米国政府による中国の半導体規制は厳しくなることはあっても緩まることはないようだ。Bloombergが報じている所では、米Biden政権は、最先端半導体チップ製造に用いられるGAA(Gate All Around)トランジスタ技術や、AI処理で重要になる高帯域幅メモリ(HBM)へのアクセスを制限することを検討しているようだ。
米国は中国による半導体製造をあらゆる面で妨害したい
この件に詳しい関係者の話としてBloombergが引用した情報によれば、米国は、中国がAIモデルの構築と運用に必要な高度なコンピューティングシステムを組み立てるのをより困難にすることを目指しているとのことで、その一環として、今後の半導体開発、AI開発で重要となる、GAAトランジスタ及びHBMと言った最先端技術へのアクセスを制限するようだ。
GAA(Gate All Around)とは、その名の通り、ゲートで電気の通り道となるソースをぐるりと囲ってしまう構造のFET(電界効果トランジスタ)で、半導体チップの微細化が進むにつれて問題になるリーク電流を抑え、パフォーマンスや電力効率を高めることが可能になる技術だ。
現在GAAFETの量産に成功しているのはSamsung Foundryのみであり、同社の3nmプロセスで用いられている。次期Exynos 2500でもこの3nm GAAプロセスが用いられる予定だ。
対するTSMCはN2プロセスで、IntelもIntel 20AにてGAAを採用する計画でいる。
中国に対する半導体技術へのアクセス規制としては、既に半導体製造に必須となるリソグラフィ装置の輸入禁止措置や、処理能力の高いAI向けGPUの輸出規制などが行われている。特に前者は中国が3nm以下の先端半導体の製造に取り組めない根本的な原因となっており、中国としては自国でリソグラフィ装置の開発を進めるか、既存の装置を工夫して微細化を進めるか研究を進めているようだ。先日中国の半導体製造企業SMICがDUVリソグラフィ装置を使って5nmチップの製造に成功したと報じられている。
ちなみに、SMICとしては理論的にはGAAトランジスタ技術を既存の7nmプロセスノードに移植することも可能だ。これは3nm以下のプロセスで技術採用するほどにはメリットがないが、それでも電力と性能の両方において改善をもたらす可能性がある。GAAはシングルパターニングで達成されるため、中国は既存のチップ製造装置でこの技術を実現できる可能性がある。
こうした可能性が米国政府による更なる制裁の検討に繋がったのかも知れない。
正式な発表はまだだが、既にGAAトランジスタ技術へのアクセスは制限されていると、匿名の情報筋は述べているようだ。非公開の議論の場で専門家たちは、このルールの適用範囲や、どの程度厳格に行うかを検討している段階とのことだ。
Source
コメント