Adobeが、テキストや画像から動画を生成するAIツール「Firefly Video Model」のパブリックベータ版を公開した。しかし、現時点では品質や価格設定に課題が多く、本格的な商用利用には程遠い状況だ。
Adobe Firefly Video Model ベータ版の現状と課題
Adobeは、2025年2月13日にFirefly Video Modelのパブリックベータ版をリリースした。OpenAIのSoraなど競合サービスが注目を集める中、Adobeは業界初の商用利用が可能なAI動画生成モデルとして差別化を図る。Firefly Video Modelは、Fireflyアプリケーション内で「動画生成」として提供され、テキストプロンプトや画像をもとに、最長5秒、最大1080p解像度の動画を生成できる。
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しかし、実際に生成された動画の品質は、Adobeが想定する用途には不十分との声が上がっている。例えば、人物を生成した場合、不自然な外見になるケースが多く、ストックフッテージの代替としては利用できないレベルだ。風景動画も、細部の描写が不正確で、リアリティに欠けるようだ。
写真専門ネットメディアのPetaPixelによると、実際の運用では以下の問題がすぐに確認出来たという:
- “雪の中でカメラ機材について話すアジア系アメリカ人のカメラレビュアー”:不自然な外見の人物が生成された。
- “日没時のサンフランシスコのスカイラインの空撮”:建物の高さや位置関係が不正確。
- “緑豊かな野原を走るオオカミ”:動画というより動く絵画のよう。
Adobeは、Firefly Video ModelがIPフレンドリーで商業的に安全な唯一の生成AIモデルであると主張している。しかし、生成物の品質が低い現状では、PetaPixelが指摘するように、特に人物生成において、実用レベルには程遠いと言わざるを得ないだろう。風景や動物の生成についても、ストックフッテージの代替としては品質が不足しており、改善の余地がある。
価格設定と利用制限
Firefly Video Modelは、ベータ版でありながら有料で提供されている。価格プランは以下の通りだ。
- Firefly Standard:月額9.99ドル、5秒動画20本生成可能
- Firefly Pro:月額29.99ドル、5秒動画70本生成可能
これらの価格は「導入時」のもので、3月15日以降に変更される可能性がある。しかし、Adobeは変更後の価格を明らかにしていない。また、上限を超える利用には追加のサブスクリプション購入が必要となる。
Adobeは、より高頻度な動画生成を必要とするプロフェッショナル向けの「Firefly Premium」プランも近日中に提供開始予定だ。
だが、こうした料金プランについても、5秒動画の生成にクレジットを消費するシステムは、ユーザーにとってコストパフォーマンスが低いと感じられる可能性があるだろう。特に、試行錯誤が必要な動画生成においては、クレジット消費を気にしながら利用する必要があり、クリエイティブな作業を阻害する要因にもなりかねない。
AI動画生成の分野では、OpenAIのSora、Runway Gen-3 Alpha、Google Veo 2など、競合がひしめいている。中国企業もKling、Vidu、MiniMaxなどのツールを開発している。Adobeは、Creative Cloudとの連携を強みとしているが、生成品質の面では競合に遅れをとっているのが現状だ。
Firefly Video Modelが動画生成AI市場で成功を収めるためには、動画品質の大幅な向上、生成時間の延長、料金プランの見直し、ユーザーインターフェースの改善などが不可欠だ。Adobeがこれらの課題にどのように取り組むか、今後の動向が注目される。
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