Googleの次世代Pixel 10及びPixel 11シリーズに搭載されると見られるカスタムプロセッサ「Tensor G5」および「Tensorg G6」の仕様の詳細が複数の信頼できる情報源から明らかになった。既にお伝えしたように、これまでSamsungと共同開発してきたTensorシリーズだが、完全な内製化とTSMC製造への移行という大きな転換点を迎えることになる。
そしてそれに伴い、これまでSamsungの設計に基づいていた設計もGoogle独自の設計に変わるようだ。では、その仕様はどのようになるのだろうか?以下で詳しくご紹介しよう。
製造プロセスは大きく変化
2025年に登場するTensor G5(開発コード名:Laguna)は、TSMCの第3世代3nmプロセスであるN3Eを採用する。このプロセスは、Appleの A18 Proや、QualcommのSnapdragon 8 Eliteと同様の最新製造技術であり、電力効率と性能の両面で大きな進化が期待できる。チップサイズは120平方ミリメートルで、これはApple A18 Proの105平方ミリメートルと比較するとやや大きい。この差異は、GoogleがAI処理ユニット(TPU)により多くのダイエリアを割り当てていることを示唆している。
続く2026年のPixel 11に搭載されるTensor G6(開発コード名:Malibu)では、さらに進化したN3Pプロセスを採用。現行の113平方ミリメートルから105平方ミリメートルへとチップサイズの最適化を図る計画である。この最適化は、製造コストの削減とともに、より効率的な電力管理を実現する可能性が高い。
CPU設計思想の転換とその影響
Tensor G5のCPU構成は、興味深い設計思想の変更を示している:
- プライマリコア:Cortex-X4(最大3.1GHz) x1
- ミドルコア:Cortex-A725 x5
- 高効率コア:Cortex-A520 x2
特筆すべきは、ミドルコアのコア数を3基から5基に増やし、高効率コアを4基から2基に削減している点である。この変更は、持続的な高負荷処理時のパフォーマンスを重視した設計と解釈できる。ただし、最新のCortex-X925を採用しなかった判断については、開発タイムラインとの兼ね合いが影響している可能性がある。
一方、Tensor G6では大幅なアーキテクチャ刷新を予定している:
- プライマリコア:Cortex X925後継(X930)(最大3.2GHz) x1
- パフォーマンスコア:Cortex-A730 x6
- 高効率コア:1x Cortex-A530 x1
Arm v9.4命令セットの採用により、性能と電力効率の大幅な向上が期待できる構成となっている。
Tensor G3 (“Zuma”) | Tensor G4 (“Zumapro”) | Tensor G5 (“Laguna”) | Tensor G6 (“Malibu”) | |
---|---|---|---|---|
プライムコア | Arm Cortex-X3 x1 | Arm Cortex-X4 x1 | Arm Cortex-X4 x1 | Cortex X925後継(X930?) x1 |
ミドルコア | Arm Cortex-A715 x4 | Arm Cortex-A720 x3 | Arm Cortex-A725 x5 | Cortex-A730 x6 |
高効率コア | Arm Cortex-A510 x4 | Arm Cortex-A520 x4 | Arm Cortex-A520 x2 | Cortex-A530 x1 |
GPUアーキテクチャの革新的転換
最も劇的な変更は、GPUアーキテクチャの完全な刷新だ。従来のArm Mali GPUから、Imagination Technologies製のGPUへの移行が行われるようだ:
Tensor G5:
- IMG DXT-48-1536(2コア、1,100MHz)
- GPU仮想化サポート
- 基本的なレイトレーシング機能なし
Tensor G6:
- IMG CXTP(3コア、1,100MHz)
- 高度なGPU仮想化
- ハードウェアレイトレーシングのサポート(ただし、製品化時に削除される可能性あり)
GPU性能に関しては、Samsungが採用していたAMD製ではなくなるため、パフォーマンスの大幅な向上を期待していた人にとっては残念な結果になるかも知れない。
メモリサブシステムの高度化
メモリアーキテクチャも大幅に強化される:
- 4x 16-bit LPDDR5X-8533対応
- 代替構成としてLPDDR5-6400もサポート
- 8MB(G5)/ 4MB(G6)のシステムレベルキャッシュ
- UFS 4.0ストレージサポート
特に注目すべきは、LPDDR5X-8533のサポートだ。これは現行のTensor G4と比較して約2倍の理論帯域幅を提供し、大規模なAIモデルの実行やカメラ処理の高速化に大きく貢献するはずだ。
AI処理能力の進化
Tensor G5のTPUは、前世代比で約40%のTOPS値向上を実現している:
- INT8演算:18 TOPS(前世代13 TOPS)
- FP16演算:9 TOPS(前世代6.5 TOPS)
ただし、実世界のパフォーマンスでは約14%の向上にとどまる見込みだ。注目すべき新機能としては、組み込みRISC-Vコアによる柔軟な演算サポートとオンデバイストレーニングのサポートが挙げられるようだ。
ISP関連
その他、画像処理関連ではTensor G5はゼロシャッターラグ、スタッガード HDR、8K 30 ビデオ録画に対応するようだ。
驚くべきはTensor G6、なんと100倍ズームの記述がある。現在の30倍ズームも驚異的ではあるが、100倍の望遠ともなるとどうなるのか想像も付かない。加えて「シネマティックボケエンジン」とされる、新たな写真表現が期待出来そうな情報が記載されている。具体的な内容は不明だが、更に自然なレンズのボケをAI処理によって表現する物であることが予想される。
GoogleはPixelシリーズのハードウェア競争力強化に本腰を入れているようだが、やはりゲームパフォーマンスなどはそこまでこだわっていないであろうことも窺える内容だ。今後は、これらのハードウェア改善がどのようなソフトウェア機能として具現化されるかが注目される。
Sources
コメント