Amazonが、生成AIを活用した新しい有料版Alexaサービスを2024年10月に開始する計画であることが明らかになった。The Washington Postが入手した内部文書によると、この新サービスは月額最大10ドルで提供される可能性があり、より高度な会話能力と顧客にパーソナライズされた機能を特徴としているという。
スマートスピーカー対応の生成AIサービスとして他社に先行する計画
新しいAlexaサービスは、社内で「Remarkable Alexa」や「Project Banyan」と呼ばれており、ChatGPTやGoogle Geminiなどの競合AIアシスタントに対抗する形で開発が進められている。当初2024年9月に予定されていた発売が10月に延期されたことからも、開発には多くの課題があったことがうかがえる。
新Alexaの中核となる機能の一つが「スマートブリーフィング」である。これは、AIが生成する、ユーザーの好みに基づいた日々のニュースサマリーを提供するものだ。しかし、政治ニュースの取り扱いには課題が残されている。特に、2024年の米国大統領選挙を控え、AIによる政治情報の要約や解釈の正確性が懸念されている。これは、過去にAlexaが2020年の米国大統領選挙の結果に関する質問に適切に答えられなかった経緯があるためだ。
新Alexaは、個々のユーザーの声を認識し、好みや家族構成などの情報を記憶して、より適切な応答を行う能力も持つ。例えば、ユーザーの家族に持病などによって食事制限がある場合、その情報を記憶し、後のレシピ提案に反映させることができる。この機能により、Alexaはより「好感度の高い」アシスタントとして認識されることを目指している。
Amazonの戦略において重要な位置を占めるのが、新Alexaとショッピング体験の統合強化である。ユーザーは商品の色や成分、セール情報などを直接Alexaに尋ねることができるようになる。さらに、「Shopping Scout」と呼ばれる機能により、ユーザーが探している商品がセールになった際に通知を受け取ることも可能になる。これらの機能は、Amazonのeコマース売上増加に寄与 し、Alexaへの投資回収を助ける狙いがある。
子供向けの機能も注目される。「Explore with Alexa 2.0」と呼ばれるこの機能は、認証された子供ユーザーが、あらゆるトピックについてAlexaと安全に会話できるようにするものだ。Amazonは、この機能が規制に準拠し、「安全で管理された」体験を提供すると強調している。
一方で、Amazonは「Project Metis」と呼ばれるWebベースのAI製品の開発も進めている。これはChatGPTスタイルのツールと直接競合することを目的としており、Amazonのプラットフォーム全体でのAI統合をさらに進める動きの一環と見られる。
新Alexaの導入は、Amazonのデバイス部門の収益性改善も目指している。これまでAlexaは多くの無料機能を提供してきたが、それが同部門の赤字の一因となっていたとされる。有料サブスクリプションモデルの導入により、この状況の改善が期待される。ただし、現行の無料版Alexaは維持される予定だ。
この機能が既存のスマートスピーカー「Echo」で対応出来るのか、それとも一部のAI機能を処理するために専用の処理性能を備えた新型Echoスピーカーで提供開始されるのかは不明だが、もしも既存のEchoスピーカーで対応出来るというのならば既に普及している台数を考えれば大きな潜在顧客が見込まれる。
だが顧客として最も大きな関心事は、Amaoznがこの新Alexaサービスの料金をいくらにするのかということだ。 以前は、ChatGPT Plusと同じ月額20ドル(約3,000円)と考えられていた。 しかし、Washington Post紙によれば、新Alexaは月額10ドル程度(1,500円程度)になる可能性があるという。AIアシスタントと声でやりとりできるという機能だけにこの価格を払う価値があるのかどうかを顧客に納得出来るだけの機能を提供出来るのかどうかが焦点になるだろう。また、生成AIサービスの常だが、こうしたサービスはまずは英語圏のユーザー向けに提供されることが多いため、日本でも同様のサービスが10月にすぐに提供開始されることはまずないと考えた方が良いかも知れない。
Source
- The Washington Post: Amazon aims to launch delayed AI Alexa subscription in October
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