Intelは2024年第2四半期の決算発表と同時に、大規模な事業再編計画を明らかにした。この計画には、従業員の15%以上、約2万人近くとなる大規模な人員削減が含まれており、同社の56年の歴史の中でも最も厳しい人員整理の一つとなる見通しだ。この決定は、同社の財務状況の改善と競争力強化を目指すものだが、多くの従業員に影響を与える厳しい選択となる。
財務状況の悪化と業績不振
決算の詳細を見ると、Intelの苦境がより鮮明になる。調整後1株当たり利益は2セントと、アナリスト予想の10セントを大きく下回った。売上高も前年同期比1%減の128億3000万ドルと、予想の129億4000万ドルに届かなかった。さらに懸念されるのは、前年同期比で1%の減収となったことだ。純損益においては、前年同期の14億8000万ドルの黒字から一転して16億1000万ドルの赤字に転落した。この業績不振の背景には、AIなどの新たな技術トレンドへの対応の遅れや、半導体市場の競争激化があると見られている。
特に注目すべきは、同社のファウンドリー事業の苦戦だ。2023年には70億ドル、2024年第2四半期には28億ドルの営業損失を計上しており、新工場建設や極端紫外線(EUV)リソグラフィへの投資が重荷となっている。しかし、PC向けやサーバー向けの事業は依然として黒字を維持しており、同社の事業構造の転換が課題となっている。
一方で、Intelの事業セグメント別の業績を見ると、明るい兆しも見られる。PC向けチップを扱うClient Computing Groupの売上高は74億1000万ドルと、前年同期比9%増を記録した。特に、AI処理能力を持つPC向けチップの出荷が社内予想を上回り、2024年には4000万台以上の出荷が見込まれている。
しかし、Data Center and AI部門の売上高は30億5000万ドルと、前年同期比3%減少した。この結果は、AI時代におけるIntelの競争力に疑問を投げかけるものとなっている。
大規模なコスト削減策
Intel CEOのPat Gelsingerは、2025年までに100億ドル以上のコスト削減を目指すと発表した。この目標を達成するため、同社は100億ドル規模の複数の施策を打ち出している。
まず、この計画の一環として、従業員の15%以上となる過去最大の人員削減が行われる。これについては2024年末までに大部分を完了する予定だ。対象となるのは研究開発、マーケティング、一般管理部門など、複数の部門にわたる。これは2020年3月以降、単一企業による最大規模の人員削減となる。また、資本支出も大幅に削減し、2024年は前年比20%以上減の250億~270億ドル、2025年にはさらに200億~230億ドルまで絞り込む計画だ。
研究開発費とマーケティング費用も厳しく見直され、2024年に約200億ドル、2025年に約175億ドルまで削減する方針だ。さらに、2026年にはさらなる削減を見込んでいる。
加えて、Intel は2024年第4四半期から四半期配当の支払いを停止すると発表した。これは、キャッシュフローの改善と事業への再投資を優先するための措置だという。
製品戦略の見直しと今後の展望
Intelは各事業部門で不採算製品の見直しを行い、ポートフォリオの最適化を進める方針だ。同社はAI市場でNVIDIAに後れを取っており、グラフィックス分野での進出も期待されたほどの成果を上げていない。また、QualcommやAppleのArmベースチップに対抗するため、フラッグシップノートPC向けチップの大幅な刷新を余儀なくされている。
しかし、Intelは今回の再編で核となる投資は維持すると強調している。特に、同社のIDM 2.0戦略は変更せず、プロセス技術と主力製品のリーダーシップを確立するための投資は継続するという。具体的には、18Aプロセスノードの開発は予定通り進んでおり、2024年末までに製造準備が整う見込みだ。また、RibbonFetやPowerViaなどの新技術を採用する次世代製品「Panther Lake」と「Clearwater Forest」も2025年の発売に向けて順調に開発が進んでいるという。
Gelsingerは従業員向けメモで、「これは私にとって痛みを伴う決断であり、私のキャリアの中で最も困難なことです」と述べ、この決定の重大さを認めている。同時に、「世界はますますシリコンで動くようになり、世界は健全で活気あるIntelを必要としています」と強調し、同社の長期的な重要性を訴えた。
Intelは今回の決算発表に合わせて、今後の展望も示した。2024年度第3四半期の見通しとして、調整後1株当たり純損失を3セント、売上高を125億ドルから135億ドルの範囲と予想している。これはアナリスト予想を下回るものであり、Intelの回復にはまだ時間がかかることを示唆している。
この発表を受けて、Intelの株価は時間外取引で約20%下落した。今後、半導体業界の競争激化や技術革新の中で、Intelがどのように事業を立て直し、成長軌道に乗せていくのか、業界内外から注目が集まっている。特に、AIやファウンドリー事業での巻き返し、そして次世代プロセス技術の成功が、同社の将来を左右する重要な要素となるだろう。
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