かつてPC革命を牽引し、テクノロジー業界の巨人として君臨したIntelが、今、深刻な危機に直面している。株価の急落により、同社がダウ・ジョーンズ工業株価平均(DJIA)から除外される可能性が浮上した。
Intel株価の急落とDJIA存続の危機
1990年代後半、IntelとMicrosoftはテクノロジー企業として初めてDJIAに採用された。当時、両社はPC市場の急成長とともに飛躍的な発展を遂げていた。しかし、その後の四半世紀で両社の命運は大きく分かれることとなった。
Microsoftがクラウドビジネスと人工知能(AI)分野で成功を収め、時価総額で世界第2位の企業に成長する一方、Intelは苦境に立たされている。同社の株価は今年に入ってから約60%も下落し、DJIA構成銘柄30社の中で最悪のパフォーマンスを記録している。
この急落により、Intelの時価総額は2000年のピーク時以来初めて1,000億ドルを下回った。さらに第2四半期には16億ドルの損失を計上し、株価は現在わずか20ドル程度にまで落ち込んでいる。
DJIAの選定委員会は、構成銘柄の株価の最高値と最安値の差に注目している。その差が10倍を超えると、最安値の銘柄が除外される傾向にある。現在、最高値のUnitedHealth Groupの株価は約580ドルで、Intelの29倍もの開きがある。この状況下で、Intelの株価はDJIAの僅か0.32%の影響力しか持たなくなっており、アナリストらはIntelのDJIA存続が危ぶまれると警鐘を鳴らしている。
Intelの苦境の原因と再建への道のり
Intelの苦境には複数の要因が絡んでいる。最も大きな問題は、AIブームに乗り遅れたことだ。同社の主力であるデータセンター向けCPU事業でも市場シェアを失い続けている。さらに、新たな製造能力への巨額投資が、ファウンドリー事業の不透明な見通しの中で疑問視されている。
特に注目されるのは、320億ドル規模のドイツ工場建設計画だ。この計画は既に遅延に直面しており、さらには完全な中止も検討されているという。
この危機的状況を打開するため、Intelは従業員の15%に当たる約16,000人の削減や配当支払いの停止など、大胆な構造改革に着手している。さらに、事業部門を独立した企業体に分割することも検討中だ。
もしIntelがDJIAから除外された場合、その後任として半導体業界のライバル企業であるNVIDIAやTexas Instrumentsの名前が挙がっている。
NVIDIAは今年、AIブームによるグラフィックスプロセッサの需要急増を背景に株価が160%も上昇した。しかし、その極端な変動性がDJIAの保守的な選定委員会の懸念材料となる可能性がある。
一方、Texas Instrumentsは安定したパフォーマンスと米国内での大規模な製造拠点を持つことで知られている。同社の株価は今年20%上昇しており、現在のDJIA構成銘柄の平均株価により近い水準にある。
IntelのPat Gelsinger CEOは、これらの課題を認識しつつも、同社を再び業界のトップに返り咲かせるために必要な施策に焦点を当てていると語っている。同氏と取締役会は投資銀行と協力し、財務状況を改善するための方策を模索しており、その選択肢には、ファウンドリー事業のスピンオフや新たな半導体工場建設計画の一時停止などが含まれているとされる。
さらに、2015年に167億ドルで買収したAltera(プログラマブルロジックデバイス部門)の売却も検討されているという。業界の一部では、長年のライバルであるAMDが自社のFPGA製品ポートフォリオを拡大するために、この部門を買収する可能性があるとの見方もある。
Intelの再建には、米政府からのCHIPS法に基づく追加支援や、同社のファウンドリー事業が防衛関連のシリコン製造契約をより多く獲得することなども重要な要素となるだろう。
Gelsinger CEOの改革計画は、タイミングの悪さに直面している。その計画は理にかなったものではあるが、成功させるには十分な収益が必要だ。そうでなければ、かつての半導体業界の巨人は、その名声を失うリスクに直面することになる。
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