NVIDIAの最新ハイエンドGPU、GeForce RTX 5090とRTX 5080の電源要件に関する検証結果が明らかとなった。RTX 5090は推奨値以下の電力供給でも動作する柔軟性を示した一方、RTX 5080はより厳格な電源要件を必要とすることが判明した。また、RTX 5090シリーズで報じられた電源ケーブルの溶融問題については、RTX 4090に関する誤報であることも確認された。
RTX 5090:3系統の8ピン接続で動作可能、性能低下は5%程度
NVIDIAのフラッグシップモデルGeForce RTX 5090は、公式に推奨される4系統の8ピンPCIe電源コネクタを使用しなくても、3系統の8ピンコネクタで動作することが確認された。ドイツの技術メディアComputerBaseの検証によると、RTX 5090は3系統の8ピン接続でも起動し、若干の性能低下はあるものの実用的な動作が可能である。
RTX 5090の定格TDP(熱設計電力)は575Wで、本来は600W対応の12V-2×6コネクタ、もしくは4系統の8ピンPCIeケーブルを備えたアダプタが必要だ。しかし、ASUS ROG RTX 5090 AstralとZotac RTX 5090 Solidを用いた検証では、3系統の8ピンケーブルでもGPUが問題なく起動することが確認された。この場合、TDPは3本のケーブルが供給可能な450Wまでに制限される。
実際の性能低下は予想以上に小さく、ベンチマークテストではフル性能時と比較して平均フレームレートの低下が約5%にとどまった。ComputerBaseの検証では、RTX 5090を575W、450W、400WのTDPで動作させ、性能の変化を測定。電力供給を制限しても動作は安定しており、性能への影響は限定的であることが示された。
この結果は、既存の電源ユニット(PSU)からアップグレードを検討しているユーザーにとって、RTX 5090が現実的な選択肢となる可能性を示している。電源ユニットの交換を避けたいユーザーにとって、5%程度の性能低下は許容できる範囲といえる。
RTX 5080:2系統の8ピン接続では起動不能
一方、RTX 5080は、TDPが360Wと比較的低いにもかかわらず、RTX 5090ほどの柔軟性は示さなかった。Founders EditionモデルとZotac RTX 5080 AMP Extreme Infinityを2系統の8ピンコネクタ(合計供給電力300W)で動作させようとした結果、両モデルとも起動すらしなかった。画面は点灯せず、グラフィックボードの初期化も行われなかったのである。
RTX 5090とは異なり、RTX 5080のファームウェアには電力供給不足時に自動的に性能を調整する機能が実装されていないと見られる。そのため、RTX 5080ユーザーは3系統の8ピンコネクタまたは12V-2×6電源コネクタによる接続を厳守する必要がある。
この制限は、出力の低い電源ユニットを使用しているユーザーにとって大きな障壁となる可能性がある。RTX 5090のように、多少の性能低下と引き換えに電源ユニットの交換を回避するという選択肢は、RTX 5080では用意されていないのだ。
電源ケーブル溶融報道の真相:RTX 4090が原因
RTX 5090およびRTX 5080の電源ケーブルが溶融したという初期の報道があったが、その後の調査で、この問題はRTX 4090に関する誤報であることが判明した。この問題は、香港の技術メディアPCMがRTX 5090DとRTX 5080の検証中に16ピン電源ケーブルが溶融し、1200W電源ユニットが故障したと報告していた。
しかし、詳細な調査の結果、ケーブルの損傷はRTX 5090/5080ではなく、検証前に使用されていたRTX 4090 Founders Editionに起因することが判明した。このRTX 4090 FEには、初期ロットで問題が指摘された12VHPWRコネクタが使用されており、頻繁なケーブルの抜き差しによってコネクタの接触不良が発生し、溶融に至ったと考えられる。
NVIDIAは、RTX 50シリーズの電源コネクタについては溶融の可能性が極めて低いと説明している。それでも各メーカーは予防的な対策を講じており、Zotacはケーブルが正しく接続されるまでGPUの電源が入らない安全機構を導入。MSIは、ケーブルの接続状態を目視で確認できる黄色いインジケータ付きの16ピンケーブルを採用している。
XenoSpectrum’s Take
今回の検証結果は、NVIDIAの最新GPUにおける電源設計の興味深い違いを明らかにした。RTX 5090が電力供給の変動に対して比較的寛容である一方、RTX 5080がより厳格な電源要件を持つことは、それぞれの製品の想定ユーザーと設計思想の違いを反映していると考えられる。
RTX 5090の柔軟な設計は、ハイエンドGPUをより幅広いユーザーに提供しようとするNVIDIAの意図を示唆している。対照的に、RTX 5080の厳格な要件は、安定性を重視するユーザー層をターゲットとしていることを示しているのではないだろうか。
ケーブル溶融問題については、当初RTX 5090/5080の新規の問題として報じられたが、実際にはRTX 4090における既知の問題が再び注目を集めたものであった。この事例は、新製品の登場時における正確な情報発信と検証の重要性を改めて示すものとなった。ユーザーは、GPUの電源要件を十分に理解し、適切な電源ユニットとケーブルを選択することで、安定したシステム環境を構築することが重要である。
Sources
コメント