世界最大の半導体ファウンドリであるTSMCが、次世代1.6nmプロセス(A16)の量産を2026年後半に開始する計画を明らかにした。同社はAI(人工知能)関連需要の急増を見据え、2025年の設備投資も大幅に拡大する方針を示している。
次世代プロセス開発の加速
AI需要に支えられた驚異的な決算報告の席で、TSMCは半導体製造プロセスの微細化をさらに推し進めることを明らかにした。同社のC.C. Wei CEOは、2nm(N2)プロセスの量産を2025年後半に予定通り開始すると述べた。N2プロセスは、現行の3nm強化版(N3E)と比較して、同じ消費電力で10-15%の性能向上、あるいは同じ性能で20-30%の省電力化を実現。さらにチップ密度は15%以上向上する見込みだ。
さらに注目すべきは、その次の世代となる1.6nm(A16)プロセスの開発進捗だ。A16プロセスではIntelが提唱するバックサイド電源供給アプローチを採用した「Super Power Rail」技術を実装。N2プロセスと比較して、同じ消費電力で8-10%の性能向上と、7-10%のチップ密度向上を達成する見込みだ。「量産は2026年後半に予定されている」とWei氏は述べている。
積極的な設備投資とグローバル展開
TSMCは2025年の設備投資額を380億~420億ドルに設定。これは2024年の298億ドルから大幅な増額となる。この投資拡大の背景には、AI処理用プロセッサの需要急増がある。Wei CEOは、AIアクセラレータ(GPUやASIC、HBMコントローラーを含む)の需要が2025年には倍増すると予測している。
グローバル展開も着実に進展している。米国アリゾナ州の第1工場は4nmプロセスでの量産を開始。台湾の工場と同等の歩留まりを達成している。同地での第2、第3工場は3nm、2nm、1.6nmといった最先端プロセスの導入を予定している。
日本では熊本の特殊技術向け工場が2024年末に量産を開始。第2工場の建設も2025年に着手する。さらにドイツ・ドレスデンでは、自動車・産業用チップの製造拠点となる欧州初の工場建設も計画されている。
業績と今後の見通し
2024年第4四半期の売上高は268.8億ドルと前年同期比37%増を記録。2025年第1四半期は季節要因により250億~258億ドルへの減少を予想するものの、前年同期比では34.7%増となる見込みだ。Wei CEOは2025年通期の売上高成長率を20%台半ばと予測している。
製品構成では、5nmプロセスが売上高の43%を占め最大。3nmプロセスが26%まで急速に成長し、7nmプロセスは14%となっている。用途別では、HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)向けが53%を占め、スマートフォン向けが35%となっている。
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