半導体業界の巨人Intelが、厳しい経営状況からの脱却を図るべく、大規模な再建計画を検討している。Reutersの独占報道によると、Pat Gelsinger CEOと主要幹部らは9月中旬に開催される取締役会で、不要な事業の売却や資本支出の見直しを含む計画を提案する予定だという。
Altera売却とドイツ工場計画凍結の可能性
この再建計画の中で特に注目されるのは、半導体製造事業(ファウンドリー)の扱いだ。Intelは既に設計部門と製造部門を分離し、今年第1四半期から財務結果を別々に報告している。しかし、今回の提案では、ファウンドリー事業を台湾積体電路製造(TSMC)などに売却する計画は含まれていないとされる。
Intelは、設計部門の顧客が製造部門の顧客の技術機密にアクセスできないよう、両部門間に「壁」を設けている。この措置は、ファウンドリー事業の信頼性を高め、外部顧客を獲得するための重要なステップとみられている。
ファウンドリー事業の維持方針は、Intelの長期戦略における重要性を示唆している。同社は、この部門の拡大により2025年までに80億ドルから100億ドルのコスト削減を見込んでおり、2030年までに非GAAPベースの粗利益率を約60%、営業利益率を約40%に引き上げる計画だ。
Intelの再建計画の中で、具体的なコスト削減策として浮上しているのが、プログラマブルチップ部門Alteraの売却だ。2015年に167億ドルで買収したAlteraだが、現在のIntelの利益では維持が困難になっているとされる。同社は既にAlteraを完全子会社として分離し、将来的な新規株式公開(IPO)の可能性も示唆していた。
しかし、今回の報道では、Alteraを他のチップメーカーに完全売却する選択肢も検討されているという。潜在的な買収者としては、インフラ向けチップメーカーのMarvellが挙げられている。
また、資本支出の削減策として、ドイツのマグデブルクに計画している320億ドル規模の工場建設の凍結または中止も検討されているようだ。Intelは既に2025年の資本支出を今年比17%減の215億ドルに削減する方針を示しており、この大型投資計画の見直しはその一環とみられる。
この再建計画は、NVIDIAが主導するAI時代に追いつこうとするIntelにとって、極めて重要な局面を象徴している。同社の時価総額は1000億ドルを下回り、8月の第2四半期決算発表後には配当支払いの一時停止と15%の人員削減を余儀なくされた。
Intelの業績不振の背景には、AIチップ市場でのNVIDIAの独占的地位や、競合他社との技術格差の拡大がある。同社は過去数四半期にわたり株価の下落に苦しんでおり、投資家からは抜本的な改革を求める声が高まっている。
今回の取締役会での議論は、Intelの将来を左右する重要な転換点となる可能性がある。経営陣は、Morgan StanleyやGoldman Sachsなどの金融アドバイザーと協力し、売却可能な事業と維持すべき事業の選別を進めている。
市場の反応は慎重だ。Gelsinger氏は先週のDeutsche Bank主催のカンファレンスで投資家に対し、「困難な数週間だった」と認めつつ、「投資家の声を真剣に受け止めている」と述べ、会社の立て直し計画の第2フェーズに注力していることを強調した。
今後の課題として、Intelは競争力のある製品ラインナップの再構築と、ファウンドリー事業の収益性向上が急務となるだろう。だが、業界専門家の中には、最終的にはファウンドリー事業の分離・売却も選択肢に入れざるを得なくなる可能性を指摘する声もある。Intelが米国内での製造拠点拡大に向けて巨額の連邦資金を受け取っていることが、この選択肢を複雑にしている。
Intelの再建計画の成否は、AIや高性能コンピューティング市場での競争力回復にかかっている。9月の取締役会での決定が、同社の将来を大きく左右することは間違いない。技術革新のペースが加速する半導体業界で、Intelが再び主導的な地位を確立できるか、市場の注目が集まっている。
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