テクノロジーと科学の最新の話題を毎日配信中!!

Samsung 2nm 歩留まり40%超達成か?TSMC追撃へ光明、Exynos 2600量産も視野

Y Kobayashi

2025年4月11日

Samsungの次世代2nmプロセス開発において、歩留まりが40%を超える水準に達したとの情報が韓国の半導体業界筋から伝えられている。低迷していた歩留まりが改善傾向を示したことで、競合TSMC追撃への期待が高まるとともに、自社製チップ「Exynos 2600」への適用と量産に向けた道筋が見えてきたかも知れない。

スポンサーリンク

難航した3nmから一転、2nmプロセスで歩留まり改善の兆候

Samsung Foundryが開発を進める2nm GAA(Gate-All-Around)プロセス、通称「SF2」の歩留まりに関するポジティブな情報が浮上している。韓国メディアAsia Economy SKは業界内部の情報として、「Samsung Foundryで開発中の2nmの歩留まりは、以前知られていたよりも大幅に改善されており、(歩留まり問題で苦戦したとされる)3nmプロセスよりも肯定的だ」とする関係者の声を報じた。

具体的には、2025年初頭には20~30%程度と見られていたSF2のテストウェハーの歩留まりが、最近の外部の後工程企業によるウェハーテスト段階で「40%を超えた」と伝えられている。これは、量産に向けてはまだ道半ばであるものの、開発が順調に進んでいることを示唆する重要なマイルストーンと言えるだろう。

この歩留まり改善の背景には、2023年11月にファウンドリ事業部長に就任したハン・ジンマン社長の下での新体制による取り組みがあると見られている。同社長は就任直後から歩留まり改善を最優先課題として掲げ、組織運営や生産ラインの見直しを進めてきたとされる。

Samsungは世界に先駆けて3nmプロセスでGAA技術を導入したが、歩留まりの低さが課題となり、期待された成果を上げられなかった。GAAは、電流が流れるチャネルをゲートが4方向から囲む構造で、従来のFinFET構造よりもトランジスタの性能向上と消費電力削減に優れるとされる最先端技術である。3nmでの経験を活かし、2nmでGAA技術を安定化させることがSamsungにとって喫緊の課題となっていた。

最先端露光装置High-NA EUV導入も追い風か

歩留まり改善に向けたSamsungの取り組みは、製造装置への投資にも表れている。2024年の第4四半期には、市場シェアが前期比1.4%減の8.1%まで落ち込み、首位TSMC(67%)との差が拡大した。この状況を打開すべく、Samsungは最先端技術への投資を継続している。

特に注目されるのが、次世代リソグラフィ技術であるHigh-NA EUV(高開口数 極端紫外線)装置の導入だ。韓国メディアThe Financial Newsは、Samsungが2025年3月初旬に最初のHigh-NA EUV装置「EXE:5000」(ASML製)を華城キャンパスに搬入したと報じている。1台あたり約5億ドル(約600億円)とされるこの高価な装置は、2nm以下の微細プロセス実現に不可欠と目されており、Samsungの技術競争力向上に寄与すると期待される。

ただし、このHigh-NA EUV装置が直ちに現在の2nmプロセスの歩留まり改善に貢献しているかは定かではない。むしろ、将来の1.4nm(14A)ノード以降を見据えた先行投資と見るのが自然だろう。Intelは既にHigh-NA EUV装置を導入し、18Aプロセスでのテスト運用を開始している。TSMCは2028年頃のHigh-NA EUV量産開始を計画していると見られており、SamsungのHigh-NA EUV導入は、将来的な技術ロードマップにおいて競合他社に伍していくための重要な一手と言える。

スポンサーリンク

TSMCとの差は依然大きいが、価格戦略が Samsung に追い風となる可能性

Samsungの2nm歩留まりが40%を超えたとはいえ、依然として業界リーダーであるTSMCとの間には大きな差が存在する。TSMCの2nmプロセスは、初期段階ですでに60%の歩留まりを確保し、最近の噂ではトライアル段階で70~80%という非常に高い歩留まりを達成したとも報じられている 。一般的に、歩留まりが70~80%に達して初めて安定した大量生産が可能になるとされるため 、Samsungは今後、量産開始に向けてさらなる歩留まり向上が不可欠となる。TSMCは2025年後半にも2nmプロセスの量産を開始すると見られている。

一方で、TSMCの優位性が価格面での強気な姿勢につながっている可能性も指摘されている。台湾メディア工商時報は、TSMCが先端プロセスの価格を従来予測されていた5~10%を上回る15%以上引き上げることを検討しており、すでに一部顧客に伝達したと報じた。

このTSMCの値上げが、結果的にSamsungにとって追い風となるかもしれない。Apple、AMD、NVIDIAといった大手ファブレス企業は、これまでTSMCに生産を大きく依存してきたが、毎年の価格上昇を受けて、代替供給源としてSamsungの2nmプロセスを検討している、あるいはリスク分散のために両社から調達する「デュアルソーシング戦略」をとる可能性があるとの観測が 꾸준히 出ている。Samsungが今後、歩留まりを安定させ、競争力のある価格を提示できれば、これらの大口顧客を獲得できるチャンスが生まれる。

Exynos 2600での実用化へ、市場シェア回復への試金石

Samsungにとって、2nmプロセスの最初の試金石となるのが、自社開発のモバイル向けSoC(System-on-a-Chip)「Exynos 2600」だ。Asia Economy SKは、Exynos 2600の量産開始時期が2024年11月に設定されたと報じている。これが計画通りに進めば、2025年初頭に発売が見込まれる次期フラッグシップスマートフォン「Galaxy S26」シリーズへの搭載が現実味を帯びる。

自社製品への搭載成功は、Samsungの2nm GAA技術の成熟度と安定した供給能力を外部顧客に示す格好のショーケースとなる。これにより、前述のApple、AMD、NVIDIAといった潜在顧客に対するアピール力が高まり、ファウンドリ事業の市場シェア回復に向けた重要な一歩となる可能性がある。「ファウンドリは長期契約が基本であり、2nmの技術力を証明できれば、市場シェアは二桁台を回復するだろう」という業界関係者の見方もある。

Samsungの2nmプロセス開発は、依然としてTSMCの後塵を拝している状況ではあるものの、歩留まり改善の報告は確かな前進を示している。最先端技術への投資、新体制による改善努力、そして競合の価格戦略という外部要因も追い風となる可能性がある。Exynos 2600での量産成功を果たし、Samsungファウンドリ復活の狼煙となるだろうか?


Sources

Follow Me !

\ この記事が気に入ったら是非フォローを! /

フォローする
スポンサーリンク

コメントする