Armとその親会社であるSoftBankが、サーバー向けプロセッサの開発を手がけるAmpere Computingの買収を検討していることが明らかになった。この動きは、急成長するクラウドコンピューティング市場でのArmの存在感を高めることを目指すものとみられる。
買収検討の経緯とOracleの関与
ArmとSoftBankによるAmpereへの関心は2021年に遡る。当時SoftBankは買収に向けて積極的な姿勢を示していたが、Ampereが新規株式公開(IPO)の申請を行い、その過程でOracleによる大規模な投資の存在が明らかになったことで、買収の動きは一時停滞することとなった。
Oracleの投資は段階的に拡大していった。まず判明したのは4億2600万ドルの初期投資だ。その後、Oracleは積極的な投資を継続し、2023年度(2022年6月-2023年5月期)には4億ドル、続く2024年度(2023年6月-2024年5月期)にはさらに6億ドルの転換社債による投資を実施。この結果、2024年9月時点でOracleはAmpereの発行済み株式の29%を保有する筆頭株主となっている。特に注目すべきは、これらの転換社債が2026年1月に満期を迎える点だ。この時期がAmpereの将来の方向性を決める重要な転換点となる可能性がある
この間、Ampereの企業価値は着実に上昇していったとみられる。2024年9月には、同社が財務アドバイザーと共に戦略的選択肢の検討を開始したことが報じられた。これには完全な売却のほか、戦略的提携や部分的な資本参加など、複数のオプションが含まれているとされる。
こうした状況下での今回のArmとSoftBankによる買収検討は、タイミングとして重要な意味を持つ。Oracleによる大規模な投資が既に行われ、同社の株主としての立場が確立している中で、どのような形で買収や提携が実現可能かが注目される。特に、Oracleが保有する転換社債の取り扱いや、既存の株式保有構造をどのように整理するかが、交渉における重要な論点となるだろう。
Ampereの技術的優位性と市場での位置づけ
Ampereは2017年に元Intel幹部のRenée Jamesが CEOとなり、同じくIntelの元同僚たちとともに設立。当初はArmのNeoverse設計をベースにしていたが、現在は最新のAmpere Oneシリーズで完全な自社設計のArmコアを採用している。
同社の製品は、従来のIntelやAMDが提供するx86アーキテクチャに代わる、エネルギー効率の高い選択肢としてデータセンター市場で注目を集めている。特に、クラウドネイティブワークロードやスケーラブルなサーバー環境に最適化された製品として評価を得ており、System76のThelio Astraのような、最大128コアのAltra Max CPUを搭載したハイエンドPC向けにも採用されている。
買収の戦略的意義と課題
Armにとって、Ampereの買収は複数の戦略的意義を持つ。モバイルや組み込み市場では圧倒的な存在感を示すArmだが、データセンター市場ではx86アーキテクチャが依然として優勢だ。Ampereの買収により、クラウドサービスプロバイダーへの展開を加速し、サーバー市場での地位を確立する足がかりとなる可能性がある。
一方で、この買収には重要な課題も存在する。Armは現在、チップ設計のライセンサーとして中立的な立場を維持しているが、サーバー市場で競合する他のArm顧客との利害関係に影響を与える可能性がある。また、最近のIPO後の成長フェーズにあるArmにとって、規制当局の審査も重要な考慮事項となるだろう。
今後の展開
現時点では、両社とも具体的なコメントを控えており、完全な買収か、あるいは異なる形態での協力関係を構築するのかは不明確だ。しかし、クラウドコンピューティング市場の急成長と、エネルギー効率への注目が高まる中、この動きはデータセンター向けプロセッサ市場に大きな影響を与える可能性を秘めている。
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