Samsung Electronicsがテキサス州テイラーにある同社の最新鋭工場から人員を撤退させたことが明らかになった。同社は次世代の2nm GAA(Gate All Around)プロセスの量産を目指していたが、歩留まりが10~20%と低迷し、生産開始の目途が立たない状況である。
低迷する2nm GAAプロセスの課題とテイラー工場の現状
Samsungは、最先端の2nmプロセスの開発において、歩留まりの改善に苦戦している。業界関係者によると、同社の2nm GAA(Gate All Around)プロセスの歩留まりは10〜20%程度にとどまっており、量産開始には程遠い状況だという。この低歩留まりの問題により、当初2024年後半に予定されていた量産開始時期が2026年まで延期される見通しとなった。
この状況を受け、Samsungはテキサス州テイラーに建設中の最新工場から人員を撤退させる決断を下した。テイラー工場は、4nm以下の最先端プロセスの量産拠点として計画されていたが、現在は最小限の人員のみが残されている状態だ。
テイラー工場の設立は、米国内の主要テクノロジー企業に近い場所で先端プロセスの生産を行うという戦略的な狙いがあった。しかし、プロセス開発の遅れと歩留まりの問題により、この計画は大きな挫折を迎えることとなった。
戦略の再考と今後の展望
Samsungの2nmプロセス開発の遅れは、半導体業界全体に影響を及ぼす可能性がある。特に、主要な競合である台湾のTSMCとの技術格差が拡大することが懸念されている。
TSMCの先端プロセスの歩留まりは60〜70%程度とされており、Samsungとの差は歴然としている。この差は市場シェアにも反映されており、2023年第2四半期の世界の半導体ファウンドリー市場において、TSMCが62.3%のシェアを占める一方、Samsungのシェアは11.5%にとどまっている。
Samsungは、この状況を打開するために様々な対策を講じている。李在鎔(イ・ジェヨン)会長自らがASMLやZeissなどの主要装置サプライヤーを訪問し、プロセスと歩留まりの改善に向けたブレークスルーを模索している。しかし、現時点では顕著な成果は得られておらず、テイラー工場への人員再配置の時期も不透明な状況が続いている。
Samsungはテイラー工場への投資を進める一方で、歩留まり改善の遅れから人員を撤退させ、最小限のスタッフのみを残す決断を下した。また、米国のCHIPS法による最大670億ドルの補助金を受け取るための仮契約を締結していたが、工場運営が前提条件であるため、この補助金の受け取りも不透明となっている。
専門家らは、Samsungが競争力を根本的に強化する必要があると指摘している。ある半導体分野の教授は、「Samsungに蔓延する官僚主義、遅い意思決定、低い報酬が、ファウンドリー競争力低下の主な理由だ」と述べている。また、「20〜30年前と比べて投資のタイミングが遅れていることは、経営陣が現状を十分に認識していないことを示しており、経営システムの根本的な見直しが必要だ」と指摘している。
Samsungの先端ファウンドリ事業の現状は、同社が直面する課題の深刻さを浮き彫りにしている。今後、Samsungがこの課題にどのように対応し、TSMCとの技術格差を縮めることができるかが注目される。半導体業界の競争は激化の一途をたどっており、Samsungの今後の戦略と技術革新の成否が、グローバル半導体市場の勢力図を左右する重要な要素となるだろう。
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