2024年第2四半期、AMDがx86 CPU市場において再び躍進を遂げた。Mercury Researchの最新市場統計によると、特にサーバーおよびモバイル分野で大きな成長を記録し、AMDの総合的なクライアント市場シェアは21.1%に到達、売上シェアも18.1%を記録したとのことだ。これは前年同期比でそれぞれ3.8ポイントと4.0ポイントの増加を示しており、AMDの市場での存在感が着実に高まっていることを示している。
各市場セグメントにおけるAMDの詳細な成長分析
サーバー市場においてAMDは特筆すべき成果を上げた。ユニットシェアは24.1%に達し、売上シェアは過去最高となる33.7%を記録。これは前年比でユニットシェアが5.6ポイント、売上シェアが6.6ポイント増加したことを意味する。この顕著な成長は、クラウドサービスプロバイダーによる導入拡大と企業向け需要の増加が主な要因とされている。AMDのEPYCプロセッサーシリーズが、高性能と効率性を求めるデータセンター市場で評価を得ていることがうかがえる。
とはいえ、データセンターにおけるAMDの躍進にもかかわらず、Intelは依然として75.9%の市場シェアで業界を支配している。 ただし、AMDの高い収益性についてはIntelは現在のところ追いついていない。AMDは高価なAIアクセラレーターで大金を稼いでおり、 Tom’s Hardwareが指摘するように、両社の第2四半期のデータセンター向け売上はほぼ同額で約30億ドルだが、同じ売上を得るためにIntelが3倍の市場シェアを支配している点は注目すべきポイントだろう。 AMDは、同社のMI300アクセラレーターが同社の歴史上どの製品よりも早く10億ドルを稼ぎ出し、データセンターの売上もこの1年で115%増加したと述べている。
クライアント部門での成長はサーバーと比べると緩やかな物だ。デスクトップ市場では、AMDは前年比で4.4ポイントのユニットシェア増加を達成したものの、直前の四半期と比較すると0.9ポイントの減少となった。売上シェアについても同様のトレンドが見られ、前年比で3.0ポイント増加したが、前四半期比では0.4ポイント減少している。この微減は、次世代Ryzen 9000シリーズの発売を控えた過渡期的な状況を反映していると考えられる。Intelの第13世代及び第14世代Coreプロセッサの問題が伝えられていたにもかかわらず、AMD は第2四半期にデスクトップの市場シェアを Intel に 1% 奪われ、Intelの市場シェアは 77% となった。しかし、このセグメントでは前年比3.6%の増加となった。
モバイル市場では、AMDは着実な成長を続けている。前年比でユニットシェアが3.8ポイント、売上シェアが4.5ポイント増加し、現在20%台のシェアを獲得するに至った。この成長は、Ryzen 7000/8000シリーズのモバイルプロセッサーが、性能と電力効率の両面で評価を得ていることが奏功したようだ。さらに、新たに投入されたRyzen AI 300 “Strix Point”シリーズのノートPC向けプロセッサーが、AIアクセラレーション機能を搭載したことで、IntelのCore UltraやQualcommのSnapdragon Xシリーズとの競争力を高めている。
AMDの成長戦略は、新製品の投入と既存製品の価格戦略の両面から支えられている。次世代Zen 5アーキテクチャを採用したRyzen 9000デスクトップCPUの近日中の発売や、第5世代EPYC “Turin” CPUのサーバー市場への投入が予定されており、2025年にかけて高性能データセンターやクラウド事業での採用拡大が期待されている。同時に、既存のRyzen 7000/8000シリーズ製品の大幅な値下げにより、OEMやDIY市場での売上を伸ばすことに成功している。
以下に、AMDの主要セグメントにおける市場シェアの推移を表で示す:
セグメント | Q2 2024 | Q1 2024 | Q2 2023 | 前年比増減 |
---|---|---|---|---|
デスクトップ | 23.0% | 23.9% | 19.4% | +3.6ポイント |
モバイル | 20.3% | 19.3% | 16.5% | +3.8ポイント |
サーバー | 24.1% | 23.6% | 18.6% | +5.5ポイント |
この表からも、AMDが全セグメントで着実な成長を遂げていることが分かる。特にサーバー市場での伸びが顕著であり、クラウドコンピューティングやAI処理需要の増加に伴い、AMDのEPYCプロセッサーが市場で高い評価を得ていることを示している。
今後のCPU市場は、AIや機械学習の進化に伴い、より高度な処理能力と効率性が求められると予想される。AMDは、Zen 5アーキテクチャやAI特化型プロセッサーの開発を通じて、これらの需要に応える準備を整えつつある。特に、Ryzen AI 300シリーズのようなAIアクセラレーション機能を搭載したプロセッサーが、次世代のコンピューティング環境でどのような役割を果たすかが注目される。
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