現代のコンピューターにとってボトルネックは何か?フィンランドのスタートアップFlow ComputingはCPUであると指摘する。そして同社が開発したチップ技術「Parallel Processing Unit(PPU)」は、CPUの処理能力を最大100倍まで高める事が可能であり、現在のAI開発において求められる多くの計算需要に応えることになると主張している。
既存アプリのコードを書き直すことなくCPU性能を最大100倍に
フィンランドの国家研究機関であるVTTからスピンアウトしたFlow Computingは、同社のPPUによって「スーパーCPU」の全く新しい時代が到来すると主張している。
CPUは一昔前に比べれば大きく進歩はしているが、基本的なその処理方法は全く変わらず、一度に一つのことしかできない。複数のコアと経路を通じて1秒間に数十億回の切り替えを行っているが、命令が実行される際の基本的な制限により、次のタスクが始まる前に一つのタスクが終わる必要があるため、膨大な無駄が発生し、ボトルネックとなっている事には変わりはないのだ。
Flow ComputingのPPUは、この制限を取り除き、CPUを一車線から複数車線の高速道路に切り替えることを可能にするという。CPUは依然として一度に一つのタスクしか処理できないが、FlowのPPUはナノ秒レベルでのオンダイ交通管理を行い、タスクをプロセッサ内外にこれまで以上に速く移動させることができると言うのだ。
Flow ComputingのPPUは任意のCPUアーキテクチャに適用でき、完全な後方互換性を維持するという。さらに、ソフトウェアをPPU-CPUコンボと連携させるために再構築および再コンパイルすることで、さらなる性能向上が見込まれるという。Flowは、技術を活用するためにコードを変更(完全に書き直す必要はない)した場合、最大100倍の性能向上が可能なことを確認したとのことだ。同社は、Flow対応チップ向けにソフトウェアを最適化したい開発者向けに再コンパイルツールの提供を進めている。
更にその恩恵は、CPUの性能向上のみに留まらず、接続された他のユニット(NPU、GPUなど)もPPUの性能向上から間接的に恩恵を受ける事が可能だという。
こうした並列化は既に研究のレベルでは可能ではあったが、アプリのコードを根本から書き直す必要があり、現実的ではなかった。Flow Computingの主張が事実ならば、一切コードを変更する事なくこれを実現したという。
ただし、これを実用化するためにはFlow ComputingのPPUをチップ設計段階で統合する必要がある。FlowはFPGAベースのテストセットアップで技術が機能することを示しているようだ。
Flowは現在、ステルス状態から抜け出し、Butterfly Venturesが主導し、FOV Ventures、Sarsia、Stephen Industries、Superhero Capital、Business Finlandが参加する400万ユーロ(約430万ドル)のプレシード資金を獲得している。
また、同社はAMD、Apple、Arm、Intel、NVIDIA、Qualcommなどの最先端のCPU企業と協力して、次世代の高度なCPUコンピューティングの共同開発を目指しているという。更に、伝説のチップ設計者、Jim Keller氏率いるTenstorrentなどの小規模なCPUスタートアップとも提携を模索しているとのことだ。
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