Elon Musk率いるAIスタートアップのxAIは、NVIDIAやAMDなどの半導体大手を含む投資家グループから60億ドル(約9,430億円)のシリーズC資金調達を実施したことを発表した。A16Z、Blackrock、Fidelity Management & Research CompanyなどのVC大手に加え、サウジアラビアやカタールの投資ファンドも参画している。今回の調達により、同社の企業価値は推定500億ドルに達したとされる。
世界最大規模のAIスパコンを構築し次世代「Grok 3」の開発を加速
xAIは、NVIDIAのHopper GPU 10万基を搭載した巨大AIスーパーコンピュータ「Colossus」の稼働を開始している。業界標準では数年を要する構築を、初回サーバー納入からわずか19日での稼働開始、122日での完全運用を実現。同社は今後、NVIDIA Spectrum-Xイーサネットプラットフォームを活用し、GPU数を20万基に倍増する計画を明らかにしている。
また、同社は2024年5月の前回調達以降、言語モデル「Grok 2」やデベロッパーAPI、画像生成システム「Aurora」など、複数の主要製品をリリース。現在は次世代モデル「Grok 3」の学習を進めている。資金は、インフラ整備の加速と「数十億人が使用する画期的な製品」の開発、さらに「宇宙の本質を理解する」という同社のミッションに向けた研究開発に投じられる。
企業価値約1,570億ドルと推定されるOpenAIとの差は依然として大きいものの、xAIは急速な成長を遂げている。しかし、業界では大規模言語モデルの事前学習が限界に達しつつあり、OpenAIやGoogleも今年は高性能なLLMをリリースしていないとの指摘もある。業界全体が「test-time compute scaling」と呼ばれる新たなパラダイムにシフトしつつある中、xAIの戦略が注目される。
Xenospectrum’s Take
今回の資金調達は、Muskの野心的なAI戦略を裏付けるものだが、同時に皮肉な側面も見せている。OpenAIの非営利から営利への転換を訴える一方で、自身は急速な事業拡大を推し進めているためだ。また、「真実を追求する」AI開発を標榜しながら、批判の対象としている従来メディアの情報もGrokのコンテキスト提供に利用している点も興味深い。ハードウェアの優位性確保に注力する戦略は理にかなっているが、今後はAIの技術的イノベーションをどう実現していくかが真の試金石となるだろう。
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