欧州価格比較サイトGeizhalsを通じて、AMDの次世代ゲーミングプロセッサ「Ryzen 7 9800X3D」の詳細仕様が明らかとなった。最新のZen 5アーキテクチャと進化した3D V-cache技術を組み合わせた本製品は、ゲーミング性能で着実な性能向上が見られそうだ。
Ryzen 7 9800X3Dの仕様詳細(リーク情報に基づく)
今回リークされた内容は、Ryzen 7 9800X3Dのほぼ全ての仕様について触れられている極めて詳細な物だ。具体的には以下の表の通りとなる:
項目 | 詳細 |
---|---|
コア数 | 8 (8C) |
スレッド数 | 16 |
ブーストクロック | 5.20GHz |
ベースクロック | 4.70GHz |
TDP (熱設計電力) | 120W |
内蔵グラフィック | あり (AMD Radeon Graphics) |
対応ソケット | AMD AM5 (LGA1718) |
対応チップセット | A620, A620A, B650, B650E, PRO 660, PRO 665, X670, X670E, X870E |
コードネーム | Granite Ridge |
アーキテクチャ | Zen 5 |
製造プロセス | TSMC 4nm (CPU), TSMC 6nm (I/O) |
L2キャッシュ | 8MB (1MB x 8) |
L3キャッシュ | 96MB (32MB + 64MB 3Dキャッシュ) |
メモリコントローラ | デュアルチャネル DDR5、最大192GB |
メモリ対応 | DDR5-5600 (PC5-44800, 89.6GB/s) |
拡張メモリ対応 (DIMM) | DDR5-5600 (1DPC/1R), DDR5-5600 (1DPC/2R), DDR5-3600 (2DPC/1R), DDR5-3600 (2DPC/2R) |
ECCサポート | あり |
SMT (同時マルチスレッディング) | あり |
リモートメンテナンス | なし |
フリーマルチプライヤ | あり |
CPU機能 | AES-NI、AMD-V、AVX、AVX-512、AVX2、FMA3、MMX(+)、SHA、SSE、SSE2、SSE3、SSSE3、SSE4.1、SSE4.2、x86-64 |
システム適合性 | 1ソケット (1S) |
PCIeレーン | 28x PCIe 5.0 (利用可能: 24) |
PCIeインターフェース | PCIe 4.0 x4 |
iGPUモデル | AMD Radeon Graphics |
iGPUクロック | 2.20GHz |
iGPUユニット | 2CU/128SP |
iGPUアーキテクチャ | RDNA 2、コードネーム “Granite Ridge” |
iGPUインターフェース | DP 2.0、HDMI 2.1 |
iGPU機能 | 4つのディスプレイ出力、AMD Eyefinity、AMD FreeSync 2、AV1デコード、H.265エンコード/デコード、VP9デコード、DirectX 12.1、OpenGL 4.5、Vulkan 1.0 |
iGPU計算能力 | 0.56 TFLOPS (FP32) |
CPUクーラーの有無 | CPUクーラーなし |
リリース予定 | 2024年第4四半期 (2024年11月7日) |
セグメント | デスクトップ (メインストリーム) |
ステッピング | GNR-B0 |
最大動作温度 (Tjmax) | 95°C |
メーカーの保証 | N/A (AMDトレイプロセッサーには直接の保証なし) |
最新価格更新 | 2024年10月21日 18:30 |
この新たなRyzen 9000X3Dチップの改善点について以下のセクションでそれぞれ見てみよう。
アーキテクチャの根本的刷新がもたらす性能向上
Ryzen 7 9800X3Dにおける最も顕著な進化は、動作クロックの大幅な向上だ。ベースクロックは4.7GHz、ブーストクロックは5.2GHzに設定され、前世代のRyzen 7 7800X3Dと比較して、それぞれ500MHzと200MHzの向上を実現している。この進化は、第二世代3D V-cacheテクノロジーの最適化と、Zen 5アーキテクチャの高効率設計によって可能となった。
熱設計においても大きな前進が見られる。TDPは120Wに維持されているものの、最大動作温度(Tjmax)は89度から95度へと引き上げられた。この変更により、非X3Dモデルと同等の温度設計が実現し、より積極的な動的クロック制御が可能となった。結果として、高負荷時においても持続的な性能を維持できる設計となっている。
次世代3D V-cache技術の革新
本製品で採用された新しい3D V-cacheテクノロジーは、従来のアプローチを根本から見直したものだ。最も注目すべき点は、CCDをL3キャッシュブロックの上部に配置する革新的な構造である。この設計変更により、熱伝導効率が大幅に改善され、レイテンシの最適化も実現している。
総容量104MBの大容量キャッシュは、精緻な階層構造を持つ。L2キャッシュは8MB(1MB/コア)を確保し、シングルコア性能の最適化と即時アクセスデータの高速処理を実現。内蔵L3キャッシュは32MBで、マルチコア処理の効率化とキャッシュヒット率の向上に貢献する。さらに、積層V-cacheとして64MBを追加することで、ゲーミング性能の飛躍的な向上と大規模データセットの効率的な処理を可能としている。
メモリサブシステムの進化
メモリサポートは、DDR5-5600(JEDEC)のネイティブサポートを実現している。ただし、チャネルあたり2枚のDIMMを使用する場合は、DDR5-3600までの速度に制限される仕様となっている。これは、メモリコントローラーの安定性と信頼性を重視した設計判断と考えられる。
本製品の最大の革新点の一つが、マルチプライヤのアンロックである。すでに初期のオーバークロックテストでは5.6GHzまでの安定動作が確認されており、前世代比で8〜23%の性能向上が報告されている。これは、従来のX3Dシリーズにはなかった機能であり、エンスージアスト向けの新たな可能性を切り開くものである。
Xenospectrum’s Take
Ryzen 7 9800X3Dは、Zen 5アーキテクチャの高いIPC性能と3D V-cache技術の熱設計最適化を組み合わせ、さらにオーバークロック機能を解放することで、前世代から大きく進化を遂げている。Intel Arrow Lakeの期待を下回るパフォーマンスを考慮すると、AMDはCPU市場において優位なポジションを確立できる可能性が高い。
AM5プラットフォームとの互換性を維持しながら、実質的な性能向上を実現した点は、ユーザーにとって大きな価値となるだろう。3D積層技術の更なる進化と熱設計の革新は、次世代のプロセッサ開発における重要な方向性を示している。
価格戦略については、11月7日の正式発表を待つ必要があるが、前世代までの価格帯を維持できれば、コストパフォーマンスの観点からも極めて魅力的な製品となることは間違いない。本製品は、AMDの技術力の結晶であり、次世代ゲーミングCPUの方向性を示す重要なマイルストーンとして、市場に大きなインパクトを与えることが予想される。
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