米電気自動車大手Teslaが2024年第4四半期および通年の生産・販売実績を発表し、同社として初めて前年比でのマイナス成長を記録した。市場予想を下回る実績と新型Cybertruckの販売低迷が、同社の成長神話に暗い影を落としている。
予想を下回る2024年実績
2024年通年でのTeslaの生産台数は177万3,443台、販売台数は178万9,226台を記録した。この実績は、2023年の販売台数180万8,581台と比較して1%の減少となり、同社として初めての年間販売台数の減少を記録することとなった。特に注目すべきは、前年の38%増という力強い成長率から一転、マイナス成長に転じた点である。
第4四半期の実績を詳しく見ると、生産台数45万9,445台に対し、販売台数は49万5,570台となった。この数字は、ウォール街のアナリストによる予想50万7,000台を大きく下回っており、同社が2カ月前に示した自社ガイダンスである51万5,000台にも到達できなかった。内訳を見ると、主力のModel 3とModel Yが47万1,930台、その他モデル(Model S、Model X、Cybertruck、Tesla Semi)が2万3,640台となっている。
この低迷は、同社が過去最大規模の販売促進策を実施していた中での結果だという点で、より深刻に受け止められている。具体的には、直接的な値引きに加え、紹介プログラムの強化、無料のスーパーチャージャーの提供、完全自動運転機能の無償提供など、複数の施策を展開していた。さらに注目すべきは、Cybertruckという新モデルを投入し、全ての工場が本格稼働している状態でこの結果となった点である。
市場環境を見ると、確かに自動車市場全体は低迷しているものの、Tesla以外の電気自動車市場は世界的に成長を続けている。特に中国市場では、BYDをはじめとする地場メーカーが著しい成長を遂げており、Teslaのシェアは徐々に低下している。欧州市場においても、1月から11月までの販売台数は28万3,000台と、前年同期比で約14%減少しており、競合他社の台頭が顕著となっている。
このような状況下、Tesla株価は決算発表後に最大7%下落する場面もあり、市場の期待と実績のギャップが如実に表れる形となった。ただし、エネルギー貯蔵事業では四半期で過去最高となる11ギガワット時の設備を納入しており、自動車事業以外での成長の兆しも見られている。
Cybertruckプログラムの躓き
今回、Teslaの野心的な電動ピックアップトラックプロジェクトであるCybertruckが、生産開始から1年が経過したものの、期待された成果を上げられていない状況も明らかとなった。同社が公表した第4四半期のその他モデル(Model S、Model X、Cybertruck、Tesla Semi)の販売台数は2万3,640台で、このうちCybertruckは推定9,000台から1万2,000台程度と見られている。
当初、Teslaは100万台を超える予約を獲得していたと主張していたが、予約金をわずか100ドルに設定していた点で、実際の購買意欲を反映していない可能性が指摘されていた。さらに、市場投入された製品版は、当初発表された仕様と比較して航続距離が短く、価格も大幅に上昇。基本モデルでも約8万ドルという価格設定は、多くの潜在的購入者にとって障壁となっているようだ。
特に懸念されるのは、より手頃な価格の非Foundation Seriesモデルを投入し、予約プログラム外への販売を開始したにもかかわらず、販売台数が前四半期から横ばいまたは減少している可能性が高い点である。Tesla特有の不透明な販売台数の開示方針により正確な数字は把握できないものの、在庫の増加傾向や値引きの拡大は、需要の低迷を示す明確なシグナルとなっている。実際、一部のTesla販売店では中古のCybertruckが滞留し始めているとの報告もある。
今後の見通しについては、2025年1月から米国の7,500ドルのEV税額控除の対象となることで、一時的な需要喚起が期待される。しかし、Tesla CEO Elon Muskが支持するTrump新政権は、この税額控除制度の早期撤廃を目指していることから、その恩恵は限定的となる可能性が高い。Tesla社内では年間25万台という生産目標を掲げているが、現状の需要動向を見る限り、この目標達成は極めて困難と見られる。さらに、Elon Muskが掲げる50万台という長期目標に至っては、現実味を欠く野心的な数字と言わざるを得ない状況だ。
市場専門家からは、Teslaがより手頃な価格帯の電気自動車開発に注力すべきだったという指摘も上がっている。Cybertruckプログラムへの投資が、同社の成長戦略における一時的な躓きを引き起こした可能性は否定できず、今後の製品戦略の見直しが求められる状況となっている。
Xenospectrum’s Take
Teslaの成長神話が崩壊しつつある現実を直視すべき時が来たようだ。Elon Musk氏が政治活動に注力する中、同社は「自動車メーカーとしての基本」を見失いつつあるのではないか。25万台という年間生産目標は野心的すぎると言わざるを得ない。
より深刻なのは、中国市場でBYDに首位の座を奪われ、欧州でも販売が低迷している点だ。Tesla本来の強みである革新性と手の届く価格帯の製品開発に立ち返る必要があるだろう。Trump新政権下でのEV補助金の行方も不透明だ。2025年は同社の真価が問われる重要な1年となりそうだ。
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