デスクトップメモリ業界は、ここ数年で新しいメモリ規格やフォームファクターの開発が活発化している。JEDECが最近発表した新たな取り組みは、この潮流をさらに加速させるものだ。サーバー向けのDDR5 MRDIMMとノートPC向けのLPDDR6 CAMMという2つの新規格は、高性能コンピューティングとAI分野の急速な進化に対応するための重要な一歩となる。
DDR5 MRDIMM:サーバーの性能を飛躍的に向上
DDR5 MRDIMMは、サーバーおよびデータセンター向けに設計された革新的なメモリモジュールだ。MRDIMMの核心は多重化技術にある。この技術により、複数のデータ信号を1つのチャネルで伝送することが可能になる。これは、既存のピン配列を変更することなく、大幅な帯域幅の向上を実現する革新的なアプローチだ。さらに、MRDIMMはRegistered Clock Driver (RCD)とData Buffer (DB)ロジックを新たに導入している。これにより、性能向上、容量増加、レイテンシ削減、および電力消費の最適化が可能になる。
JEDECの発表によると、MRDIMMは従来のDDR5 RDIMMと比較して、ピーク帯域幅を2倍に引き上げることを目指している。具体的には、最大12.8 Gbpsのデータ転送速度を実現することを目標としている。これは、高性能コンピューティングやAI処理などの大量のデータを扱うアプリケーションにとって、大きな飛躍となる。
MRDIMMの特筆すべき点は、既存のRDIMMとの後方互換性を維持していることだ。これにより、サーバー運用者は柔軟にシステムを構成することができる。つまり、同じサーバーでRDIMMとMRDIMMを選択的に使用することが可能となる。また、標準的なDDR5 DIMMコンポーネントを使用していることも重要な特徴だ。これには、DRAM、DIMMフォームファクター、ピンアウト、SPD、PMIC、そして温度センサーが含まれる。この設計方針により、新技術の導入障壁を低く抑えることができる。
JEDECはまた、「Tall MRDIMM」という新しいフォームファクターも検討している。この設計により、従来のDIMMと比較して、単一のモジュールに2倍の数のDRAMパッケージを搭載することが可能になる。これは高価な3D積層パッケージングを使用せずに大容量を実現するため、高容量メモリの製造コストを抑える効果が期待できる。さらに、より広い表面積を活用することで、効率的な放熱が可能になる可能性もある。
現時点で最大256 GBのモジュール容量を実現しており、将来的にはさらなる容量増加が見込まれる。
LPDDR6 CAMM:ノートPCメモリに大きな革新
ノートPC市場に向けては、LPDDR6 CAMMの開発が進められている。この新規格は、14.4 GT/s以上の最大速度を目標としており、24ビットのサブチャネル、48ビットのチャネル、および新しいコネクタアレイを特徴としている。LPDDR6自体の変更に伴い、CAMMの設計も大幅な変更が必要となっている。新しいコネクタ設計では、ピン数が14列から最大20列へと増加する。これにより、より広帯域な通信が可能になる。また、24ビットサブチャネル、48ビットチャネル、そして合計192ビット幅のLPCAMMという柔軟な構成オプションを提供する。
LPDDR6 CAMMの意義は、ノートPCの薄型軽量設計を維持しながら、高性能なLPDDRメモリを使用可能にすることにある。はんだ付けされたRAMではなく、CAMMモジュールを使用することで、将来的なメモリのアップグレードが可能になる。これにより、プロセッサやGPUの性能向上に追従し、ノートPCのシステム全体の性能を引き上げることができる。
これらの新規格は、高性能コンピューティングやAI分野の急速な進化に対応するものだ。特に、NVIDIAの次世代BlackwellおよびRubin GPUの登場を控え、メモリ帯域幅の拡大は喫緊の課題となっている。
MRDIMMについては、IntelのXeon 6プラットフォーム向けにMicronが既に出荷を開始しており、AMDも今年後半にMRDIMMをサポートするサーバー製品をリリースする予定だ。このことから、MRDIMMの正式規格化は間近に迫っていると考えられる。
一方、LPDDR6 CAMMは、LPDDR6メモリ規格自体がまだ開発段階にあるため、完成までにはもう少し時間がかかる見込みだ。しかし、この規格が完成すれば、ノートPCの性能と効率性に大きな革新をもたらすことが期待される。
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