSD市場の需要低迷の一因となっている。
- スマートフォン市場の停滞: スマートフォン市場は2024年第3四半期も回復の兆しを見せていない。経済成長の鈍化により、平均的なスマートフォンの買い替えサイクルが2年未満から3年に延長されている。また、市場にはまだ大規模なアップグレードを促すような画期的なアプリケーションが登場していない。
- 価格競争の激化: 一部のサプライヤーが在庫過剰を避け、販売目標を達成するために価格譲歩を行う可能性が高い。これにより、市場全体の価格下落圧力が高まっている。
- 在庫調整の影響: 多くの製造業者やモジュールメーカーが、軟調な需要環境下で市場シェアを競い合っている。これにより、過剰在庫を避けるための価格引き下げ圧力が高まっている。
- スポット市場と契約価格の乖離: スポット市場価格、チャネル価格、OEM契約価格の間の格差が拡大しており、これがサプライヤーの価格引き上げ能力をさらに制限している。
これらの要因が複雑に絡み合い、NANDフラッシュ市場全体に下落圧力をかけている。しかし、この状況は消費者にとっては有利に働く可能性が高い。年末に向けて、より大容量のSSDやNANDフラッシュ製品が手の届きやすい価格になることが期待される。
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