AMDが11月7日に発売予定のRyzen 7 9800X3Dにおいて、従来のX3Dプロセッサーから大きく異なる革新的な設計を採用していることが明らかになった。信頼性の高いリーカーの情報によると、プロセッサーダイ(CCD)と3D V-cacheの積層構造が完全に刷新され、熱設計の大幅な改善が実現されているという。
Ryzen 9000X3Dシリーズでは新たな「逆積層」設計を採用
従来のRyzen X3Dプロセッサー(5800X3D、7800X3Dなど)では、CCDの上部に3D V-cacheを積層し、CPUコア部分には構造用シリコンを配置する設計が採用されていた。この設計では、CPUコアから発生する熱をIHS(統合ヒートスプレッダー)に効率的に伝導させる必要があり、これが性能を制限する要因となっていた。
Ryzen 9000X3Dシリーズでは、この構造を完全に逆転させる新設計が採用されている。新設計では:
- CCDが最上部に配置され、直接IHSと接触
- 3D V-cacheがCCD下部に配置される「ベースタイル」として機能
- V-cacheダイにはTSV(シリコン貫通電極)が配置され、基板との接続を確保
この設計変更により、従来必要だった構造用シリコンが不要となり、熱伝導効率が大幅に改善されている。
性能向上の可能性
Ryzen 9000X3Dチップでは、新設計の採用により、以下の利点が期待される:
熱制約からの解放
従来のX3Dモデルでは、3D V-cacheとCPUコア部分の構造用シリコンが熱伝導の障害となっていた。新設計では、CCDが直接IHSと接触することで、従来モデルで必要だった熱設計上の妥協が不要になる。これにより:
- 熱伝導効率の大幅な向上
- より攻撃的な電力設定の採用が可能
- サーマルスロットリングのリスク低減
が期待出来る。
電力設定の最適化
新設計により、AMDは従来のX3Dモデルで採用していた保守的な電力設定から脱却できる見込みで、以下の利点が期待される:
- 通常版Ryzen 9000シリーズと同等のTDP設定が可能に
- PPT(Package Power Tracking)制限の緩和
- より持続的な高負荷動作の実現
クロック周波数の向上
熱制約の緩和により、クロック周波数面で以下の改善が期待される:
- ベースクロックの引き上げ
- ブースト周波数の向上
- 持続的なブースト状態の維持が容易に
- マルチコア時の周波数低下を最小限に抑制
オーバークロッキングの可能性
これまでのX3Dモデルでは控えめだったオーバークロッキング機能が、新設計では大きく改善される:
- 通常版と同等のオーバークロッキング機能を搭載
- より高い周波数でのチューニングが可能に
- 電圧調整の自由度向上
- 安定性を保ちながらの性能向上が実現可能
この新設計による性能向上は、特にゲーミングやキャッシュ依存の高いワークロードで顕著な効果を発揮すると予想される。3D V-cacheの利点を維持しながら、従来のボトルネックを解消することで、より幅広いユースケースで優位性を発揮できる製品となることが期待される。
Xenospectrum’s Take
この設計変更は、AMDのパッケージング技術における重要なブレークスルーといえる。特に注目すべきは、将来的な展開の可能性だ。この「ベースタイル」アプローチは、Zen 6世代でのL2キャッシュのTSV接続など、さらなる3D積層技術の応用への布石となる可能性がある。
また、11月7日の発売を控え、価格が484-525ドル程度になるとの情報もある。現行世代のRyzen 7 7800X3Dですら最新のIntel Core Ultra 9 285Kを上回る性能を示していることを考えると、この新設計を採用したRyzen 9000X3Dシリーズは、デスクトップCPU市場において新たなベンチマークを打ち立てる可能性が高い。
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