2024年のノートPCは2つの点で大きな変革を迎えたと言える。一つは、QualcommのSnapdragon Xチップを搭載した「Copilot+ PC」の登場、そしてもう一つは「CAMM2」メモリ規格を採用したPCの登場だ。
Dellの独自技術「CAMM」が業界標準へ
CAMM2(Compression Attached Memory Moduleの略称)は、これまでのSO-DIMMに代わり、最小限のスペースの中で、最大のパフォーマンスを提供するために設計された新たなメモリ規格だ。
元々のCAMM設計はDellのエンジニアによるものであるが、Dellはその設計をJEDEC(JEDEC Solid State Technology Association)に提供した。JEDECは、フラッシュストレージとメモリの規格を標準化するための団体だ。JEDECはその後規格を策定し、2023年12月にこれを「CAMM2」規格として発行した。
CAMM2は、データ圧縮を効率化することでメモリサイズを最適化しつつ性能を向上させている。これまでノートPCのメモリとして用いられてきたSO-DIMMと比較した場合、形状は更に薄く小型なものになっている。
CAMM2は、RAMとCPU間の高速通信を可能にする薄型モジュールを使用している。モジュールの接点は、モジュールとマザーボードの間に位置するストリップで押さえられている。このストリップにはピンがあり、マザーボードの接点とのインターフェースを提供する。この密接な接続により、SO-DIMMモジュールと比較してはるかに高速な通信が可能になっている。
CAMM2の利点はノートパソコンにとって最も顕著だ。上述の通り、メモリは圧縮プレートにネジで取り付けられるため、エンドユーザーにとってはM.2 SSDの取り付けや交換と同じくらい簡単に行える。そして、この設計によりハードウェア内で垂直方向のスペースを大幅に節約できるため、より小型で薄型のノートパソコンを構築するのに理想的なのだ。
CAMM2には、フルパワーのDDR5 CAMM2(さまざまなサイズ)と、ノートパソコン向けの高効率な低電力版LPDDR5 CAMM2(時には単にLP CAMM2とも呼ばれる)の2種類がある。矩形のCAMM2モジュールはデスクトップおよびサーバー向けに設計されており、従来のメモリよりも高速かつ効率的であり、ノートパソコン向けのLPDDR5 CAMM2は小型で角度のついた拡張部があり、帽子のような形をしている。
また、CAMM2は1つのモジュールでデュアルチャネル(DC)を実現している点も注目に値する。更にスタックも可能だ。デュアルチャネル(DC)CAMM2コネクタを縦方向に分割して2つのびシングルチャネル(SC)CAMM2コネクタにすることで、各コネクタ半分は異なるレベルにCAMM2を配置できる。最初のコネクタ半分は2.85mmの高さで1つのDDR5メモリチャネルをサポートし、2番目の半分は7.5mmの高さで異なるDDR5メモリチャネルをサポートすると言った具合だ。このシングルチャネルおよびデュアルチャネル構成によって、将来のマルチチャネル設定へのスケーラビリティも保証される。
既にSamsungとMicronは、さまざまな容量、速度、および設計のCAMMメモリモジュールを提供する計画を発表した。モジュールの容量は最大128GB、速度は最大8533MT/sになる予定だ。DDR5およびLPDDR5(X)バリアントがあり、Micronは192GBの容量および9600MT/sの速度を持つ最適化バージョンも計画している。しかし、CAMM2には欠点もあり、アップグレードや交換の際にはモジュール全体を交換する必要があり、これが高価になる可能性がある。
LenovoのThinkPad P1 gen 7シリーズは、LPDDR5 CAMM2規格を採用した最初の市販ノートパソコンであり、MSIはComputexでCAMM2メモリコネクタを搭載したプロトタイプマザーボードを披露した。Micron、Samsung、Hynixの3大メモリサプライヤーが協力しているため、将来的にこの技術が拡大することが期待されている。
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