TSMCのアリゾナ工場が、初期試験において台湾本国の工場と同等の生産能力を達成したことが明らかになった。この結果は、TSMCの野心的な米国進出計画にとって重要なマイルストーンとなるものだ。
TSMCアリゾナ工場、初期試験で台湾並みの歩留まりを実現
TSMCは2023年4月から、最先端の4ナノメートル(nm)プロセス技術を用いてアリゾナ工場での試験生産を開始した。匿名の関係者によると、この試験生産における歩留まり率が、台湾南部の台南市にある既存工場と同等のレベルに達したという。歩留まり率は、製造プロセスで生産される使用可能なチップの割合を示す重要な指標であり、生産効率と収益性に直接影響を与える。
この成果は、TSMCが長期的に53%以上の粗利益率を維持するという目標達成に向けて、大きな一歩を踏み出したことを意味する。同社は過去4年間、36%以上の純利益率を安定して維持しており、アリゾナ工場でもこの高い収益性を実現できる可能性が高まった。
TSMCは公式声明で、アリゾナプロジェクトが「計画通りに良好な進展を見せている」と述べているが、具体的な歩留まり率については言及を避けている。
TSMCの米国進出計画と直面する課題
TSMCのアリゾナプロジェクトは、米国の半導体製造能力強化に向けた取り組みの中核を担っている。同社は、アリゾナ州に3つの工場を建設するために総額650億ドルを投資する計画を立てており、これはアリゾナ州史上最大の外国直接投資となる。
当初の計画では、第1工場は2024年に本格生産を開始する予定だったが、熟練労働者の不足や文化の違いによる管理上の課題、建設作業員の不足などの問題により、2025年上半期に延期された。この遅延は、TSMCが米国で台湾と同等の効率を維持できるかどうかについて懸念を引き起こした。
しかし、今回の試験生産の成功により、これらの懸念は一部払拭されたと言える。第2工場は2028年に生産を開始し、2nmプロセス技術と次世代ナノシートトランジスタを用いたチップを製造する予定だ。さらに、第3工場は2030年までに稼働を開始し、2nmまたはそれ以上の先進プロセスに焦点を当てる計画となっている。
TSMCの米国進出を後押しするため、米国政府は多額の支援を提供している。具体的には、最大66億ドルの補助金と50億ドルの融資が用意されており、これらの支援がプロジェクトの成功に不可欠な役割を果たすと期待されている。
この一連の動きは、米国が国内の半導体製造能力を強化し、グローバルサプライチェーンの脆弱性に対処しようとする戦略の一環である。TSMCのアリゾナ工場の成功は、この戦略の実現可能性を示す重要な指標となるだろう。
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