PlayStationブランドを展開するSonyが、携帯ゲーム機市場への本格参入を目指し、PlayStation 5(PS5)のゲームをネイティブで実行可能な新型携帯ゲーム機の開発を進めていることがBloombergによって報じられている。この新型機は任天堂のNintendo SwitchやValveのSteam Deckと同様のコンセプトで、据え置き機並みの性能を携帯機で実現することを目指しているようだ。
既存のPortalとは一線を画す新型機の開発へ
新型携帯機は、2023年に発売されたPlayStation Portalとは一線を画す製品となる見込みだ。Portalが既存のPS5本体からのストリーミングプレイに特化した周辺機器であるのに対し、新型機はPS5ゲームを単体でネイティブで実行可能な独立した携帯ゲーム機として設計されている。興味深いことに、Bloombergの報道によれば、当初のPortalは実はスタンドアロン型の携帯機として構想されていたという経緯があるとのことだ。
近年のアップデートにより、PortalはPS5本体を所有していなくても特定のゲームをストリーミングプレイできる機能を獲得した。しかし、このような機能拡張にもかかわらず、インターネット接続を常時必要とする制約は依然として残されている。一方、開発中の新型機は、高度なグラフィック処理能力を備え、ゲームを本体にダウンロードして実行することが可能となる見込みだ。さらに、専用の物理メディアを採用する可能性も示唆されており、これが実現すれば据え置き機に近い使用感を携帯機で実現できることになる。
Sonyの新たな挑戦は、Nintendo SwitchやSteam Deckが切り開いた「据え置き機級の性能を持つ携帯ゲーム機」という新しい市場セグメントを強く意識したものといえる。特にSwitchが実現した「どこでも据え置き機と同じゲームが楽しめる」という価値提案は、ゲーム業界に大きな影響を与えた。新型機の開発は、こうした市場の変化に対するSonyの本格的な応答として捉えることができる。ただし、Bloombergの報道では、この製品はまだ開発の初期段階にあり、プロジェクトが中止される可能性も排除できないとしている。
デザインコンセプトはPortalを踏襲か
新型機のデザインについては、Portalで採用された革新的なフォームファクターを踏襲する可能性が高いとされる。Portalは画面の両サイドにPS5コントローラーを融合させたような設計を特徴としており、タブレット型の携帯機に比べて長時間のプレイでも快適な操作性を実現している。この設計思想は新型機にも引き継がれる見通しだ。
Portalの特徴的なデザインは、従来の携帯ゲーム機が抱えていた重要な課題を解決している。一般的なタブレット型デバイスでは、長時間の携帯ゲームプレイ時に手首や指に負担がかかりやすい問題があった。これに対してPortalは、PS5のDualSenseコントローラーの優れた人間工学的設計を携帯機に統合することで、快適な操作性と携帯性を両立させることに成功している。画面を挟み込むように配置された両サイドのグリップは、プレイヤーの手に自然にフィットし、長時間のプレイセッションでも疲労を軽減する効果がある。
新型機がこのデザイン哲学を継承することは、PlayStationブランドの一貫性を保つ上でも重要な意味を持つ。特にPS5世代で確立された高度なハプティックフィードバックやアダプティブトリガーといった革新的な操作体験を、携帯機でも損なうことなく実現するには、DualSenseの設計思想を活かしたフォームファクターが不可欠となる。ただし、ネイティブ実行に必要な処理能力を内蔵することによる重量増加や発熱対策など、Portalとは異なる新たな設計上の課題も浮上することが予想される。
PS6との互換性は不透明
開発中の新型機は発売までに数年を要する見込みで、現時点ではPS6の発売時期と重なる可能性も指摘されている。PS5は既に発売から4年が経過しており、過去の世代交代のサイクルを考慮すると、新型機の発売時期にはPS6の登場も近いことが予想される。このため、新型機のPS6との互換性については現時点で不透明な状況となっている。
Xenospectrum’s Take
携帯ゲーム機市場への再参入を目指すSonyの動きは、PSPやPS Vitaでの苦い経験を踏まえた上での決断といえる。特にVitaの商業的失敗から約10年、市場環境は大きく変化した。Steam Deckの成功は、高性能な携帯ゲーム機への需要が確実に存在することを証明している。しかし、任天堂の新型SwitchやMicrosoftの携帯機参入も噂される中、価格と性能のバランスをいかに取るかが成功の鍵を握るだろう。
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