AI研究企業Epoch AIの分析によると、Googleは世界最大のAI計算能力を有している可能性が高いことが明らかになった。この驚くべき優位性は、同社が独自に開発したTensor Processing Units(TPU)によってもたらされているという。
GoogleのTPU:隠れたAI計算パワーの巨人
Googleが保有するTPUの計算能力は、少なくとも60万台のNVIDIA H100 GPUに相当するとされる。Epoch AIの研究者は、「この大規模なTPUフリートと、NVIDIAのGPUを組み合わせることで、Googleは単一の企業としておそらく最大のAI計算能力を有している」と指摘している。
この事実は、AI業界に大きな衝撃を与えるものだ。最先端のAI処理にはNVIDIAのGPUが必要であり、同社が市場を独占しているという事実は揺るがないが、GoogleのTPUが静かにその存在感を増していたからだ。これは、GoogleやMicrosoft、AWSにMeta等の「ハイパースケーラー」と呼ばれる企業群が進める自社開発カスタムチップの優位性を如実に物語る事実とも言える。
GoogleのAI計算能力が注目を集める一方で、NVIDIA社は依然としてAIチップ販売市場において圧倒的な存在感を示している。2022年初頭以降、NVIDIAは約300万台のH100 GPU相当の計算能力を持つAIチップを販売してきた。
その主な顧客は、Microsoft、Amazon、Google、Metaなどの大手クラウドプロバイダーである。特にMicrosoftは、NVIDIAの最大の顧客とされている。ハイパースケーラーが、NVIDIAのAIチップ販売の大部分を占めているのだ。
さらに、Oracle、CoreWeaveなどのクラウド企業、xAI、TeslaなどのAI企業、中国のテクノロジー企業、そして国家AI基盤を構築する政府も、NVIDIAのAIチップの重要な購入者となっている。
AI計算能力の覇権争い:次世代チップの登場で激化か
AI計算能力をめぐる競争は、今後さらに激化する可能性が高い。NVIDIAの次世代GPUである「Blackwell」は、すでに今後12ヶ月分の供給が完売したと報じられている。これは、AI技術への需要が依然として高水準であることを示している。
世界のAI計算能力の大部分は、Google、Microsoft、Meta、Amazonなどの巨大テクノロジー企業に集中している。これらの企業は、自社のAI開発に膨大な計算リソースを投入するだけでなく、OpenAIやAnthropicなどのトップAIラボにもクラウドを通じて計算能力を提供している。この状況は、AI技術の発展を加速させる一方で、技術の集中化という課題も浮き彫りにしている。
具体的な数字を見ると、その規模の巨大さが明確になる。Googleは主にTPUを活用し、100万台以上のNVIDIA H100 GPU相当の計算能力を有している可能性がある。一方、Microsoftは約50万台のH100相当のNVIDIAアクセラレーターを保有しており、NVIDIA製品の最大のストックを持つ単一企業とされている。
この計算能力の集中は、AI研究開発の速度を飛躍的に高める可能性がある。例えば、大規模言語モデルの学習や、複雑な科学シミュレーションの実行が、これまでよりも遥かに短時間で可能になるかもしれない。しかし同時に、この状況は中小企業やスタートアップにとっては大きな参入障壁となり、イノベーションの多様性を損なう危険性もある。
さらに、これらの巨大企業が提供するAIプラットフォームに依存することで、多くの企業や研究機関が技術的に従属する状況も生まれつつある。この「AIインフラの寡占化」は、長期的には技術の画一化や、特定企業への過度の依存といったリスクをもたらす可能性があるだろう。
Sources
コメント