高開口(High Numerical Aperture、略してHigh-NA)によるEUVリソグラフィは、今後数年間の半導体製造における決定的な技術となる。これを実現する世界初のHigh-NA EUVリソグラフィ装置を製造するオランダのASML社は、既に「TWINSCAN NXE:5000」の出荷を開始したが、それもわずか2台に留まる初期の段階である。だが同社は既にその先を見据えた「Hyper NA」EUV技術の開発を進めており、今回これを初めてロードマップに掲載し、その取り組みを明らかにしたようだ。
2030年にはHyper-NAが登場する
EE Timesが報じているように、ASMLの幹部はオランダ・アントワープにて開催されたimec ITF Worldにおいて、同社のHyper NAへの取り組みについて語った。同社の前社長であり、現顧問のMartin van den Brink氏によるプレゼンテーションでは、2nmを遥かに超える設計密度を高めるため、更に高い開口数を実現する次世代マシンの実現に向けたロードマップが明かされた。
先日Intelに納入された世界初のHigh-NA EUVリソグラフィマシン「TWINSCAN NXE:5000」では、開口数0.55を実現していたが、ASMLは2030年頃に登場する、同社が「Hyper-NA」と呼ぶマシンでは0.75の開口数を実現するようだ。
「これはMartinのHyper-NAに関するビジョンであり、現在、実現可能性の研究が進行中である」とASMLはEE Timesへの説明で述べている。
ただし、ASMLによれば、Hyper-NAは商業化に向けた独自の課題を抱えている。imec Advanced Patterning ProgramのディレクターKurt Ronse氏によると、0.55NA付近からイメージングコントラストを低下させる光の偏光効果が問題になるという。「0.55を超えると、非常に迅速に偏光がコントラストを殺していることがわかります。偏光の1つの方向が基本的に光を打ち消しているからです。それを避けるためには偏光板が必要になります」と、Ronse氏は説明する。ただし、カメラと同様、この問題を解決するために、フィルターを使用すると入射光量が減少するため、これも解決しなければならない問題である。
また、解像度を維持するためにレジスト材料をより薄くする必要があるかもしれないが、既に0.55NAでも薄くしており、Hyper-NAでは更に薄くする必要があり、エッチングの選択性にさらなる課題が生じるという。
また、興味深いところではTSMCがIntelとは異なり、現時点ではまだHigh-NAマシンを必要としていない点についてRonse氏が述べている部分だろう。この違いを生むのがTSMCが持つマルチパターニングの専門知識だ。「ダブルパターニングで本当に重要なのはエッジ配置誤差です。2つのマスクが完全に整合している必要があります。Intelはそれを避けたい。Intelの大きな違いは、彼らがTSMCほどダブルパターニングをマスターしていないことです。その結果、彼らはより高い解像度のHigh-NA EUVを好むのです」と、Ronse氏は述べている。
ただし、「ダブルパターニングを行うと、すべてを二度行う必要があります。それは容易にコストがかさむ」ともRonse氏は述べている。
High-NAは7オングストロームレベルまでの微細化を支える可能性があるが、物理的限界が到達するにつれ、その後は業界全体でHyper-NAが不可欠になる可能性が高い。Hyper-NAの先には、EUVフォトリソグラフィーのスループットに欠ける高価なマルチビーム電子リソグラフィーを除いて、代替パターニングソリューションはほとんど存在しない。古典的なスケーリングを続けるために、業界は最終的にシリコンと比較して優れた電子移動度特性を持つ新しいチャネル材料への移行が必要となり、これには新しい堆積およびエッチング技術が求められる可能性がある。だが、いつか物理的な限界に到達することは否めない。
「2オングストロームのデバイスができるとは想像しにくい。それはわずか2原子分の大きさに過ぎません。いつかは止まらなければならないでしょう」と、Ronse氏は指摘している。
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