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xAI、AIビデオ生成スタートアップHotShotを買収―世界最大級スパコンで開発加速へ

Y Kobayashi

2025年3月19日

Elon Musk氏率いるAI企業xAIが、AIビデオ生成スタートアップHotShotを買収した。HotShotはこれまで2年間で3つのビデオ生成モデルを開発しており、今後はxAIの世界最大級スーパーコンピュータ「Colossus」を活用して開発を加速させる計画だ。

買収の概要とHotShotの技術

HotShotのCEOであるAakash Sastry氏は自身のXアカウントで買収を発表した。同社は正式名称をNatural Synthetics Inc.といい、サンフランシスコを拠点に数年前にSastry氏とJohn Mullan氏によって設立された。買収の財務条件は明らかにされていない。

https://twitter.com/aakashsastry/status/1901668601364689338

同社は当初、2023年にAI駆動の画像生成・編集ツールとして事業を開始したが、翌年にはビデオ生成モデルへと事業の軸足を移した。これまでに「Hotshot-XL」「Hotshot Act One」「Hotshot」という3つのビデオ基盤モデルを開発している。

HotShotの技術的特徴として、1280×720ピクセルの解像度で10秒のビデオクリップを生成する能力を持つ。このモデルは6億のビデオクリップからなるデータセットで訓練されており、訓練過程では自動的にキャプションを生成する補助的なニューラルネットワークも構築した。

同社は効率化のためbfloat16データフォーマットを採用しており、32ビット分の情報を16ビットに圧縮することでAIモデルが処理するデータ量を削減し、訓練を高速化している。実際の訓練には数千個のNVIDIA A100 GPUを使用し、4か月をかけて行われた。

xAIの計算インフラと今後の展開

特筆すべきは、今回の買収によりHotShotがxAIの巨大な計算リソースへアクセスできるようになる点だ。xAIは「Colossus」と呼ばれる世界最大級のスーパーコンピュータを保有しており、現在20万個のNVIDIAチップと1エクサバイト以上のストレージを備えている。

このColossusはメンフィスにある75万平方フィート(約7万平方メートル)の元家電工場内で運用されており、初期バージョンは昨年9月に10万枚のグラフィックカードで稼働を開始した。xAIは今年、メンフィスに2つ目のサイトを取得し、年末までにグラフィックカード数を100万枚に増やす計画だ。この計画の一環として、Dellから50億ドル(約7500億円)以上のAIサーバーを購入する交渉を行っているとも報じられている。

HotShotの買収は、xAIがビデオ生成分野に本格参入する意図を示すものだ。Musk氏は今年1月のライブストリームで、「数か月以内」に「Grok Video」モデルをリリースする見通しを示唆していた。xAIはこれにより、OpenAIの「Sora」やGoogleの「Veo 2」など、競合他社のビデオ生成AIと競争することになる。

既存サービスの移行について

HotShotは買収に伴い、2025年3月14日から新規ビデオ作成サービスを終了すると発表した。既存のユーザーは3月30日までに、プラットフォーム上で作成したビデオをダウンロードすることができる。

Sastry氏は声明の中で「これらのモデルのトレーニングを通じて、グローバルな教育、エンターテイメント、コミュニケーション、生産性が今後数年間でどのように変化するかを垣間見ることができた」と述べ、xAIの一員として開発をさらに加速させる意欲を示した。

なお、HotShot全スタッフがxAIに加わるかどうかについては明らかにされておらず、Sastryはこの件についてのコメントを拒否している。


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