AMD RDNA 4アーキテクチャを採用する次世代GPU「Navi 48」と、これを採用すると見られる「RX 8800 XT」に関する新たな情報がリークされた。このリークによると、AMDは2024年第4四半期、具体的には10月から11月にかけての発売を目指しているとされる。注目すべきは、このグラフィックボードがNVIDIAのRTX 4080に匹敵するパフォーマンスを、その半額程度の価格で提供する可能性があることだ。特にレイトレーシング性能において大幅な向上が見込まれており、高価格化が進んでいるデスクトップゲーミングGPU分野に風穴を開ける可能性がありそうだ。
AMDの次世代ハイエンドグラボ「RX 8800 XT」の仕様と戦略的展開
先日のAMD決算発表では、AI関連のサーバー向けセグメントでの圧倒的な好調が伝えられた反面、ゲーミングセグメントでの落ち込みも確認され、ディスクリートGPUではNVIDIAに88%という圧倒的なシェアを握られている現状も相まって、AMDはディスクリートGPUから撤退するのではないかと一部では噂される程だったが、もちろんこれは噂に過ぎず、AMDはゲーマーを見捨ててはいない。
Radeon RX 7000シリーズの販売はふるわなかったが、AMDは次世代グラフィックボード製品ではRDNA 4アーキテクチャを採用し、特にNVIDIA製品と比べて見劣りしていたレイトレーシング性能にテコ入れを行い勝負を挑むようだ。
今回リークされた「Navi 48」GPUはAMDの次世代グラフィックボード「RX 8000」シリーズのハイエンド製品に搭載される物と見られる。Navi 48は次世代GPUアーキテクチャRDNA 4を採用しており、これを搭載するグラフィックボード「RX 8800 XT」では以下のような仕様が予想されている:
- コア構成:
- 64CU(Compute Unite)
- 強化されたレイトレーシングアクセラレータ(コンピュートユニット数を上回る数)
- クロック周波数と電力:
- ブーストクロック:2.9〜3.2 GHz
- 消費電力:210〜280W(主に250W付近)
- メモリ構成:
- 16GB GDDR6メモリ
- 256-bitメモリバス幅
- メモリ速度:20Gbps(トップモデルの場合)
- 製造プロセス:
- TSMCの4nmプロセスを使用
- モノリシックダイ設計
- FP8および行列演算用ハードウェアの追加
性能面では、ラスタライゼーションにおいてNVIDIA RTX 4080と互角、レイトレーシングではRTX 4070 Ti Superと同等か、AMDに最適化されたゲームではRTX 4080に迫る可能性があるとされている。
その他、FP8や行列演算用コアも搭載され、AI処理性能の向上や、FSRでのアップスケーリング、フレーム生成などゲームプレイ時のグラフィック性能向上も期待出来るようだ。
以前の噂でも、Navi 48やこれの下位モデルNavi 44は共にTSMCのN4Pで製造されるとされていたが、今回改めてそれを確認した形となっている。Navi 48のダイサイズは以前のリークでは240mm2 とされていたが、これは先代RX 7800XTで採用され、同様に60CUを搭載し、256-bitメモリバスインターフェイスを誇るNavi 32の346mm2 のダイサイズと比較しても大幅に小型化されており、これに伴い製造コストの削減も期待出来そうだ。
Navi 48はモノリシックダイになるようで、RDNA 3で初めて採用された、GPUが搭載されたGCD(Graphics Compute Die)と巨大なInfinity Cacheが搭載されたMCD(Memory Cache Die)という、それぞれのダイを一つのパッケージに統合するチップレット構造からの回帰となるようだ。この決定の理由は不明だが、コストなどが関係していると思われる。
価格設定については、499〜599ドル(72,000〜86,000円)の範囲が予想されるようで、NVIDIA製品に対して高いコストパフォーマンスを誇り、消費者にとって非常に魅力的な選択肢になり得そうだ。日本での価格は為替レートがそのまま反映されることはなく、ある程度はより円安なレートで販売されるのが常だが、それでも10万円には行かない可能性が高いだろう。また、AMDは高い生産量を計画しており、システムインテグレーターやOEMとの協力を重視しているという。
興味深いのは、AMDが採用している戦略的アプローチだ。過去のRDNA 2の時と同様に、AMDは意図的に早期の情報を制限し、AIBパートナーやOEMに対して実際の製品化時期よりも遅い販売になると言う偽情報を提供していたとされる。これは、NVIDIAを油断させ、市場での優位性を確保するための戦略と考えられる。
また、AMDはRX 8800 XTのリファレンスクーラーを提供する予定だが、AMDは自社サイトでの直接販売は行わない方針であるようだ。これは、大量販売を目指す中で、カスタマーサポートの負担を軽減するための決定と見られる。
発表のタイミングについては、8月のGamescomでのティーザーの可能性も示唆されているが、確実ではない。しかし、10月か11月の発売を考えると、正式な発表は近いと予想される。
このリークは、AMDがディスクリートGPU市場で積極的な攻勢に出る準備をしていることを示唆している。特に、NVIDIAが1000ドル以下の新製品を2024年内に発表する予定がないとされる中、AMDの戦略は市場に大きな影響を与える可能性がある。
ただし、現行のRDNA 3シリーズの在庫状況や市場の需要によっては、発売時期や価格設定に変更が生じる可能性もある。AMDは7800 XTなどの現行モデルの販売状況を見ながら、新製品の投入タイミングを慎重に検討しているとようだ。
これが事実であった場合、AMD RX 8800 XTの登場は2024年後半のGPU市場に大きな変化をもたらす可能性があり、消費者にとってはより高性能なグラフィックボードがより手頃な価格で入手できるチャンスとなるかもしれない。今後の正式発表や追加情報に注目が集まるところだ。
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