Intelが自動車業界向けに初となるディスクリートGPU、Arc A760Aを発表した。この画期的な製品は、急速に発展する自動車のAI市場に向けて設計され、高度な車載インフォテインメントシステムや自動運転技術の進化を加速させることが期待されている。
A760Aはまずは中国市場から
A760AはIntelのArc Alchemistアーキテクチャを基盤としており、ACM-G10 GPUダイを採用している。この新しいGPUは28個のXe-Coreと28個のレイトレーシングコア、そして448個のベクトルエンジンを搭載し、最大1953MHzのブーストクロック速度を実現する。16GB GDDR6メモリを256ビットメモリバスで接続し、AIインファレンス性能は最大229 TOPSに達する。
項目 | Intel Arc Graphics for Automotive – A760A |
---|---|
Xeコア数 | 28 |
レイトレーシングユニット数 | 28 |
AI用マトリックスエンジン (XMX) | 448 |
ベクトルエンジン | 448 |
メモリサイズ / インターフェース | 16GB / 256bit |
GDDR6 容量 (GB) | 16 |
PCI Express 構成 | Gen4 x16 |
SRIOV | 対応 |
FP32 TFLOPS | 最大 14 |
ピークTOPs | 最大 229 |
TBP (ワット) | 225 |
ディスプレイポート数 | 4 |
メディアデコード | AVC, HEVC, VP9, AV1 |
メディアエンコード | AVC, HEVC, VP9, AV1 |
OS、ハイパーバイザー、オーケストレーション | ACRNハイパーバイザー、Linux (Yocto)、Android、Android仮想マシン内のLinux-in-Container |
サポート技術 | Vulkan, OpenGL, OpenCL, OpenVINO, OneAPI, Proton, virgl, Venus, SR-IOV, virtio display |
対応温度 | 拡張温度対応 (-40°C ~ 105°C) |
リリース時期 | 2025年第1四半期 |
IntelのAutomotiveの副社長兼ゼネラルマネージャーであるJack Weast氏は、この新製品について次のように述べている。「Intelの戦略は、あらゆるサイズと形状のデバイスにAIの力をもたらすことであり、私たちはその専門知識と広範なオープンAIエコシステムを自動車産業にもたらすことを喜んでいます」。
A760Aの性能は、従来の統合グラフィックスソリューションと比較して大幅に向上している。Intelによれば、仮想マシン、セキュリティ、および分離などの主要アプリケーションで最大40%のパフォーマンス向上が見込まれるという。これは、Single Root Input/Output Virtualization (SR-IOV)技術の採用によるものだ。
さらに、A760Aは最新のゲームやAIベースのPCアプリケーションを同時に実行できる能力を持つ。これにより、車内エンターテインメントの質が飛躍的に向上する。また、大規模言語モデル(LLM)を活用したAI音声アシスタントもサポートしており、ドライバーとの自然な対話を可能にする。
A760Aの機能は、純粋な計算能力にとどまらない。最大6つのカメラ入力と4つのディスプレイ出力をサポートし、HEVC、VP9、AV1など複数のビデオフォーマットのデコードとエンコードが可能だ。これにより、高度な運転支援システム(ADAS)やスマートコックピットの実現に貢献する。
Intelは、Software Defined Vehicles (SDV)プラットフォームを通じて、自動車メーカーが単一のプラットフォームを複数の車種やトリムレベルに適用できるようにしている。これにより、エントリーレベルや中級モデルではSDV SoCを利用し、高級モデルではA760Aの追加処理能力を活用してプレミアム機能を提供するといった柔軟な製品展開が可能になる。
A760Aは2025年第1四半期に中国市場で商用展開される予定だ。Intelは中国を最初の展開市場として選んだ理由について、「中国の急速な電気自動車開発サイクルと先進的な技術採用が、次世代技術のテストに理想的な環境を提供している」と説明している。
この新しいGPUの登場は、自動車業界におけるAI駆動のコックピット体験と高度なパーソナライゼーションの新時代の幕開けを意味する。A760Aは、3Dレンダリングや高度な音声・カメラ・ジェスチャー認識機能を通じて、車両を「没入型モバイルハブ」へと変貌させる可能性を秘めている。
Intelの取り組みは、NVIDIAやAMDなど競合他社の動向も踏まえつつ進められている。NVIDIAのOrinチップと比較すると、A760AはFP32性能とINT8 TOPSの面で優位性を示している。しかし、NVIDIAの次世代Thorチップの登場も控えており、競争は激化すると予想される。
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